第57回 小寺真理

新喜劇に入って、親孝行するようになりました。


―もともとは何を目指されてたんですか?

何も目指してなくて。ちょっと話がズレるんですけど、高校2年の時に3年の文化祭で「メイド喫茶」をすることに決まって。私、中途半端なメイド喫茶をやるのは恥ずかしいなと思って、友だちに「メイド喫茶で働いてくるわ~」って言って…あははは(笑)。
(メイド喫茶に?)
私は1人っ子で親もすっごい厳しくて…こっそり面接受けて土日だけ働きに行ってたんです。アルバイトも初めてだったし、高校以外の友だちも出来て、楽しくなって。でも親からしたら、土日何も言わず出かけて行くし、高校も帰宅部ですぐに帰ってくるし、心配になったみたいで。母親が「こんなパンフレット見つけてきてんけど…」って、吉本のNSC女性タレントコースのパンフレット持って来たんですよ。お花も出来て、着付けも出来て、フリートークも学べます、みたいな。
(えーっ、そんな内容だったんですね)
「え!?」と思ったんですけど、レッスン場がメイド喫茶から近かったので、こんな近かったら、平日とかでも、レッスン行ってるって言って、メイド喫茶行けるんちゃうの!? と思って。あはははは。部活みたいな気持ちで受けてみることにしました。ちょうどその頃、「ロケみつ」(MBS)で稲垣早希さんがすごい人気があって、「かわいいな~」と思って憧れていた人が1期生でしたし。でもメイド喫茶が一番やったんですけど(笑)。

―実際どんな授業だったんですか?

高校3年の時にNSC女性タレントコース5期生で入ったんですが、お花とか学べると思ってレッスン受けたのに、先生が入って来て、プリント1枚配られて「隣の人とコンビ組んで漫才せえ」って言われて。「えーっ!? 何これ!? 最悪!」って(笑)。しかも30分後に見せなさい、なんですよ。こんなことするために入ったんじゃない、って正直思いましたが、時間もないので、初対面の子ともう~必死で作りました。まるむし商店の磯部っち先生も授業を持ってくださっていたんですけど、そこでは「1分間、面白い話せえ」。ネタがないので、ずっと隠してたメイド喫茶の話をするしかないと話してみたら、磯部っち先生が「それ、もっと言わなあかんわ」。それでメイド喫茶の話をするようになって、ネタというかトークはこうした方がいいよ、と教えてもらいました。
(※現在、NSCに女性タレントコースはありません)

―その後は?

在学中にラジオとかお仕事をいただくようになって、ある時、ラジオでメイド喫茶トークをしていたら、たまたま親がそれを聞いてて…あははは(笑)。「実は、メイド喫茶で働いてて…(高音で)お帰りなさいませ~って、声変えれるんですぅ」。お父さんカンカンに怒って。お母さんにも「お前が吉本に入れるからじゃ~!」って一緒に怒られて。そのあと1週間くらい口聞いてくれなくて…。
(そうなりますよね~)
その時は、NSC女性タレントコースでのお仕事も楽しいな、と思い始めてたので、メイド芸人じゃないけど「メイドタレントになるから働かせて!」とお願いしました。だから、憧れて入った訳ではないです。不純ですね。メイド喫茶で働きたいからって…。
(ちなみに文化祭は成功したんですか?)
大成功したんです! 卒業アルバムにもすごい大きな写真載せてもらって(笑)。ずっと隠してたんですけど、その頃には、友だちが稲垣早希さんで検索したら、「こんな人も」というところに、私も出てきてました(笑)あいつ、メイド喫茶で働きながら、吉本行ってたんや! って。はははは。

―タレントコース卒業後は?

当時、お笑いコースは卒業したら、「ワラビー(ワラb)」(2008年4月から始まったbaseよしもと若手芸人入れ替えシステム。※現在はありません)で、劇場メンバーになっていくという感じなんですけど、女性タレントコースは卒業したらバイバイか、1年留年して学ぶか。それで、当時のマネージャーさんが、桜の妹分みたいな感じでガールズユニット「つぼみ」を作ろうということになって。「つぼみ」を作ったマネージャーさんは天然素材(吉本天然素材)さんが大ブレークした時に入社された方で、天素みたいなガールズユニットを作りたいと思っていらしたらしくて。お笑いも歌もダンスも頑張って! みたいな感じやったんです。「つぼみ」をやりながら、大学も行ったんですけど、タレント活動が忙しくなって辞めました。

―お笑いコンビも組まれてましたよね?

