ドラマ30『家族善哉』(40回) 放送終了


校長先生役 愛川欽也さんインタビュー







多喜井高校の校長役を演じる愛川欽也さん。「昼帯ドラマは久しぶり。『女優・杏子』(2001年)以来かな」という愛川さん。校長先生役は初めてだそうです。咲子の理解者で、相談相手でもある多喜井高校の校長役、愛川さんにお話をお伺いしました。

―今回のドラマ「家族善哉」の印象はいかがでしたか?
今の時代は学校でのいじめや子供の自殺、そういう話が割りと多いんですけど、このドラマが学校を舞台に言おうとしているのは、「命の大切さ」だと思うんですね。それを素直に表現している。ぜひ、大勢の人に見てもらいたいいいドラマだと思いますね。

―校長先生の役というのは…?
やったことないですねえ。でもこの校長先生という人は権威のある人というより、普通のおじさんだという風な感じの人ですね。押し付けがましくないし、自分でも一緒に考えながら答えを探していく、そんな役ですから、大事にしたい役ですね。

―愛川さんにとっての校長先生や先生の思い出は、何かありますか?
中学2年生の時の担任の先生は、まさに僕の出会った先生の中で一番素晴らしい先生で僕にとっては大切な先生でしたね。これまでにも小説にも書きましたし、いろんなところでも話たりもしています。社会科の先生で岡田先生。戦後、初めて僕に民主主義や平和とは何かを教えてくれて、一緒に勉強した先生でした。

―印象に残ったシーンやセリフはありますか?
毎回、いくつかいいセリフがありますね。命の大切さを言おうとしているセリフとか、立ち止まって少し考えてみようとか。立ち止まってみるというのは、人生の中で大事なことだと思いますね。

―今回の共演者の方々はいかがでしたか?
初めての方が多かったのと、竹内さん以外とはあまりからみのシーンはなかったですね。竹内さんとは初めてお芝居をさせてもらいましたが、やっぱりカンがよくて素直なお芝居なので、見ていて感じがいいとおもいましたね。

―このドラマのテーマの一つが「夢をあきらめない」ということですが、愛川さんは何かやり直したいことや夢に向かっていることがおありですか?
「やり直したいこと」じゃなくて、すでに「やり始めていること」なんですが、10年位前から「キンキン塾」というのを始めました。これは、最初、若い俳優さんの演技の勉強会から始まって今では30人くらいの人に演技を教えているんですが、最近、そこにも高齢化社会がやってきたというか、会社を退職してから第2の人生に「若い頃やってみたかったけど、出来なかったことをやりたい」という人が増えてきました。若い人に教えるはずが、だんだん高齢者の多い劇団になってきましてね、すごくいいことだと思うんですよ。「俺の人生、これで終わりだ」と思わずにもう1回、何かをやってみようと思う人を、僕も大いに応援したいと思っていますね。役者には定年はないんですよ。定年という区切りで人生も定年にしてしまうんじゃなくて、ね。来年4月の頭には7回目の公演をします。本も僕が書いて、演出もやります。

―11月に本も出されましたね。
「黄昏れて初恋」(出版社あ・うん)という2冊目の本を書き下ろしました。初老の男の恋物語で、ひとりぼっちの男が、やっぱり1人じゃ何か寂しいという気持ちになって、愛する人を捜して旅をする物語です。

―役者や演出家、そして書くことを通じて、愛川さんが表現しようとされていること、一番大切にされていることは何ですか?
「情感」ですね。情けを感じると書いて、「情・感」。今、この情感が失われている時代だと思うんです。人生の中で、男と女の間でも、ふれあいが描かれなくなってきている。今の映画や小説にも情感がない。昔はあったんですよ。たとえば古いフランス映画なんかにはね。僕は「情感」を失いたくないし、それを書いていきたいと思います。今度やる芝居もそういう芝居なんですよ。

テレビに芝居に本にと多角的に活動する愛川さん。「家族善哉」では咲子の相談役として、要所に2人のシーンがちりばめられています。人生を語りあういいシーンが多いので、お見逃しなく。