第67回 ぢゃいこ

体格を生かした、パワフルな役がやりたいですね。


―NSCの新喜劇コースのご出身ですが、入られたきっかけは?

私は愛媛出身なんですが、当時、愛媛にはあまりお笑い番組がなくて、お正月特番か「よしもと新喜劇」しか放送してなかったんです。もともと「よしもと新喜劇」は好きだったんですが、高校3年間は部活で見られなかったんです。部活を引退するという夏に、新喜劇のツアーが地元の宇和島市に来たんですよ。引退してやることもないし、「新喜劇好きやったな~見に行こう!」と思って、見た時に、こんなお客さんみんな笑わせる、あのキラキラしたステージ上に立ちたい!と思ったんです。
(運命の出会いですね)
愛媛では、NSCの存在も知らないし、新喜劇への入り方もわからなくて、結局、高校を卒業して就職したんです。3年間働いた時に、パソコンでたまたま「NSC生募集」というのを見つけて、「新喜劇コースがある!」と。その時、21歳だったんですけど、やりたかったし、すぐ行こう!と思って、願書送って、面接も受けて、入学金も納めて、大阪のマンションも決めました。その後に、会社に退職届出して。で、それから親に話しました。父は昔の頑固親父なんで、絶対に殴られると思って、怖くて「ごめんなさい」と泣きながら話したら、「そこまでしたら、しょうがない。好きにせえ」と。ずっとずっと新喜劇入りたかったんで、これや!と思って、全部自分で決めちゃいました。
(すごい行動力ですね~)
若かったですね(笑)。勢いで、全部やりました。

―人生を変えた新喜劇ってどんな内容でした?

実は、あんまりよく覚えてないんです。由美姉さんがいたな、というのは覚えてるんです。由美姉さんが妖怪みたいな役だった気がするんです。そこだけが印象にあって。あ、あとヒロ兄さんと烏川兄さんが会館の隣の中華料理屋にご飯を食べに行ってるという情報を友達から聞いて、「よし、差し入れしよう!」と思って、うちは実家がケーキ屋なんですけど、クッキーを持って出待ちしました。
(その話を吉田さんは烏川さんには?)
ヒロ兄さんと烏川兄さんには、言ってないですね~。

―NSCの新喜劇コースではどんな授業を?

発声練習と、エチュード的に自分たちで考えた演技をしたり、あとお芝居のレッスンもありましたし。台本を渡されて、来週までに覚えて来て2人でやるとか。NSCの新喜劇コースは3年間しかなくて、25期は一番最後の3年目だったんです。その時一緒だったのが、森田展義君です。新喜劇コースが終わって、オーディションがあるのかなと思っていたら、その年はオーディションがなくて、どうしよう?ってなった時に、たまたま、新喜劇の台本とか書かれていた作家の萩原芳樹先生にお世話になって、夏に梅田花月がオープンするので、「新喜劇入りたかったよな。梅田花月で新喜劇のメンバーが出る本を書くから、出るか?」と声をかけてもらって、「お願いします、出させてください」と、新喜劇チームに交じって出させていただけたんです。新喜劇の先輩方とお仕事はさせていただいているけど、座員じゃないし、どうしよう?と思っていたら、当時のプロデューサーの方が、「舞台に出てるんやったら入ったら」って、夏から梅田花月に出て、10月に運よく入れていただきました。
(その時、梅田花月でも新喜劇があったんですね)
「芝居もん」と言って、何チームか漫才の方が芝居をされていて、その中に新喜劇チームもあったんです。その時は、若手の方がメインで、小籔さんが芯でやられたりとか、テンダラーさんがやられたりとか。新喜劇にずっと入りたいと思ってて、ほんまに運よく全部がうまいこと流れて、入らせていただいた、そんな感じです。
(1人だけというのは大変だったのでは?)
同期もいないし、先輩へのあいさつも「勝手に行って」と言われて、あいさつしに行っても、「え? 1人だけ?」みたいな。オーディション組やったら、稽古の時に、並んで紹介されるんですけど。10月に入って、新喜劇の舞台に立てたのは春くらいでした。その間は梅田花月とかに出させていただいたんで、若手の方には認識してもらってたんですが、中堅や師匠方には「誰? この子?」という感じが続いてました。でも入りたかったところに入ったし、ごあいさつしたら、いろいろ教えてくださるので、ありがたいなあ、と。

―初舞台は覚えてますか?

