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2023年08月27日(日) 放送分

山根一朗鮎料理人
Vol.1265

日本一の清流が育む天然の味わい
鮎を愛し、鮎に尽くす男の絶品塩焼き

島根県西部の津和野町日原地区。人口600人ほどの集落に、日本一とも称される鮎料理の店がある。80年余りの歴史を持つ「美加登家」。古い旅館をそのまま利用した店内は趣があり、昼と夜それぞれ8席程度、食事を終えるなり翌年の予約をする客も多い。
主は山根一朗。祖父が創業したこの店で腕をふるうようになり30年以上、全国の美食家たちを唸らせてきた。
山根が扱う鮎は全て、店の前を流れる高津川で獲れた天然モノだ。日本一の清流として知られる高津川...そこで育った鮎もまた、日本一美味しいと山根は言う。
店の名物が、夏限定のコース。デザート以外全て鮎、という文字通り鮎づくしだ。
新鮮な鮎を骨ごと輪切りにした涼やかな刺身「背ごし」、鮎の頭で取った出汁で炊きあげる「鮎ご飯」、独特の苦味とうま味が癖になる内臓の塩辛「苦うるか」など、1日に200匹もの鮎を使い、コース料理をつくり上げている。
そしてメインは「塩焼き」。塩のみのシンプルな味付けだけに、料理人の腕が試される。山根が日本一と称される理由は、この「焼き」にある。
うだるような厨房で、鮎を知り尽くした山根が五感を研ぎ澄まし焼いてゆく。子どもでも頭から全て食べてしまうほどの絶妙な焼き加減は、誰にもマネできないとされる。遠来のお客からは、食べているだけで思わず涙が出てきたという声が上がる。

「小さい頃からこの店で育ち、今も鮎の仕事をやっている。だから鮎のおいしさを知ってもらって、それで笑顔になってくれれば幸せです」
山根は、はにかみながら語る。

高津川の鮎漁の解禁期間は5月末から9月いっぱい。その間は翌日の仕込みや鮎の買い付けなどがあるため、休みはほぼない。鮎を愛し、自然と向き合い続ける男のひと夏を見つめる。

PROFILE

1965年、東京都生まれ。
3歳の時、美加登家がある島根県日原町(現・津和野町)に移る。
地元の高校を卒業後、料理修行で日本各地を転々とするが、25歳で津和野に戻り美加登家で板前として働き始める。
家族は修行中に大阪で出会った妻と独立した1男1女。妻は女将として、毎日店を支えている。
甲斐バンドの大ファン。

STAFF
演出:天野衛
構成:田代裕
ナレーター:窪田等
撮影:古東千由
音効:中嶋尊史
編集:山村昌樹
制作協力:ビデオユニテ
プロデューサー:沖倫太朗

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