第92回 野下敏規

両親に黙って新喜劇に入りました。


―もともとお笑いをやろうと思われてましたか?

そうですね~高校卒業してからちょっと、NSCとかお笑いの養成所に入ってみたいという気持ちはあったんですけど、なんか、やっぱりそんなんは無理やろなと考えて。高校が工業高校やったんで、9割の人たちが就職する感じで、それに乗っかって、僕もとりあえず就職して。丸2年働いて、なんか、やっぱりお笑いがやってみたいなあと思って、せっかくの人生なんで、受けるだけ受けてみようかなと思って、NSCに入学願書を出して…。
(自分で貯めたお金で?)
そうです。
(お笑いをやりたいと思われたきっかけは?)
小さい頃からずっとお笑い番組ばっかり見てて。「めちゃイケ」とか「はねるのトびら」「水10!」(いずれもフジテレビ)とかいろんなのを見て、新喜劇も小さい頃から見てて、お笑いに憧れていたというか…。
(憧れは?)
M‐1グランプリでチュートリアルさんが優勝した時は、徳井さんになりたいなあ、って。ふふふふふ(笑)。ちょうど小学3年生のクリスマスの日ですね。カッコイイなって思いました。
(20歳の決心ですが、ご両親には?)
会社を辞めたことは正直に言ったんですけど、NSCに入学したことは、言わずに、こっそり。新喜劇のオーディション合格した時に、もう話そうと思って、ちょうど入団して半年くらいの時に、YESシアターで、僕ら金の卵10個目のデビューライブがあったんで、その当日に、「ごめん、今まで黙ってたけど、このチケットを渡すから、今日、来てくれへん?」と。
(サプライズですね~)
オカンとオトンの分2枚用意して。お父さんは「行くわ~」みたいな感じやったんですけど、お母さんにメチャクチャブチ切れられまして…(笑)当たり前ですけど…。「なんやそれ? 行くか! こんなもん!」みたいな。
(あ~あ…大丈夫でした? そんな状況で舞台に立って…)
そうですね。ちょっと…(笑)いろんな感情がありましたね。ダメな人間でした。

―NSC時代は?

漫才コンビを組んでました。漫才でやって行きたいと。1人で入学して、入学してすぐに相方探しの会があって、ボケやりたい人、ツッコミやりたい人がバーッと列になって、1人5分ずつ交代して喋って行って、そこで(相方を)見つけました。
(ちなみにボケとツッコミはどちらを?)
最初はツッコミをやってました。
(ツッコミ!?)
僕がツッコミで、相方がボケで…。割と普通な感じで。しゃべり方が変なだけで。
(テンポは?)
あ~テンポ…ちょっと独特なテンポやったと思いますね。ずっとニヤニヤしながら、突っ込んでましたね。
(コンビはNSC時代だけ?)
卒業してから1年ほどやっておりました。結果が出ずで、コンビ間の仲もちょっと悪くなって行きつつ、解散となって。ちょうどその時、金の卵10個目オーディションがあって。それに応募して…。

―漫才から新喜劇を選ばれた理由は?

NSC在学中に僕らの時か前の時からか、川畑さんが講師で新喜劇の授業があって。ほんとに紙1枚のストーリーで、ボケとのところが空欄になっていて。その授業を受けた40~50人が5人1組で、20分くらいでボケとかを考えて発表していくという授業だったんですが、やってて楽しいな~と。
(お芝居経験は?)
いえ、全く。授業の終盤になってきたら、現役生だけでやる新喜劇があって、そこで、結構いい役をもらって、YESシアターでお客さんを入れてライブをして。その時、なんかメッチャ、気持ちいいな~と。
(どんな役だったんですか?)
え~っと…ずっとボケ続ける(笑)。普通のお客さんみたいな役で。1景、2景、3景とあって、現役生がメチャメチャ数が多くて、1景しか出ないという生徒も多くて。僕は3景の中で一番ボケる役で、メインのストーリーの人はいるんですけど、店のお客さんで…。
(その時も今みたいなまったりしたしゃべり方で?)
そうやったと思います。
(あまり意識してない? 「置きにいってる」とかじゃなくて?)
あははは(笑)うふふふっ。まあまあ、まあまあ、ちょっとは誇張しつつ、というのはありますけど…。
(それで新喜劇を受けてみようと?)
そうですね、NSCの時の社員さんとかに、1回受けてみたら? 新喜劇に向いてそうやで、って言われて…。

―野下さんは最初に見た時から完成度が高くて…。

どういう意味ですか?
(テンポが速い新喜劇の中で流れを壊さないスローテンポなセリフが…)
そう、ですね…。川畑さんもその喋り方の方がいい、っていう…。無理してしゃべり方変えるな、と。
(普通なんですね)
そうですねえ…気ぃ抜けたらこんな感じで…はははは(笑)

―新喜劇に入ってみて、実際どうでしたか?

最初は芸歴も年齢も上の人たちばっかりなので、なじめて行けるかなというのは、むちゃくちゃあって。ずっと怖かったんですけど、いざ楽屋に行ったら、メチャメチャ面白くて楽しくて。なんか間近でテレビ見てるようは感じで。皆さん、ボケてツッコんで、ギャグがいっぱいあって…。
(雑用とかもあったと思いますが)
「ここはこうだよ」と皆さん教えてくださいますし、ダメなところは怒ってくださいますし。そこまで苦にはならないですね。昔、中学・高校とラグビー部やってたんで、そういうの、慣れてるんですわ。
(体育会系なんですね! 体力にも自信が?)
ほっほほ。今はもう、ですけど。昔は痩せてました。高校卒業してから、20キロくらい太ってると思います。NSC入ったらちょっと太って、新喜劇に入ったら、もっと太って。新喜劇の先輩方が、ご飯にいろいろ連れて行って下さって、「ちゃんと食べや」と言われるのを遠慮なく…。

―初舞台は覚えてますか?

