第35回 山本奈臣実

マドンナ、メッチャやりたいんですよ。


―中田ボタン師匠に弟子入りされていたんですね。

ずっと新喜劇に入りたくて、学生時代にいろんな人に言いまくってたんです。そしたら、友達のお父さんがボタン師匠と知り合いで、紹介してあげると言われて、あれよあれよという間に…。弟子入りしてから新喜劇に入るまでは1年半くらいでした。その間は預かり弟子みたいな感じで、師匠の仕事もNGKの時にしか付かなかったんです。「新喜劇見とき」とか、言われて。弟子という感じはしなかったです。

―いつごろから新喜劇に入りたかったんですか?

小学校の時から舞台関係の仕事がしたくて、人形劇で劇団カッパ座というのがあるんですが、そっちへ行くか、新喜劇に行くか、に決めてました。小学校の卒業アルバムにも「新喜劇に入る」って書いてました(笑)。
(筋金入りですね~)
お芝居が好きだったんです。小さい頃から太ってたし、自分を生かせるのは、「絶対、新喜劇や」と思って。子どもの頃から好きやったんで。

―よく見ていた頃の新喜劇は?

内場さんとかがニューリーダーの時代で、その前に寛平さんとめだか師匠のサルネコが大好きでした。高校3年生の時に、めだか師匠の35周年公演を見に来てたんですよ。今回、50周年に出させてもらって、自分が出てるっていうのが、メチャクチャ嬉しくて…。中学、高校とは寮生活だったので、その間は新喜劇をあまり見られなくて、夏休みに家に帰った時に久々に見たら、失礼な話ですけど、「誰?」っていうような若手の人がたくさん出ていて、「あれ? 自分チャンスちゃうん?」と思ったんです。メンバーがガラッと変わってて。
(それでツテをたどってボタン師匠に弟子入りされたんですね)
師匠についてすぐに新喜劇のオーディションもあったんです。今別府さんが入った時の。社員さんに「受けるか?」って言われたんですけど、入ってすぐやし。で、次の年のオーディションを受けて、20歳の時、新喜劇に入りました。

―憧れの新喜劇。初舞台は覚えていますか?

それが、私、初舞台は急に呼ばれて出たんですよ。火曜日の2回目に。
(ええ~っ!?)
出番がなかったんですが、その週のオープニングにインパクトが欲しいと、内場さんに「あの太った奴、出したらええやん」と言ってもらって。急に呼ばれたんですよ。妹と友だちと神戸で一緒にご飯を食べてた時に、電話がかかってきて、「えっ!?」ってなって。「私いま、ご飯食べてるんですけど…」って言ったのは、メッチャ覚えてます。で、妹と友達を置き去りにして、NGKに駆けつけました。夏祭りの芝居で浴衣着て、セリフを覚えられなくて、全部手に書いて…。その時、(レイザーラモン)RGさんとカップルの役で、相撲ネタをRGさんが考えてくれて、ま、浴衣も着てるし、内場さんのイジリも「新弟子の人ですか?」って。初舞台で速攻、相撲ネタをやったんですよ。メッチャ覚えてます。
(すごいですね~お客さんの手ごたえは?)
ウケて、「え~っ!?」と思って。緊張してたので、最初はウケてるかどうかもわからなくて。RGさんとか内場さんのおかげで、今の自分があるな、と思ってます。初舞台は台本に名前もないし、劇場のアナウンスもなし。私、台本はけっこう取ってるんですが、初舞台の台本は手元に残ってないんですよ。

―初舞台でキャラクターが決まって、ずっと?

そうなんですよ。本当はかわいらしい太った人をやればいいんですけど、私、ちょっと意地悪い顔をしてるし…。役者で平田淳子さんと言う方がいらして、その方の舞台を見た時に、「あ、意地悪やけど、メッチャ面白いやん」と思って。結構、ガミガミ言う役も増えてるんで、そこやな、と思いましたね。(酒井)藍ちゃんはほわっとしてるし、藍ちゃんの入る前に、そっちにした方がとも言われたんですが、私、口悪いですし…。「あなた浮気したでしょ!」とか、旦那さんをメッチャ怒るセリフはいくらでも言える気がしますが、ほわっとした役は苦手なんです。あと金持ちのおばちゃんの役は一番苦手です。由美姉さんとか、あき恵姉さんとかメッチャ見て、しゃべり方とかこうなんやろなと思うんですけど、品がなさ過ぎて…。一番苦手なのは、可愛い役よりそっちかも知れない。

―自分でやりたい役はありますか?

