ドラマ30『家族善哉』(40回) 放送終了


橋本静代役 加藤登紀子さんインタビュー








思ったとおりのことを口にしてしまうマイペースな咲子の母・橋本静代を演じる加藤登紀子さん。役柄から子どもとの関係の話、健康維持法など、いろいろなお話が広がりました。

―咲子の母親・橋本静代についてどう思われますか?
とにかく率直なおばあちゃんですね。その場で思ったままのことが口から出るのね。筋は通っていないけど、思うがままなところがいいの。面白い人ですよね。考えているようないないような、頭がいいのかよくわからないけど。原作ではもっとお年寄りのイメージなんですが、静代は一般的なおばあちゃんの常識を覆すようなところがあって・・・。私がこれまで演じてきたのは、大体ひとクセあるような人の役ばかり。シャープな感じの編集者とか。今回は普通の奥さんなので、そういう意味では面白がって演じています。

―加藤さんご自身と比べていかがですか?
近いと思いますよ。能天気でドジで、家にいる私に近いですね。静代のような反応の仕方は生きて行く上で、楽ですね。私は主人から「直角ねえちゃん」とも言われていたの。昨日言っていたことと、今日言うことが違うって。でも、考えて、「こっちの方がいいかな」って思うから違ったことを言ってしまうだけなんですけど。だから「いい加減だな」とも言われます。でも「いい加減」というのは本来「いい」=「ほどよい」加減ってことなのね。「いい加減」って好きな言葉ですね。

―咲子は何かあると静代に相談に来ますが、加藤さんはどんな親子でいらっしゃいますか?
私は(子供に対して)コントロールが効いていないお母さんなんです。厳しくないお母さん。怒ることはめったになかったし。私自身は、「家にいる時は楽しくなきゃ嫌だ」って思うタイプなんです。だから主人からも「もっとちゃんと怒れ」と言われていました。でも子供って親が思うよりしっかりしていて「心配しなくていい。ママは仕事だけしてればいいのよね」なんて言ってくれていました。子供って教えなくても自然と身につけていることがあると思うんです。例えが良くないかも知れませんけど、昔、犬を鎖をつけずに飼っていた時に、散歩でも先導してくれて、ちゃんと帰ってくるほど、頭がいいんですよ。でも鎖をつけると、どんどん言うことを効かなくなる。それまで取れていたコミュニケーションが途絶えちゃうのよね。まず自由な関係であることが、お互いの信頼の上で絶対だと思う。自由を束縛したら、関係が損なわれる。コントロールしようとするから外れようとするんだと思います。それにはまず、子供が何をしようとしているのか見えないとダメですね。まず、それを見つけないと、ね。

―竹内都子さんや池乃めだかさんとの共演はいかがでしたか?
感心するのは、こんなにセリフが多いのに、全部頭に入っているってことですね。私は台本と首っ引きでまわりをハラハラさせていたんですけど…(笑)かたや旦那さんの池乃めだかさんは、セリフを入れないで来られて、その場でパッと覚えて、パッと忘れる。でも空気を作るのが上手くて、演技にウソがない。お2人ともすごく演じやすかったですね。

―演じることと歌うことの共通点はありますか?
私はステージで歌う時、リハーサルでもカンペ(カンニングペーパー)を見ないんですね。現場主義というか、見ると「次の歌詞は・・・」ということに意識がいって歌に集中できなくなってしまうんです。リハでわからないまま歌って、本番前に歌詞を確認するんです。歌って言葉が身体から出て行くんですよ。頭で命令するんじゃなくてね。セリフもその瞬間、瞬間に起こったことや相手のセリフを聞いた時に、自分の中から出てくる言葉が一番いいと思う。歌もそうで、歌っている時には次の歌詞なんて頭の中で探していないですよ。現在進行形で起こっているように自然にやれるのが一番いいと思います。

―加藤さんは年末(12月27日)まで毎年「ほろ酔いコンサート」で全国を回られていますね。
今年(2006年)の11月1日に過去のLPが6枚CD化されました。1972年のライブの録音や、子供が出来た時のアルバムやそれぞれに思い出のあるものばかりで、今聞くと、すごく新鮮な感じがするんですよね。この6枚の中から厳選した多種多様な曲を出来るだけたくさん歌いたいと思っています。私は50歳の時から年齢をUターンさせて数えて来て、ちょうど今37歳になるの(笑)。それがね、自宅にある体重測定計で測っても体内年齢が37歳って出るの。だから今年はそういう感じで、30代の気分で歌うつもり。

―えーっ!体内年齢が37歳!?そんなことがあるんですか!?ぜひ、健康維持の秘訣を聞かせてください。
そうね〜これといって特別なことはないような…強いて言えば夜寝る前の水シャワーかな。冷水で、肩甲骨やわきの下とかを刺激するのがいいみたい。最初は辛かったけど、慣れちゃうと平気ですよ。あとは骨盤体操で、夜寝る前に骨盤をゆるめて、朝起きるとしめる。週1回ピラテスをやっているのもいいのかも・・・。それと年間80公演くらいコンサートがありますしね。50〜60歳ってターニングポイントだと思うのね。男の人は身体のコントロールがヘタだと思う。すぐにお酒を飲みすぎたり。翌朝シャキッとする位でやめないと。

―加藤さんが生活の中で一番大事だと思われていることは何ですか?
やっぱり楽しく暮らすことですね。楽しくないことにご利益ないですよね。「ガマンしなさい」とか。勉強も楽しいように教えればもっと勉強すると思うのに。物事がわかってうれしかったっていうことは誰にも経験あるはず。おどかしみたいに「勉強しなさい」っていうだけじゃ、ね。いいことは楽しいはず。毎日毎日楽しいのはすごく大事。おいしいご飯を食べるとか…。そういえば、このドラマも食べることに一生懸命ね。ご飯がうれしい家族っていうところもウチと共通点あるかな。

―「食べること」も大事なんですね。
ウチは母がまだ食事を作ってくれているんですけど、戦後、ハルビンから引き揚げて来た時に、もう生きるか死ぬかの悲惨な状況の中で、でもそこに境目があるっていうんですよ。「生きようとする気力は食べ物にかかっている」って。食べて栄養を取らないと生きる気力を失くしてしまう。モラルも何も無くなってしまう。だからちゃんとしたものを食べることは大事。今はカロリーは足りているけど、栄養が偏ってしまっているんじゃないかしら?3度の食事も大切にしたいですね。

ひとつの質問から多方面にどんどんお話が広がる加藤さん。何より、声がすっご〜く素敵なんです。思わず聞きほれてしまうというか、どこか癒されるようなふんわりとしたその喋り方!ついつい、いつまでもお話を聞いていたくなるような方でした。加藤さん演じる静代さんも主人公の咲子を癒してくれる素敵なお母さん。1月放送分では、この母娘にある事件が起こります。お見逃しなく!