「つぼみ」の中で、それぞれコンビを組んでたんです。私は「りんごあめ」というコンビで、その時もメイドと普通の女の子というネタでした。それで、なぜかNGKで漫才やらせてもらったり…。
(え~っ!? それはすごいですね~)
もう、「なんで??」って。NSC出たての女の子たちがNGK? って。しかも、お笑いコースじゃない、女性タレントコースの「つぼみ」から。1日だけの夜公演だったんですけど、矢野兵動さんとかシャンプーハットさんとかすごいメンバーの中に。なのに、その時、相方が足骨折して…あははは…松葉杖とメイドの訳わからない漫才で…あははははは(大笑い)。
(出来はどうだったんですか?)
めちゃくちゃでした。それが、名古屋の中京テレビで放送もされて…ははは。名古屋の方から「すごい漫才見せてもらいました」みたいな感想が来て。メイドだけでもおかしいのに、ケガしてる女の子出てきて…あはははは(笑いが止らず)。

―新喜劇に行かれるきっかけは?

私は清水けんじさんと高井俊彦さんとYES-fm(イエス・エフエム)でラジオを4年くらいやらせてもらって。最初は高校生だったので、いろんなこと教えて頂きました。その番組が終わってから、新喜劇って楽しそうやったなあ~って思ったんですよ。その頃、ちょうど相方と、「つぼみ」って、いずれは個々に出ていく場所やから、自分たちも20歳を越えて、そろそろちゃんと考えなあかんよね、いつまでも「つぼみ」じゃダメだよね、どうしていく? という話をしました。お芝居とかコントとかやらせてもらうこともあったので、「新喜劇とか受けてみいひん?」「せやな~」となって、マネージャーに相談したら、今抜けたら困るから、1年間待って、それでも気持ちが変わらなかったら、新喜劇のオーディション受けていいよ、と。私は1年間気持ちが変わらなかったんですが、相方は普通に戻りたいと思ったみたいで。このきっかけで相方は「辞めるわ」、私は新喜劇の金の卵7個目のオーディションを受けて合格しました。その後「つぼみ」の卒業ライブがあって、翌日に、新喜劇のお披露目会があって、NGKで内場座長が「新人を紹介します」って。入ってから半年間は稽古のみやったんですけど。
(ご両親は新喜劇入りには?)
「子どもの頃からよう見とったもんな~」みたいな感じでした。私、大阪の茨木西高校で、進路相談で先生に「大学も行きますけど、吉本も行きます」って言ったら、先生に「何でみんな吉本行きたがる?」って言われて。茨木西高はナイティナインさん、しずちゃん(南海キャンディーズ)さん、年上だけど同期のデニスの植野君、それにすっちーさんも出てて。その話を両親にもしてたんで、「縁なんかなあ」みたいなことを言ってました。気づけば吉本でしたね。

―初舞台は覚えてますか?

めっちゃ覚えてます。NGKで川畑兄さんの週でした。赤ちゃんを抱いて見せに来る役なんですけど、由美姉さんに「赤ちゃんの抱き方がなってない!」って。1人っ子なので、赤ちゃんの抱き方もわからなくて、すごい手取り足取り教えていただいて。「こんにちは」の一言だけですけど、それも緊張するし、「こんな難しいんや~」と思いました。過去と未来を行き来する話で、すごいお姉さん方の早変わりの多い芝居で、暗転中にてんやわんやして同期の子と一緒に先輩方のお着替えを手伝って。「新喜劇ってこんなに大変なんや~」って。

―メイド喫茶経験が役立ったことは?

