中西 進国文学者

Vol.1065

新元号「令和」の考案者と目され、日本中の注目を集める国文学者・中西進。ここ3ヶ月間、1日も休まず西へ東へと飛び回っていた。「休みたい気持ちもあるが、人と話すのが好き。好奇心のおもむくまま引き受けている」とはにかむ中西。行く先々で、熱く思いを語り、時には冗談を言って場を和ませる。89歳とは思えないバイタリティだ。
中西は、日本を代表する万葉集の研究者。著書は100冊を超える。万葉集は読むたびに発見があり、それが面白くてたまらないと、研究を続けてきた。歌の解釈は独特で、それは膨大な知識から生まれたもの。自宅の庭には図書館のような書庫もあり、古今東西の文献が並んでいた。89歳の今なお探求心を失わない中西、その原動力は、わからないこと、だと言う。「わからないっていうことは、結論じゃなくてスタートラインに立っているということですからね」
90歳になる、この夏。中西は少年時代のことを思い出そうとしている。戦時中、軍需工場に動員され、爆弾の部品を作っていた日々。空襲の被害で工場一帯は焼け野原になった。そこで目にした凄惨な光景。脳裏に焼き付いた戦争の記憶は、自身の生き方の原点だと話す。令和最初の夏に、中西が伝えたいメッセージとは？