私、マドンナやりたかったんですよ、ずっと。なんでかというと、やすえ姉さんって昔、けっこうぽっちゃりで。失礼な話ですけど、「マドンナ、デブでも出来ん違うの?」と思ってたんですよ。でも、なかなかチャンスに恵まれなくて。川畑兄さんが座長になってすぐくらいに、すっちーさんも出てたんですけど、マドンナを柔道場の話でやらせてもらって。メッチャ嬉しかったんですけど、視聴率メッチャ悪かったらしいです。2回目はすっちーさんの週で、ダイエット場の話でやらせてもらって。それはすごい楽しかったです。自分のイベントの時もやらせてもらいました。

―新喜劇の中で憧れは?

あき恵姉さんとか、やっぱり由美姉さんとか、やすえ姉さんとか。他の方ももちろんなんですけど。やすえ姉さんと、新喜劇で「夫婦善哉」をやった時に、やっぱり凄いなあと思って…。笑いももちろん取りますけど、やすえ姉さんは芝居の中で笑いを取っていきはるというか、ネタネタしてない。内場兄さんもめだか師匠もそうなんですけど。最大の憧れは誰かなと思ったら、やすえ姉さん。マドンナもこなして、三枚目もこなして…。

―ネタがある方がキャラクターとしては強いですよね。

役者としてネタに頼ってしまうというか。今、新喜劇はネタが出来る人がいて、キャラクターが強かったら強いと思うんですけど、芝居をさせてもらえたら、うれしいかな、と。よくオープニングをやらせてもらうんですけど、オープングは大事と言うか、オープニングが盛り上がらないと、流れもよくない。一回、作家さんから「オープニングの女王」とか言われて、うれしい反面、もっと芝居やりたいな~と。がっつりお芝居やりたいですね。

―お芝居は好き?

見に行ったりするのが好きで。自分やったらどうするかな、とか、どうやったらうまくなるんやろとか、考えながら見るんですけど。新喜劇ってちょっとの出番、私たちは「くり抜き」と言うか、パッと出てパッとはける。その中でもだんだん上手くなる人は上手くなるじゃないですか。芝居が出来る人の方が絶対強いから。ネタ作るのももちろん大事なんですけど、私そこのところはお笑い偏差値が低すぎて。変な話、いろんな人と差をつけるために上手くなりたいから芝居見に行って、吸収できたら、と。

―新喜劇は若手が多いので、しのぎを削られているのでは?

全然ですよ。「私なんて…」っていつも思いながら。ネタ作られへんし。藍ちゃんとよく間違われるんですよ。昔はぢゃいこと間違われてたんです。ぢゃいこっていう名前が印象的じゃないですか。太ってる=ぢゃいこみたいな。私って言われることがまあ少ないんですけど。差をつけるために自分が一番何の力をつけるかというと、芝居かな、と。藍ちゃんはキャラクターあるし、ぢゃいこは大きいし。すごい悩んでた時期があって。その時に森田(展義)君が、「顔、覚えられているってことやん」っていうてくれたんですよ。「名前なんて後からやで」って。だから自分のいいところをもっと伸ばせたらなと思って。藍ちゃんにその話したら、「私、ガリクソンさんにメッチャ間違えられますよ」って。みんなそれぞれあるんやな、と(笑)。

―今だからいえる舞台でのハプニングとかありますか?