新喜劇としての初舞台はヒロ兄さんの座長週で、宇都宮まき姉さん、五十嵐サキ姉さんと3人でおそば屋さんのお客さん役でした。何日目だったか、座っていた丸椅子が、グシャって壊れたんですよ。座った瞬間に椅子の足が折れてしまって、「えーっ!?」って。
(壊れた!?)
私もよくわからなくて。だんだん視界が下がってくるからおかしいな~って思ってたら、ズドーンとこけて。見たら椅子の足がグッシャと潰れてて。
(あはははは~)
初舞台だし、何が何だかわかんないし…お客さんメッチャ受けてるし。めだか師匠が足を直してくださって、「これで大丈夫や。もう1回座れ」って言ってくださんですけど、また潰れて、「もう、椅子座るな!」って。初舞台の印象は、椅子壊した、っていうだけです。終わってから「お前おいしいな~」って言われましたけど、私は失敗したっていう意識しかないから、オロオロしてました。

―新喜劇で苦労されたことは?

まず、なにより、愛媛出身なんで、関西弁が喋れないんです。今もなまったりするので、「関西弁を喋らないと」っていうのが一番にあります。だから台本のセリフに(イントネーションの)上がり下がりを矢印で書いてます。愛媛でも宇和島なので、広島とか九州とか、中国地方よりの方言なんです。新喜劇でも青野兄さんは愛媛出身ですが、今治で関西よりなので、関西弁お上手なんです。私は違うので、いっぱいしゃべる役が来れば来るほど、セリフどうしよう? ってパニックになってました。
(あ、愛媛県は横長ですよね~)
今だったら、こうしたら良かったっていうのはあるんですけど、その時はいっぱいいっぱいで。セリフのこともあるし、余計なことやっちゃいけないっていうのもあったので、頭パンパンになってた気がします。

―ほかに印象に残っている舞台は?

あ、あります! 石田靖兄さんの座長の時に、虫とか動物が人間の姿になって言葉が話せるようになって、みんなで恩返しみたいに潰れかけたお店を助けるっていう話があったんです。
(またメルヘンな…)
その時、アリの役をやったんです。階段があって、穴の入り口のカーテンをくぐって出てきたら、人間の言葉がしゃべれる、戻る時もそこに帰って行くんですけど、間口がちょっと狭かったんですね。帰っていく時に、しゃがむタイミングを失敗して、頭打ってこけて、穴に戻れなくなってしまって…。
(え~っ!?)
「あいつ1人だけ元の世界に戻られへんかった~」って。ちょうどカメリハの回やったんですけど、それが面白かったので、放送にも使ってもらえました。

―ちなみに、いつから「ぢゃいこ」なんですか?

中学時代からです。
(中学から!?)
中学時代のあだ名が「ぢゃいこ」で。私、本名が是沢綾子なんです。大阪ではお店で「是沢」って言っても「黒沢さんですか?」って、聞き取ってもらえないし。「是沢」って覚えにくい苗字なんだって。それだったら、覚えてもらいやすい名前の方がいいかと思って。
(最初っから「ぢゃいこ」だったんですね。ところで高校時代の部活は?)
ボート部です。
(えっ!? ボート部!)
今、110キロなんですけど、その時は60キロくらいで、人ひとり分軽かったんです。全国大会にも出たし…。
(え~っ!? すごい。愛媛だから…)
川と海もあって。高校は宇和島東高校で野球も強い高校です。
(スポーツマンだったんですね)
はい、今太ってますけど、体動かすのは大好きで。それこそ動けるデブで、趣味も兼ねてダンスも習いに行ったり。でも、ダンスも松浦景子ちゃんみたいにうまい子が来たら…厳しいですね。

―ご自身のキャラ作りは?

