第88回 大黒(だいこく)ケイイチ

やっとプライドもなくなって、今、新喜劇がメチャメチャ楽しいです!


―もともとお笑いが好きだったんですか?

興味を持ったのは、小学校の時ですね。父親が「お笑いネットワーク(読売テレビ)」という漫才番組を見てて、その頃から、夢路いとし・喜味こいし師匠とかが好きで、小づえ・みどり師匠とかも大好きでした。ずっとサッカーをやってたんですが、高校2年くらいの時に、(サッカーは)努力じゃムリやなと思って。僕、足も遅いし、チームの盛り上げ役みたいになってたんです。そこからお笑いに興味持ちだして。当時はM-1ブームで、僕はフットボールアワーさん(2003年第3回チャンピオン)を見て、その翌年にNSCに入りました。高校卒業してすぐに行きたかったんですけど、親から1回大学に行ってみてくれと言われて。行ったんですけど、3か月くらいで辞めて…。
(え~勿体ない)
勿体ないですよね。ははは。いまだに謝罪してます。それから1年間貯金して、NSCに行かせてもらったんです。

―NSCでは?

漫才コンビを組んで、(在籍中に)ラジオとかにも出させていただいたんですが、卒業する前に解散しちゃったんです。僕自身、あまり脚光を浴びたことがない人間やったんで、ラジオが決まったりして、ちょっと偉そうになりすぎて。で、相方に嫌われちゃいまして…。
(あらら~)
当時、ネタのレッスンとかで「滑舌悪いコンビ」と言われて、相方に滑舌練習とかめちゃくちゃやらせてたんです。でも、実際は僕の滑舌が悪かったみたいで。そんなんで解散になって、もう漫才は出来ないからお笑いもいいわと思って。卒業して1回お笑いを辞めたんです。小さい劇団に入らせていただいて、そこから東京の事務所のオーディションを受け続けて、ちょっと大きめの事務所に受かりました。そこで通販モデルで、女性用脱毛器のモデルとか…。
(ええっ!?)
女性のうぶ毛やったらよく見えないというんで。僕、すね毛剃ったらめちゃめちゃキレイな足なんです。ほかにもCMとか、「ザ!世界仰天ニュース(日本テレビ)」の再現VTRとか。
(全国ネットの番組にも出て、そのままやって行こうと?)
そうですね。お笑いは見ないようにしてました。見ると切ないというか。なんか、未練がある恋人みたいで…。でも、たまたま見たバラエティ番組で、同期だった諸見里大介君が滑舌悪い芸人としてフューチャーされてたり、「爆笑レッドカーペット(フジテレビ)」で同期のいがわゆり蚊が「チェンバル語」ネタで満点大笑いっていう一番スゴイのを出してたり。30歳に近づいて来て、ちょっとずつ気持ちが揺らいで、このまま東京で仕事やって行くのか、ほんまにやりたいお笑いをやるのか。でもコンビとか探すの難しいし…と考えてた時に、たまたま夜中にビール飲みながらテレビをつけたら、東京MXテレビで「よしもと新喜劇」が放送されてて、小籔さん、すっちーさんのオタクコンビのネタを見てたら、酔うてたこともあるんですけど、泣いてもうて…。すっちーさんとか漫才から新喜劇に入ってて、僕、ビッキーズ(すっちーの元漫才コンビ名)がメッチャ好きやったんですよ。こんな当時好きやった人も出てて、今まで知ってた新喜劇と違う。「新喜劇やりたいな」と。で、NGKの進行スタッフを希望して、入らせてもらいました。
(NGKの進行スタッフに?)
はい。新喜劇を知らなかったんで、いきなり行くのは無謀やなと。ちょうど、金の卵7個目のオーディションが始まる時で、事務所から「それを受けたら?」と言われたんです。当時のNGKの副支配人さんからも「だいぶ給料も下がるし、責任持たれへんから」と2回断られたんです。結局、前の事務所を辞めて、住所も大阪へ移して、「辞めてきました」ということで、入れてもらいました。

―裏方から見た新喜劇の印象はどうでしたか?

皆さん真面目でした。すっちーさんはじめ、めちゃくちゃ真面目で。バラエティを見てるノリで、変なツッコミをしたりすると、「違うで。今、普通にしゃべるとこやから」と怒られたり。あと、思ったより人数が多いな、と。テレビで見てるメンバーしか知らなかったんで、座員がこんないるのか、めちゃめちゃハードやと思いました。次のオーディションを受けるまでの1年間、当時、進行で一緒だった松本慎一郎さんと2人でインディーズライブに出たりしてました。死ぬほどスベりましたけど…あははは。
(新喜劇は舞台袖から見ていた?)
印象的だったのは、すっちーさんのリーダー週で、烏川さんがピンクの全身タイツで出て来て、もう、めちゃくちゃ面白くて。ギャグばっかりの新喜劇じゃなくて、ストーリーの中で笑いを取っていく。烏川さんの面白さが衝撃的で。すっごいな、と。ツッコミのイメージしかなかったんですけど、その時は、お芝居をやりながら、ボケっぽい役で。何でもできるやん! 烏川さんすごいな、と思いました。

―8個目のオーディションは?

