第104回 速見めぐみ

どうやって売り出そうか、悩んでるんです。


―金の卵9個目ですが、もともとお笑いがお好きでしたか?

お笑いというより、芸能にちょっと興味を持ってました。高校の時に、芸能の道に行くか看護学校か悩んでたんですけど。芸能って現実味ないな~と思って、看護学校へ通ってたんです。
(まったく違う道を志されたんですね)
そうですね。テレビで助産師さんを見て、めっちゃいい仕事だなと思って。目指してたんですけど、単位が足りなくなってしまって、2年目の夏に中退しました。それが19歳の時で。辞めてからどうしようかな~と思って就職とか探していた時に、吉本興業のサイトを見て、「裏方で働きませんか?」っていう広告を見つけたんです。芸能には興味持ってたし、せめて近いところで働きたいなと思って応募して。その仕事がなんばグランド花月のチケットもぎりだったんです。そこで2年間働かせてもらいました。

―チケットもぎりの仕事はいかがでした?

全然合ってなくて・・・(笑)もう、すっごいポンコツやったんですよ(笑)ほんとに、ようクビにならんかったなっていうくらいで。もぎりさんって、入り口でチケットを切るじゃないですか。その時、別の会場のチケットを切り間違えたりとか、間違って違う日付のを切ってしまったりとか。普通はそういうミスをするのが、1年に1回か2回くらいなんですよ。私、2年間で20回間違ってしまって・・・。なんばグランド花月と思って買ったものが、当時、向かいにあった「5UPよしもと」だったりとか、ちょくちょくあって。そういう間違いをいっぱいしてました。
(もぎりのお仕事は大変なんですね)
特に土日祝、連休はお客さんが集中するので、チケットを一瞬で見分けたり、お客さんを案内したりとかで、結構バタバタしてました。実は、最初に働き出した時に金の卵7個目のオーディションの案内があって、その時に1回受けようかと思ったんですが、その時はまだ働き始めたばかりだったので。仕事を続ける方を選びました。
(辞められたのは?)
なんか違うことをしたいというか、このままだと自分自身成長しないな~と思って。ずっと同じ失敗ばかりしてたし。で、辞めてから合宿免許を取りに行ったり、下呂温泉で半年住み込みに行ったり、USJでちょっとだけ働いたりとか、1年くらいそんな感じで働いてました。

―金の卵オーディションを受けるきっかけは?

23歳になった9月に、いったん落ち着いて、次何しようかな、自分の中で出来る一番面白いことしたいな、それは吉本やなと思って。チケットもぎりの時の縁で、NGKの進行係に入らせてもらったんです。その時、同じ日に、まったく同じタイミングで筒井亜由貴さんも働き出してて、同い年で同じ左利きですごい親近感あるなと。筒井君はずっと新喜劇を目指してたんで、私はその横で「がんばれ~」と思ってました(笑)。でも、舞台袖で毎日お芝居を見てるうちに、自分もやってみたいなと思い始めて。年末に金の卵9個目のオーディションの案内があった時、私も受けたいな~と思ってたんです。でも、進行の仕事が忙しくて、エントリーする時間ないよな、と諦めてたんです。その時、新喜劇の舞台袖で瀧見信行さんとお話してる時に、「9個目受けへんの?」って聞かれたんですよ。「ちょっと忙しくてエントリー出来そうにないです」と言ったら「受けてみたらええのに」と言ってくださったのをすごい覚えてます。そのまま、〆切の1週間くらい前になって、私、インフルエンザに罹ったんですよ。
(あらまあ!?)
3日間休んだ後、自宅療養してる時に、これって神様の与えてくれたタイミングかなと思って、最終日ギリギリに書類出しました。ほんまに偶然やな~って今でも思いますね。巡り巡って来るもんやな~と。

―オーディションはどうでしたか?