ガタイがほんまにでかいんで、身長170センチあるし、体重110キロあるし。だから「島木師匠みたいに坊主にして裸になってパチパチパンチしたらええん違うの?」って言われます。
(え~っ!? そんな~)
このガタイで悪ぶるのもありかな? って悪ぶったりすることもあるんですけど、やっぱり女の子やから、かわい気がないとあかん、って。「丸坊主にしても笑われへん。お前がしたらホンマに怖く見えるから」って言われたり。相撲やっても、山本奈臣実さんも相撲キャラやったりしてるし、かといってかわいいキャラやっても「ただただ気持ち悪い」って言われるだけやし。だから、ずっとキャラが迷子なんです。
(もったいないですね~)
力が強いから、男性を担いだりも出来るんです。たまにハケる時にやってる「抱っこ~」(と言った女性が男性をお姫様だっこする)は、レイザーラモンRGさんが新喜劇にいらした時に、「こんなんどうや?」って考えてくださって。その頃から形は変わってますけど、言ってくださったのはRGさんです。営業とかに行ってカップルをやる時は、鉄板ネタなんです。

―新喜劇の中で、お世話になった先輩は?

由美姉さんです。由美姉さんはワンちゃん飼ってて。犬って言ったらメッチャ怒るんですけど、「ワンちゃん」は怒らないんです(笑)。入って2年目くらいの時に、営業で泊まりにいかなあかん、ワンちゃんの世話する人おらん、「ぢゃいこ1人暮らしやったよな、ちょっと家来てくれへん?」「わかりました。いいですよ~」というのがきっかけで、ずっとお世話になってて。それこそ初めて見た新喜劇で「この人スゴイ!」と思った人に信頼されて、ありがたいことやなあ、と。ホンマに「大阪のおかあちゃんや」と自分でも言ってくれはるんで。私はいなかったんですけど、この前、イベントの打ち上げで、ものすごく酔っ払った由美姉さんが、「私な、ぢゃいこが嫁に行くまで、死んでも死にきれへんねん」って言ってくださったらしくて、そこまで思ってくださるんだ~と。
(ほんまにお母さんですね)
でも、どこまで甘えていいかわからなくて…。遠慮してしまっているというか。ここまで甘えたら申し訳ないかなって。メッチャ慕ってるんですけど、憧れてる先輩やし、っていうのもあって…。
(ぢゃいこさんって、自立独立の精神が強いっていうか…ホームシックとかにならないですか?)
ぜん、ぜん、ならないです。18歳で就職のために家を出たんですが、その時は家から車で2時間くらいの距離に住んでいたんでちょくちょく実家に帰ってました。その後、やりたいことがしたくて大阪に出てきたという覚悟もあるので、大阪へ来てからはホームシックはなくなりました。今はメールもあるし、LINEもあるので、すぐ連絡出来ますし、親もTwitterとかFacebookとか気にして見ていて、向こうから連絡が来ます。全然寂しくはないです。
(今、NGKの出番は少ないですが…)
劇場の出番が少ないんです。地方公演行ってるか、NGKのオープニングアクトで出てるか。NGKの前でお客さんとしゃべって、呼び込みする仕事があるんです。
(そんな仕事が!?)
そうなんです! そんな仕事があるんです~。千日前口上師っていう名前があるんですけど。朝の時間は新喜劇メンバーが「こんな公演やってます」と宣伝してます。地方公演とかお仕事はあるんですけど、やっぱりNGKに立ちたくて…。

―悩むこともあります?