ネタ披露では通販モデルをやってたんで、音楽を流してモデルウォークして、ポーズを決めた後にキザな一言を…。「今夜の夜景はあまりきれいに思わないな。なぜならもっと瞳が美しいお前がいるからさ」。ははは。
(結構、し~ん、ですよね)
あははははは(大笑い)そうですね。ハートだけは強かったんで。長めにやってましたね。
(3次のお芝居は?)
新喜劇のお芝居はナチュラルで、しかも関西弁で。ちょっと誇張すると違和感が出るし。難しかったですね。進行の時に見ててよかったと思いました。
(自信はありました?)
全く自信なかったし、そんなに甘くないやろなと。狭き門やと思ってました。進行の時に、何故か気に入っていただいて、笑福亭松之助師匠に可愛がってもらってたんです。松之助師匠がけっこうアドバイスくれてはったんです。例えば、「何か出来ると思うな」「上手くやろうとするな」「自分がやって来たことしか出来んから、お前の芝居をやれ」「笑わすシーンもあるかも知れんけど、笑わそうとすな。笑われたらラッキーくらいで行き。これから先もそうやで」というようなことを言ってくださいました。当時は意味がわからなかったですけどね。
(合格された時は?)
もう、メチャクチャうれしかったです。松之助師匠も喜んでくださって。メチャクチャうれしかったです。

―初舞台とか覚えてますか?

初舞台はNGKで川畑座長だったですけど、ほんまに記憶ないくらい真っ白でした。オープニングで、太田芳伸君、岡田直子ちゃん、井上安世ちゃんとカップル役で。セリフは下手くそながら喋れてましたけど。デビューの時に、プライベートの面で怒られたことがあって、地に足がついてない感じでした。
(初舞台以外で印象に残っているのは?)
最初の1年間は休みないくらい仕事があったんですけど、2年目から出番が少なくなって…。当時は変なプライドみたいなのがあったんです。いじられるのが嫌っていう。僕、(前髪をあげて)髪の毛ハゲてるんですけど、
(あ~っ!?)
めちゃくちゃハゲてるんですけど、男前みたいに思ってて。前髪を下ろして隠してたんです。営業で、すっちーさんがオープニングの時に、髪のことを色々といじってくれはったんですけど、技術的に返せない、プラス、いじられるのが嫌で。押し黙ってもうたんです。とんでもない空気になって…。
(アカンやつですね)
そこからバッタリ仕事がなくなって。その、最後のすっちーさんの舞台はめちゃくちゃ印象に残ってますし、意識が変わりました。「これをやったらアカンわ」って。ほんまに自分が嫌になって、楽屋でも喋れんようになって。まずいな、と。そこから半年ぐらい全然仕事なくて…。

―転機があったのは?

久しぶりにもらった仕事が、祇園花月の内場さんの新喜劇でした。稽古終わりに若手を何人か連れて「飲みに行こう」と言ってくださって。内場さんとは初めてで、ずっと緊張してたんですけど、僕を見ながらずっと笑ってるんですよ。「何か変ですか? 顔、変ですか?」って聞いたら、「顔ちゃう。髪型きしょない?」って。あはははは。
(あはははは)
「無理してない? 髪型。言っていいかわからへんけど」。「一応、“男前枠”みたいな感じで入ったんで」というと、「いやいや、いやいや、男前なんて誰も思ってへんで。みんな気持ち悪いって言うてたもん」って。その時、ヤクザ役やったんですけど、「髪の毛、上げてみて」と言われてあげたら、内場さんゲッラゲラ笑って、「ウルトラマンみたいになってるやん! それで出たら?」と。イジられるのはメッチャ嫌やったんですが、すっちーさんの時、アカンかったイメージがあるんで、変えるならここやと思って、オールバックにして出させてもらったんです。内場さんから「ウルトラマンみたいやな。3分経ちましたけど、大丈夫ですか?」ってツッコまれて、「ウルトラマンちゃうねん!」って返したら、メッチャウケたんですよ。これまで感じたことないぐらいのウケ方しだして。「(額が)M字になってますね。M78星雲のMですね」「誰がそんな文字入れんねん」とか、結構長くなって。最後にちょっとだけ出てきた時も「ウルトラマンと違って、おしりかじり虫みたいですね」と言われて、またボカーン!とウケたんですよ。祇園花月で。「え!? こっちなんや…」と。
(男前枠じゃなかった…)
みんな笑うってことは、思てるんやって。それで、そこからイジられてもいいやって。自分のくだりで笑いとかも出て来て。すっちーさんにまた使ってもらえるようになれたら、という一心でやってますね。その2つの舞台はメチャメチャ覚えてます。

―憧れの先輩やお世話になった先輩は?