2次審査の自己PRでは何もなかったんで、ひたすらチケットもぎりの時の朝礼のあいさつを元気にやりました。その時、一緒にチケットもぎりやってた子とか、知ってる子がいて、心強くなりました。
(3次審査はお芝居ですね)
一緒に進行をやってた筒井君と、本山悠斗君と3人で誰もいなくなったNGKの舞台でこっそり練習して。その時間はすごい特別でしたね。それでお芝居の審査がうまく行った感じはしました。審査では高橋靖子さんとか未知やすえ姉さんがやるような役柄で、追い掛け回したり、怒鳴ったりする、お母さん役でした。その時は、自分でもすごい人生の中で一番集中したんじゃないかっていうくらい、気持ちが澄んでたというか、真っ向から受けれたなあという思い出があります。
(合格した時はうれしかったですか?)
「受かってもうた」みたいな感じでした。ほんとに不思議な感じですね。私、その日も進行の仕事をしてたんで、審査のあと、すぐに仕事に戻ったんですが、オーディションの審査を見てた作家の方から「お芝居やったことあるの?」と聞かれて、「あの場で初めてやりました」と言ったら、「え? どういうこと?」と言われて。それだけ集中出来てたのかなあと。

―初舞台はいかがでしたか?

私は同期の中でも最後の方で、入団した次の年までなかったですね。最初、外部の舞台に立たせてもらうのが決まってて、初舞台が遠くなったというのもありました。年明けの1月に祇園花月で諸見里さんの舞台に立たせていただいたのが初めてです。
(役柄は?)
オープニングでもじゃ吉田さんと一緒で。カバン叩きのギャグをやりました。もじゃさんからカバン叩きのやり方、めちゃくちゃ教えてもらいました。女性から聞いた方が良かったのかもしれませんが。
(実際に舞台に立たれていかがでした?)
進行で裏方として舞台袖で見てたのもあったのか、けっこう想像は出来たのかな? でもあんまり覚えてないです。すごい緊張してたのがあって。最初は「とにかく、カバンを顔に当てなきゃ、当てなきゃ」というのだけで(笑)。

―NGKの初舞台は?

すっちーさんの舞台で、その時、1週間に2作品公演だったんです。けっこうバタバタした記憶があります。最初の3日間で「すち子のトワイライト・カゲツプレス」、後の4日間で「すち子の、待てど暮らせどエアポート」。どっちもテレビ収録がありました。初舞台は、最後の大オチで高関優兄さんと一緒に出て来て、「うん」っていう一言で去って行くっていう役でしたね。それだけでもすごい貴重なワンシーンというか。他の方からしたら、「え?これだけ?」って思ったかも知れないですけど。その「うん」だけでも大きい、ひと舞台には変わりなくて。収録の日にめちゃめちゃ緊張したのは覚えてます。「うん」だけでも声が震えて出ないのとちゃうかな、って。皆さんのお芝居がすごいなというのはその3日間で痛感しましたね。セリフ長い方とか、覚えられへんよな~と。その時はすごい記憶力やなあ、と思ってました。

―印象に残っている舞台は?

2年目の夏、すっちーさんの祇園花月の舞台ですね。修学旅行の話で、最初と最後にちょっとずつ出て来るバスガイドの役やったんです。上下ピンクのスーツを着て、ちょっとこぎれいな感じで。私、身長が167cmあって、結構大柄なんですよ。ピンクのスーツで、髪の毛も長めでハーフアップしてて舞台に出て行ったら、唐突にすっちーさんから「何かに似てるなと思ってたら、わかったわ! 「The♥かぼちゃワイン」のエルちゃんやわ!」と突っ込んでいただいて。
(あははは~漫画のキャラですよね)
かなり前の。その時に初めてその作品を知って、「あ、ほんまや!」ってなったんですけど。舞台の上でいじられたのが。その時初めてだったんで、感動したのを覚えてます。

―お世話になっている先輩は?

いろんな方が声をかけてくださいますけど。そうですね、一番は・・・帯谷さんですかね。何もない時にたまに電話くださったりとかして。「元気かあ~俺はこんな感じや」って近況報告なんですが。たぶん、ほかの若手にもあいさつ代わりに定期的に電話されてると思うんですけど。私がちょっと気が滅入ってる時があって。「新喜劇このまま続けていいのかな」とか、思う時があったんです。そのタイミングで電話かかって来て、「落ち込んでます~ちょっと悩んでます」って言ったら、「絶対、辞めたらアカン! 続けていくしかないで」と励ましていただいて。すごい助けられましたね、ほんとに。
(落ち込むことが?)
舞台が今、1年以上空いてて、ほんとに出番もないので。コロナに入ってから他の方とも交流することがないし。その時も、どうしよ、どうしよと思ってて。でも、やっていくしかないよな~と。こないだも別のお仕事させていただいた時に、もうちょっと頑張れるかも、とか。見てくださっている方がいるから、頑張らなあかんな、とか思ったり。なんとかきっかけを作れるように頑張っていこうと思います。

―ご自身の武器とかは?