お正月の祇園花月の辻本兄さん週の舞台袖で「実はメイド喫茶で働いてて…」と話してたら、兄さんが「なんやねん、メイド喫茶で働いてるって。俺の娘やったら絶対許さんわ」。その直後の本番で「お前メイドらしいことせえ」ってアドリブで言われて、「ひえ~~っ!?」ってなって。
(いきなり?)
そうなんです。「人質に取られて、悲鳴上げるメイドっぽいことせえ」って振られて。ほんまにアドリブやったんですが、そこでメイドキャラをやったら、パーンってお客さんに笑ってもらえて。次の週から、ぶりっ子キャラというのが、もう台本に入ってたんですよ。
(早っ!)
メイドは、なかなかお芝居に組み込むのが難しいから、ニュアンス変わって、ぶりっ子で。こんなすぐに反映されるんや、って。

―キャラクター定着ですね。

ウィキペディアとかでも私のこと、書いてくださっているんですけど、「社会的にダメな役が多く…」(笑)。そういう感じなんや~って。なんだったかな…(スマホで検索)「マドンナ役を演じることはほぼなく…ヤクザの愛人及び共演者の浮気相手など、社会的に問題のある役柄で登場することが多い」はははは(笑)…って書かれてて。川畑兄さんに「そういう顔やから、そこを頑張れ」って。
(そういう顔て…)
誰だったか、お兄さんに、「新喜劇の菜々緒さんみたいな感じやんか。ヒールで男を踏みつけそうな顔してるやんか」って(笑)。「そういう役頑張ったら? マドンナじゃない役もええやん」みたいな。確かに似合うなとは、自分でも思うので。そういう役やったら「小寺かな」って言ってもらえたらな、と。でも両方できないとダメやと思うんですよね。

―その後はどんな舞台に?

辻本兄さん週と川畑兄さん週に出していただくことが多くて…。川畑兄さんには、「お芝居の中で愛人だとか浮気相手だったりしても、オープニングも出来ないとあかんし、普通のマドンナも出来ないとあかんし、だから新喜劇をもっと勉強し」と言っていただいて。辻本兄さんにはキャラクターを勉強させてもらって…という感じですかね。
(とくに辻本座長週では撃たれるネタも…)
あれも最初はアドリブで辻本兄さんに「パーン、パーン」と撃たれて…。
(アドリブで!? いつ頃ですか?)
入った翌年の1月にはぶりっ子キャラをやって、2月くらいにはもう撃たれ始めたと思います。

―ぶりっ子キャラを演じる上で気を使われることは?

ぶりっ子やけど、かわいさもいるなあと。ぶりっ子と、おもしろいのと、かわいい、という3つで。変にネタに寄りすぎてもあかんなと思うし、難しいラインを狙ってます。お客さんにもイラッとしてもらわないとあかんしと思って、いろんなの作ってるんですけど。辻本兄さんから「テンポが悪いよ」とか、「もっとイラッとさせるぶりっ子じゃないとあかん」とかアドバイスいただいたりしてます。
(辻本座長は“間”に厳しいですね)
でも、厳しさでいうと、川畑兄さんの方が厳しいかなと思います。川畑兄さんは若手のために朝早起きしてレッスンしてくださって。ほんとにこんな細かいこと、怒ってくれるんやというくらい。「せっかくカメラで抜いてもらってるから、もうちょっと顔を横に向けないと」とか。そんなネタ以外のことも1人1人見てくださって。「すみません、自分で気づかなあかんのに」というと、「教えてあげることも上のすることやから」っておっしゃってくださって。頭が上がりません。

―舞台での失敗とかありますか?

ありました! 川畑兄さんに「このフンコロガシに!」と言わなあかんセリフが出てこなくて…。直前まで「この顔パンくそ親父!」だったセリフがダメ出しあって、「セリフ変えよか、フンコロガシとかでええわ」ってなったんです。私、「顔パンくそ親父!」しか覚えてなくて、本番で「フンコロガシ」が出て来なくなって…何か言わなあかん! という時に「このクソダンゴ!」って。あはははは~(大笑い)。終わったあと花子姉さんから「普段から思ってるから、クソダンゴが出て来たんやな~」って言われて、「いや、違うんですよ!!」って(笑)。川畑兄さんは「ええよ、ええよ」って言ってくださったんですが…。

―今、3年目ですが、新喜劇の難しさは?