憧れはすっちーさん。なりたいのは烏川さん。プライベートでお世話になっているのが、内場さん、新名さん。舞台で使ってくれてるのは信濃さんですね。
(先輩から言われた印象的な言葉は?)
小籔さんにちょっとだけ使ってもらった時に、「出番あるの?」と聞かれて、「全然ないです」と応えたら、「腐らんときな。腐らんかったら、大丈夫やから」と言われて、ほんまに一生懸命やろうと思いました。ちょっとした言葉でも、影響力が強い。学生時代から見てたビリジアンとビッキーズさんだけに、威力がすごい。最初は怒られてても意味が分からないというか。怒られてるなって言うのはわかりますけど。「ちゃんとしいや」にしても、後輩が出来て、自分がご飯に連れて行くようになって、わかって来るというか。

―この先、新喜劇でやっていきたいことは?

役柄は、お芝居メインやけど、出て来たらイジられる、それをちゃんと返していける。出て行ったら、パッと明るくなるような存在になりたいですね。雰囲気が変わるというか。珠代姉さんなんかそうじゃないですか。パッと出てきたら明るくなるというか。ああいう感じになりたいですし、使いやすい存在になりたいです。前髪をあげたら、ハゲ役も出来るし、下ろしたら芝居も出来る。
(回しとボケだとどちらがやりたいですか?)
回しの方がやりたいです。すっちーさんとか、諸見里君とか、酒井藍ちゃんとか、凄い人らが安心してボケれるようにやれたら、やっと戦力になったかなと思えるんだろうな、と。
(ギャグはどうですか?)
いじられネタで「おしりかじり虫」と、あとは舞台上ではやらないんですけど、コーナーとかでやるのが(前髪を上げて)「ハゲ、キラーッ!!」っていうのがあります。あはははは。恥ずかしいですね。まだ照れがあるんです。やり慣れてないんで。
(秘めた武器があるわけですね)
秘めてないです。もう、むき出しにしてます。あはははは(笑)新喜劇入っていろいろ変わりましたね。

―もともと性格的にはどういうタイプなんですか?

自分では、結構、ナルシスト入っているんで…、メチャメチャお金かけてるんです。顔。
(え!? そうなんですか?)
歯並びガタガタだったんですよ。乱歯っていうくらい、歯茎も出てるみたいな。見事にかみ合わなくて。東京へ行った時に、メディアの仕事が多かったので、これやったらアカンっていうんで、矯正に80万くらいかかって。ニキビもすごかったんで、ニキビ治療に30万くらい、地黒も気になったんで、ホワイトニングエステみたいなので15万くらい。120万ちょっとかかってます。
(え~っ!? そんなに!?)
あと、増毛も100万かけたんです。それは半年かかって失敗したんです。それも入れると220万くらいかけてるんです。だから、笑われるはずがない、と思ってて。あはははは(笑)
(それって、新喜劇に向いてないんじゃ…)
あはははは(大笑)それ、言われました、言われました。入って来た時に。「個性全部、消してもうてるやんか!」って。全部消して行ったんで。
(また、一から構築しないと…もったいな~い)
あはははは。そうなんですよ! 僕、自分ではシュッとしてる、それこそチュートリアルの徳井さんが新喜劇に入って来たぞ、みたいな感じに思ってたんです。徳井さんならイジられても大丈夫ですけど、「俺が回して、俺がウケる!」みたいな感じで。恐ろしい奴でしたね。やっとプライドも何にもなくなって、何言われてもええし。幸せですね。
(楽じゃないですか?)
メチャクチャ楽です! 今、新喜劇がメチャメチャ楽しいです!

―今、ハマっていることや趣味は?

趣味はプロレスですね。めちゃくちゃ好きなんですよ。父親が好きだったので、物心がつく3歳くらいから32年くらい好きなんです。ずっと武藤敬冶と獣神サンダーライガーという2大選手が好きでして。武藤さんという方のムーンサルトプレスっていうバク転する技があるんですけど、速くて、カッコ良くて。膝を痛めて、去年から出来なくなっちゃんですけど、30年間お疲れさまでした! みたいな。プロレス観戦は大好きですね。今も全試合のチケットを取っておいて、行ける分だけ行くようにしてます。
(ご自身ではやらない?)
絶対やらないです。新喜劇に祐代っているじゃないですか、祐代を使って、この技かけてと頼んで、写真撮って、それを投稿したりはしてますけど…。やられるの、好きなんです。
(あらまあ!?)
レスラーのやられる顔が好きなんです。大げさな、ね。あと、仕事がなかった時に、なんかやらなあかんと思って、取った資格がスイーツコンシェルジュ。それと、伝統芸能の安来節の2級というのを持ってます。3級からなんですが、飛び級で2級に。年配の方が多いんで、飛び級が珍しくて、逸材って言われてたんです。
(スイーツコンシェルジュというのはどういうことを?)
日本スイーツ協会というところがありまして、カロリーが高いとかでスイーツ離れが始まりつつある、その誤解を解いていく。チョコレートも海外では健康食品と言われてて、ポリフェノールとか認知症にもいいし、ダイエットする人は食前に食べると、幸福物質が増えて、食べる量が減らせるとか。食べ方の提案や、まだまだ海外には日本人好みのスイーツもあるし。
(スイーツを広める役割?)
そうですね。今、写真とか載せだして、食いついてくる芸人さん増えて来て、ここからかなあと思ってます。

2019年5月20日談