第98回全国高等学校ラグビーフットボール大会

決勝 大阪桐蔭、パワフルV 桐蔭学園、1T届かず(その2止) 堅守崩せず、2冠スルリ

 (7日・東大阪市花園ラグビー場)

 思い描いた展開に1トライ、足りなかった。桐蔭学園の藤原監督は「ある程度、失点はする。勝つためには5トライは必要」と試合前にチーム内で共有していたと明かした。

 正念場は後半開始直後だった。相手陣22メートルライン付近での守り。FWの集散の速さで上回りボールを奪うと、大きく動かす得意の形に持ち込んだ。しかし相手の両CTBを中心とした激しいタックルに圧倒されて前に運べない。ならばとキックパスで前進を試みるが、ミスからカウンターを食らい陣地を失った。最終的に奪ったのは、相手と同じ4トライ。「相手防御が素晴らしい。取れるところで取り切れなかった」と藤原監督。少ない好機を逸したことを悔やんだ。

 一方で磨きをかけた持ち味も発揮した。前半20分以降の猛攻は、タックルされても簡単に倒れずにつなぐ「オフロードパス」を起点としたもの。28分の一時勝ち越しのトライは、ゴールまで約22メートルの左中間でフッカー紀伊遼が2人がかりのタックルを受けながらパスを出し、ロック紀伊雄、WTB佐々木とつなぐ「理想形」だった。

 大阪桐蔭には前回大会準決勝の終盤、60回以上の連続攻撃の末、ゴール前の反則で敗戦。今年度のスローガン「磨」には、残り1メートルを攻めきる思いを込めた。だが、またも目の前に立ちはだかられ、単独優勝は持ち越しとなったが「しんどい試合が多かった分、みんな精神的にタフになった。未来につながる」と藤原監督。その足跡は、悲願を託された後輩たちの道標になるはずだ。【角田直哉】

大黒柱、一丸作れた 小西泰聖(たいせい)(3年)桐蔭学園・SH

 チームの誰もが認める大黒柱として、最後まで諦めない姿勢を貫いた。攻撃の起点として鋭いパスを供給しながら、時に体を張ったタックルで相手をなぎ倒す。9点差を追う後半28分にはグラウンド中央付近でのラックからの球出し後、左への展開に参加。再びボールを受け取り、今大会初トライを決めた。

 50メートル6・1秒の俊足と正確なパス技術を生かし、1年時からメンバー入り。昨年10月にはユース五輪男子7人制日本代表として3位決定戦で2トライを挙げるなど、銅メダル獲得に貢献した。

 華々しい活躍の一方、主将としては悩み通しだった。チームを引っ張ろうとするほど孤立し、副主将のロック今野は「主将任せになっていた」と振り返る。転機はユース五輪だった。大黒柱の不在が逆に上級生の自覚を生み「僕が離れている間に、個々が考えるチームになっていた」。

 主将頼みから一丸で戦うチームに変貌を遂げ、花園でも厳しい戦いを勝ち上がり「圧倒するゲームは少なかったが、接戦を勝ちきるチームを作れたことは今後、桐蔭学園の伝統になるはず」。初の単独優勝を逃した悔しさを抱えながらも、自分たちの成長に胸を張った。【田中将隆】

密集で力の差

 ○…桐蔭学園のロック今野は「やり込んできたブレークダウン(ボールの争奪戦)やコンタクトで上を行かれた」と密集戦での力の差を痛感した。2点を追う後半17分にはゴール前のモールを押し込まれ、痛恨のトライで突き放された。神奈川県予選の直前、主将の小西が高校日本代表で長期間チームを離れた時には副主将としてチームをまとめ、自身やチームの成長も実感していたが、あと一歩及ばなかった。「この悔しさをプラスに変えてほしい」と、後輩たちに思いを託した。

 ■ホイッスル

100回大会へ底上げ重要

 「平成最後」というキーワードが注目された今大会は、同時に2020年度の第100回に向けて動き出す、大きな意味も持った大会でもあった。

 準優勝した桐蔭学園のNO8・佐藤健次は1年生。2年後の100回大会はチームの中心として迎えることになる。「100回の数字は高校入学時から意識している。その時を最上級生で迎えられるのも一つの縁。高校最後に最高のプレーを見せるために、今から努力を重ねたい」と思いを寄せる。

 高校スポーツ界で100回の開催を数える大会は珍しく、伊藤義孝・全国高体連ラグビー専門部長は「他競技のベースにもなる。次世代につながる意味のある大会にしなければならない」と言う。競技人口が減少する中、最大の役割はいかにラグビーの魅力を伝え裾野を広げるか。そのために高校生のレベルを底上げし、魅力あるプレーや試合を増やすことが重要になる。

 100回大会は今年のラグビーワールドカップ、20年の東京五輪と大きな国際大会直後の開催とあって、追い風も期待できる。これまでも記念大会では出場校が増加してきただけに、「花園の常連校も出場経験がない学校の選手も、みんなが100回大会の主役になるんだと夢を持ってやってくれればいい」と伊藤部長。夢を追う若者の姿こそ、ラグビー界全体の活力となる。【角田直哉】

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記事(提供:毎日新聞/2019/1/8 16:41)

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