相撲をやる時に、石田靖さんとガチで…石田さんはガチで来るんですよ。片方の胸ばかり当たられて、痛くなって。すみませんけど、もう片方の方にぶつかってくださいと言ったことがあります。あと、ポリタンクぶつけられて、頭真っ白になって、ここがどこかわからなくって、ほんとに吐きそうになって、2秒くらいで、「舞台や!」と思って、我に返ったこともあります。石田さんは絶対に後から「大丈夫か?」って聞いてくれますけど。
(体力勝負になってますねえ…)
石田さんネタが多いんですけど、私腰痛持ちで、石田さんから蹴られて、腰痛が治る、ってこともありました。ツボに入ったんですかね。「あれ? 歩ける!」と思って。

―12年間で一番うれしかったことは?

去年の中日劇場での芝居で、めだか師匠のネコとサルをまさか生で見れると思ってなかったし、自分が同じ舞台に立ててるとも思ってなかったんで。そこに坂田師匠も加わってたんで。お笑い界のレジェンドを近くで見てると思ったら嬉しかったです。いろんな人のギャグを舞台の上で一緒にやったのが嬉しかったです。竜じいさんの足を動かして「ええ運動になった」というのとか。子どもの頃、見ていた人と一緒の舞台に立ててるのが、ウソやろ? と思うこともあります。

―お芝居以外でハマっている事は?

料理が好きで、お弁当作るのがメッチャ好きなんですよ。私が出番の時、(高橋)靖子さんが一緒の時は、私が靖子さんのお弁当を一緒に作ってくるんです。1人分作るのも2人分作るのも3人分作るのも一緒なんで、その時にいる若手の子の分も作って来たりとか。マネージャーさんは契約社員の時から仲良くしてて、マネージャーさんの分は絶対作ってくるんです。弁当を詰めてる時がメッチャ好きなんです。
(ツイッターもお弁当とかいっぱい載ってて、楽しそうですよね)
ツイッターに載せると、サボらないし、色どりとかも気にするし。何品か作るから、ちゃんとバランスよく食べれるかな、と。自己満足の部分もありますけど、サボらんようにやってます。
(お米も雑穀米ですね)
みんなから健康志向やなって言われるんですけど、あれは味が好きなだけで。私、ご飯飲み込んじゃうんで、雑穀米やったら、ちゃんと噛むから…。
(食べるのもお好きなんですね)
弁当も他の人の倍くらいの大きさです。たぶん。普通に家で食べる時も、おかずをおかわりしたりするんで。みんなに「こんなん食べてたら(身体に)良さそうやのに」と言われるんですが、いやいや、量が違うから、と。
(ツイッター見たら食べたくなりますね)
そうですか。うれしいです。みんなそう言ってくれるんで。
(身体のほうは健康?)
たぶん。私、昔より15キロ瘠せてるんですよ。新喜劇いた中で最高105キロまで太ったんで。出番中太るんですよ。起きてる時間が長いから。1回の出番で2キロくらい太って、休みの時に落として…。私、お腹がメッチャ鳴るんです。舞台で(お腹が)鳴ったらおいしいやん、って言われるんですけど、真剣な話をしてる時にも鳴りそうになるから、舞台が終わったら、食べるようにしてるんですよ。この前、その話をやすえ姉さんにしたら、「じゃあ、ずっと舞台に出続けたら、2キロづつ増えるってこと?  怖~い!!」って(笑)。

―最後にこれからの抱負を聞かせてください。

色んな役を出来るような人になりたいなと。新喜劇って、素人さんからしたら、芝居として見られないことがあるんです。「全部アドリブやろ」と言われたり。全部アドリブみたいに見せてるのもすごいんですけど。もっとちゃんと喜劇として、みんな作りこんでんねんで、ということに誇りをもってやりたいと思います。もっとちゃんとお芝居として見て欲しいと思いますね。
(若手の間でそんな話も?)
ネタが大事という人もいれば、芝居が大事という人も、けっこう別れてますけど、私は断然芝居の中で笑いを取っていくのがすごいと思うので。小劇団とか、自分らで一から道具も衣装も作っていくのに比べたら、新喜劇にいる環境はすごい恵まれている。芝居をやってもお金になるのって少ないじゃないですか。お金もいただいて、衣装も用意していただいて。だから、この環境に感謝しながらちゃんとやっていこうと思います。

2015年10月26日談

プロフィール
1983年3月15日 兵庫県生まれ。2001年 入門中田ボタン。