祇園花月の川畑さんの週で、太田芳伸さんのヤクザの弟分の役で、借金相手を怖がらせるという役でした。もう、緊張しすぎて、ボケを飛ばしました。
(ボケを!?)
はい、もう真っ白になってしまって。あんな大舞台出たことなかったんで…。確か、屋台にうどんの値段が500円って書いてあって、そこにマジックで、1本線をつけ足して、1500円にして怖がらせるっていうボケをやったんですけど、マジックの先が大・小あって、緊張しすぎて、小を選んでしまって。うっす~い細い線になって、お客さん、全然見えへん状態で…(笑)。舞台上で川畑さんから、「何で、そこ小さい線で書くねん!」とダメ出しされたのを覚えてます。
(NGKの初舞台は?)
警官の役で太田さんが強盗役で、逮捕して連れ去るんですが、そこでも緊張して手錠がかからなくて…。「太田芳伸逮捕する」というのを、「太田伸芳逮捕する」と、間違ったりとか…。

―最初に大きな役を貰ったのは?

それこそ1ボケを祇園花月で川畑さんの週で使っていただいて、信濃さんのリーダー週でも。川畑さんの時は珠代さんと二人でボケる役でした。川畑さんがメチャクチャ僕を育ててくれる感じで、すごいありがたいです。それに応えられるようにくらいついて行く感じですかね。
(いろいろ細かいアドバイスを?)
はい、とりあえず、芝居がちゃんとしてないと、ボケがただのいちびりになってしまう。ちゃんと芝居しながらボケられるボケ方とか、ただセリフを言うだけじゃなくそのボケをどういう感情なのかちゃんと決めるとか。お芝居とかがメチャクチャ難しくて、まだ全然なんで…。
(テンポのある新喜劇の中で、スローテンポのセリフは難しいのでは?)
そうですね、そこら辺は、自分ではわからないところがあるんで、川畑さんとかから、「もうちょい、早目に喋ってくれとか」アドバイスを貰って。藍さんとかには、祇園花月の週に出させてもらった時に、客層によって、ゆっくり喋るスピードを変えて行った方がいいと言われたり。ご高齢の方が多い時は、ちょっとゆっくり目に喋ってます。

―ほかに印象に残ったアドバイスは?

すちさん週に出た時には、何でもかんでもどのシーンでもボケたらいいわけじゃない。的確なところにボケをつけるというのを教わったり。急にボケたように見えるのをなくすために、それまでの芝居をセリフがなくても、自然な流れで芝居をして、いかに自然な流れでボケるかとかをいろんな先輩方にメチャクチャ、いろいろ、教えていただいてます。
(これまでにないキャラクターだけに、いろんな座長さんに使われて…)
そうなって行きたいですよね。

―新喜劇入団から1年半、舞台デビューから1年ちょっとで、出番が多い気がしますが、この先の目標は?

そうですね…なんでしょう? 認知されるギャグがあれば、作りたいなと思いますし、対決ボケ、説得ボケ、僕にしか出来ないところを、どう見つけていくか。隙間産業というか。どうにか、ボケの人たちの中でポジションを作って、どう使ってもらえるか。今、1ボケをやっている方たちにどう対抗していくかというところですかね。今、2劇場なので、最初だけで終わらないようにしたいです。
(舞台にこれだけ出られるようになって、ブチ切れられたお母さまは?)
お父さんが、よく言ってくれたんやと思います。徐々に、徐々に…。劇場とかには絶対に足は運ばないですけど、おそらく、テレビ放送は見てると思います。実家帰っても、その話はあんまりしないです。
(じゃあ、もっと出ないといけませんね)
そうですね。

―プライベートでハマっていることや趣味は?

僕、こんな見た目で言うのは嫌なんですけど、「ももクロ」とか「エビ中」とか、アイドルのYouTube見てしまうんですよ。自分からは、言いたくないんですけど…。帰ったら、絶対見ますね。
(あはははは…言いたくない? それが翌日の活力に?)
そうですね。落ち込んでる時は見ますね。めちゃくちゃネガティブなところがあって。怒られたとかじゃなくて、自分でなんか普通に、たとえば同期入団の子と喋ってて、家に帰って振り返ってたら、「何で僕、こんなこと言うてるんや?」みたいな。「うわっ最悪や、どうしよ?なんでこんなこと言うてしもたんや」とか(笑)。
(ええっ!? 自分で自分を追い詰めるタイプ!?)
先輩とかの受け答えでも「なんで、こんなん言うてしもたんや」とか。めちゃくちゃありますよね。
(気にするタイプなんですね。そういう時はももクロとか見て、忘れる?)
ふふふふ。忘れるというか、まあまあ。次の日に、「あの時はこういうことじゃなくて…」と説明します。
(反省がないと人間は進歩しませんからね~)
たまに一人でカラオケ行ったりもします。たまにですけど。
(その時に歌うのは?)
そこでアイドル歌ったら、メチャメチャ気持ちわる~と思うんで、普通の曲を歌います。ポルノグラフィティーとか歌います。
(絶唱系?)
絶唱ですね。
(ぜひ舞台でも聞いてみたいですね)
すみません、あんまりいい答えが出せてなくて…。
(いえいえ、帰ってから気にしないでくださいね)

2019年9月2日談

プロフィール
1994年6月4日 大阪府生まれ。