オープニングのお客さんの役から抜けれなかったりするので、やっぱり自分のキャラが確立出来てない、迷子なのが周りにも見えているのかな、と。
(周りの方からのアドバイスとかは?)
地方でも座長さんと一緒にならないとそういう機会なかなかないです。ずっとこの5年くらい悩みっぱなしで、「あれしたい、これしたい、どうしたらいいんやろ?」で、自分のイベントで試しながらも、迷いながら来てるって感じです。
(どなたかに相談したりとかは?)
してないです。由美姉さんに「あんた、悩んでても言わへんよな」って。今、悩んでるやろなと思うけど、後になって、「こうなりました」って結果しか言わへんな、って言われたことがあります。
(そういえば、入る時も結果しか言ってないですよね)
人に頼るのが出来ないっていうか。こういう風に悩んでるんですっていうのも、上手に伝えられなかったり。メッチャ不器用なんだと思います。人に言うのも恥ずかしいというか…。
(なんか、日本人らしい、奥ゆかしい感じですね)
アピール下手なんです。そこも不器用かな。がつがつ行くのも出来ないし。パワフルな役がしたいですね。悪役レスラーみたいな役しても、かわいく笑って見えるようなやり方を見つけていかねばというのがあります。女の子が力技して、どうやったら引かれずに見てもらえるんだろうと。
(今はいろんなことが出来る新喜劇ですから…)
こんなんやりたい、あんなんやりたいって、言っていかないといけないんですよね。今、考えた時に、誰もやっていないのは、女性で悪役なのかな~と思って。そのポップな見せ方がわからないんです。
(ぜひ、座長に見つけてもらいましょう)

―ぢゃいこさんにとって新喜劇とは?

私が入った頃と、全然雰囲気もスタイルも変わって来て。自分に強力な武器がないといけない場所なんだと思ってしまってます。今、自分に自信がないので、尻込みしてしまっているというか。どうやったら自分を出していけるんだろう? 早く見つけなきゃ、早く見つけなきゃって、ずっと焦ってて。新喜劇に入りたいと思っていた時の憧れと、今も変わってないかもしれないです。新喜劇に1週間出たい、って憧れじゃないですか。実際、新喜劇に入ってるんですけど、気持ちは変わってない気がします。

―趣味とかハマっているものは?

料理はメッチャ好きです。飲食店のバイトが長かったので、調理師免許取りました。今、リビングが広めのところに引っ越したので、後輩たちを呼んで、ぢゃいこが作るご飯を「ぢゃい飯」って呼んで、「ぢゃい飯会」で後輩たちと宴会してたりします。後輩とも交流出来て、いろんな話も出来るし、家の中だから周りを気にしなくてもいいじゃないですか。楽屋にお弁当作って持って来たりとかもしてます。今年のお花見は後輩に声かけて、17人くらいでうちの近くの公園でやりました。振る舞うのが好きですね。それこそ由美姉さんの影響です。由美姉さんも後輩家に呼んでお料理とか好きなので。由美姉さんと一緒に台所に立って料理したり。ほんとにお母さんみたいな感じです。由美姉さんが後輩と宴会して盛り上がっているのを見て、いいなあと思っていたので。
(調理師免許もあるからお料理はバッチリですね)
いつでも胃袋つかめます。男性の。なかなか機会がないですけど…。
(ほかにハマっていることは?)
あと、音楽も好きです。ライブ行くのがメッチャ好きですね。「MAN WITH A MISSION」とか。オオカミのバンドなんですけど…。
(あ~あのオオカミの被り物の…)
何を言ってるんですか! かぶってないですよ! 彼らはオオカミなんですよ!
(かぶってない…(笑)はい、はい)
最初からいいってずっと言ってて。みんなから「オオカミかぶってる?」って「コミックバンド?」みたいに、ずっと言われてたのが、最近になってドラマの主題歌やったり、映画とかアニメとか、メッチャ売れてきたのがすごくうれしくて。私も頑張ろうっと思って。
(そんな前から…)
ライブハウス行った時にたまたま対バンの相手が「MAN WITH A MISSION」で、「何これ? カッコいい!」って。神戸のバンド、渡辺フラワーっていうのも結構好きですし。インディーズのバンドも好きですね。「四星玉(スーシンチュー)」っていうバンドもメッチャ来てますよ。
(詳しいですね~今、一番楽しい時間は?)
ライブ行ってる時も楽しいですし、「ぢゃい飯会」で後輩としゃべってる時も楽しい。でも、一番は、舞台に立って、自分のネタでウケるのが一番いいんですけど…。その時間をもっともっと増やしていきたいですね。

2017年7月10日談

プロフィール
1981年2月20日 愛媛県生まれ。2002年 NSC大阪校 25期生。