それがほんとにまったく思いつかなくて・・・。自分でもどうやって売り出そうか、悩んでるんです。「元もぎりとか元裏方とか強そうやな」と言ってくださる方もいますけど。それを活かせるきっかけが、ちょっと見えなくて。この前「よしもと新喜劇NEXT」(MBS)で、もぎり間違いの体験談とかを披露することがあったんで、ちょっと認識してもらえたかな~と。特技が全くないので、今、バク転の練習を・・・。
(なんと、飛び道具ですね)
ふふふふ。何か舞台で映えるようなことが出来たらいいなあ~と。練習中なんです。
(背が高いのは舞台映えするのでは?)
身長高いうえに、横幅も大きいんで、もっと痩せや、ってメチャクチャ言われるんです。「痩せた方が絶対いいで」と言われるんですけど、なかなか。今、ダイエットも頑張っているんですけど。

―これからやってみたい役は?

進行の頃から、舞台袖でずっと新喜劇を見てて、高橋靖子姉さんとか井上安世さんとかのお芝居を、「こんだけお芝居出来たらすごい楽しいやろな~」と、思ってました。お母さんの役とか、お芝居の審査でやらせてもらったような役とかやっていきたいと思ってるんですけど。それこそ、高い演技力が必要になってくるんで、そこを磨いていきたいです。
(大柄なレディースとか姐さんみたいな役は?)
そういう役と私の性格が真逆なんですよ。まったく争いを好まない性格で競争したくないというか。競争社会にもいたことがないので、ゆっくりすぎるんですよね。普段、怒ったりとかしないので、舞台上で怒る芝居をした時は、こんなこと出来るんやなと。その時は楽しかったです。違う自分を役で出して行くには、もっとお芝居頑張らなと思います。いろいろな役柄をやってみたいですね。

―ご自身にとって新喜劇とは?

新喜劇って、ある意味優しいところですよね。私みたいにもぎりの仕事が全然出来なくても、受け入れてくれる場所なんです、助けを求めたらいろんな面で、「困ったら言っておいでや」と言ってくれる方が、ほんとにたくさんいらっしゃって。ほとんど全員の方がそうなので、ほんとに有難い場所やなあ、って思いますね。私は新喜劇に入るまでの運の良さが人並外れてたな、と。ほんとにずっと不思議やなと思ってます。人生のいい思い出なんですが、それだけじゃいけないので。

―これからの抱負は?

他の子に比べて舞台に立ってる数が少ないのですが、オープニングをとにかく完璧に演じたいですね。最初のつかみの役なんで、皆さんの視線を集められるような芝居をしたいなと思います。新喜劇以外では、それこそ朝ドラとか映画とか出たいな~という夢はずっとあるんです。でもまだ、エキストラとかしか引っかかってないですけど。朝ドラのオーディションに行った時は、ほかの方のお芝居見て、「あ、全然違うわ」とビックリして。ほんとにもっと頑張らないかんわと思いました。まだまだ知らないことが多すぎるので、もっといろいろ知りたいですね。

―今ハマっていることや趣味は?

今、めっちゃコーヒーにハマってるんです。去年、家の近所にコーヒー豆を売ってる店が出来て、ドリッパーとかを去年の夏にもらってから。1年弱になるんですけど。毎月3種類の豆を買って、いろいろ味わって行きたいなと。コーヒーミルを買って、それこそおうち時間が増えたので、ゆっくり豆を挽きながら、録画した新喜劇を見ながらとか、時間過ごしてますね。
(おすすめの豆とかは?)
無難ですが、エメラルドマウンテン。こないだ飲んでみて、すごく濃いな~と思いながら。ブラックで飲みやすいな~と思ったのは、タンザニアのエーデルワイスという豆。めっちゃ飲みやすくて。濃すぎず、あっさりもしすぎてないというか。アフリカ系の豆が店のおすすめなんですよ。

2021年4月29日談

プロフィール
1993年9月5日大阪府東大阪市出身。
2017年金の卵9個目。