全部難しいです。まず、1000人のお客さんの前で、ナチュラルに大きな声で話すことが、やっぱりまだ難しいし。フリやったら、しっかり振らないといけない、けど立てすぎたらあかんとか。ネタ終わった後の立て直しとかも難しいんですよ。
(いわゆる、空気を変えるセリフですね)
すごいなあと思って。お兄さんお姉さん方はナチュラルにこなされてますから。見てるお客さんからしたら、新喜劇ってオーバー気味に見えるかなと思うんですけど、舞台に立ってる私たちからすると、すごいナチュラルなんですよ。自分だけ浮いてるんじゃないかなとか、心配になります。

―この先の目標は?

いろんな役をやらせてもらっているので、「上手になったな」って川畑兄さんに言われたいですよね。あははは。いつか「まかせても大丈夫や」って言われたいです。
(新喜劇の中で目指している方は?)
お仕事では、宇都宮まきさんみたいにテレビのお仕事も出来て、新喜劇も出来て…と思ってるんですけど。新喜劇に入って半年の間に「ロケみつ」のロケとかやらせてもらったんですが、また全然違うんですよ~。違った方向の面白さってあるから、機会があれば、それを学びたいなと思ってます。お芝居は自分より上のお姉さんはとにかく上手なので、まずそこに追いつかないと。今出ている方は若手と言われても10年くらいやってらっしゃるじゃないですか。私はまだ3年なので。とにかく頑張らないとな~と。入った時、「新喜劇は10年かかるよ」って言われましたから。

―今、趣味とかプライベートでハマっていることは?

趣味とかじゃないんですけど。新喜劇に入って、親孝行するようになって。「つぼみ」の頃は高校生だったし、ずっと実家だったので、自分のことしか考えてなかったのか、遅く帰っても当たり前にご飯があって。当たり前に服とかもきれいにアイロンされてて、親におんぶに抱っこで。新喜劇に入って、仕事があんまりない時期とかに、こんなに親に迷惑かけてたのかと思うことがあったんです。あき恵姉さんとかやすえ姉さんとか上のお姉さん方は、家のこともして、仕事もしてるじゃないですか。稽古が終わって、翌朝「何時に寝たんですか?」って聞いたら、「洗濯してからね、ご飯の準備して、寝て、朝来て本番なの」って言われて、「えっ!?」って。私の親も働いてたんで、こんなに迷惑かけてたんや、って気づいて。そこからすごい家のことするようになりました。今は、こんまりさんのお片づけ術の本を読むようになったり、じゃいこ姉さんがお料理上手だから、「お料理ってどうするんですか?」って聞いて、作ってみたりとか(笑)。女らしくなったというか、そこを勉強するようになりました。休みの時とかは、家のことを全部してあげて、親に休んでもらおうと。
(良かったじゃないですか)
ほんとに、新喜劇入って、いい子になったんやなと思いました。突然メイド喫茶で働く子から…(笑)。親も、まわりに「新喜劇に入ってるの? 見てるよ」と言ってもらえて自慢できるというか…。良かったなと思うので、趣味として、「家事」と言えるようになりたいですね。
(きっとお芝居にも役立ちますよね。日常が出るって言われますから)
そうですね。そういえば、私、「つぼみ」の頃は恋愛禁止だったりで、学生時代に恋愛とかしないまま来て。お兄さんとかに「全然恋愛したことないやろ」ってバレるんですよ。「なんでわかったんですか?」聞いたら、ある時、オープニングで信濃岳夫兄さんとカップルで手を繋ぐシーンがあって。「じゃ行こうか」「岳夫さん、お手々」みたいなシーンで、練習なしで大丈夫と思ったんですけど、私、出された方向と同じ方向に手を出してたんです(笑)そのまま強引に手をつかんでハケたんですけど…。その後、岳夫兄さんから「全然手もつないでないな」って、経験ないのがバレました。恋愛もしないとあかんなと思いましたね(笑)。

2017年3月27日談

プロフィール
1991年8月31日 大阪府生まれ。
2009年 NSC大阪校 女性タレントコース5期。金の卵オーディション7個目。