第98回全国高等学校ラグビーフットボール大会

聖光学院・佐藤忠洋監督 まき続けた種、結実 子ども教室開催、伝統つなぐ /福島

 東大阪市花園ラグビー場で27日に開幕する全国高校ラグビーフットボール大会(毎日新聞社など主催)に初出場する聖光学院の佐藤忠洋監督(44)は、ラグビー未経験で監督に就任して17年、ついに悲願の花園出場を果たした。50年以上の歴史を持つ部の伝統を絶やすまいと取り組んだのは、子どもたちも楽しめるタグラグビー教室による裾野の拡大だ。地元の伊達市でまき続けた種は芽を出し、大輪の花を咲かせた。【寺町六花】

 監督就任は2002年。国士舘大で選手として活躍した桑野広治前監督の退任を受けてのことだった。佐藤監督はそれまで剣道一筋。ラグビーの知識は「前にパスしてはいけない」程度だった。不安ばかりだったが、部員募集を停止しようとする周囲の動きに強く反対する桑野前監督の姿に心を動かされた。「聖光ラグビーの明かりを消してはいけない」。覚悟を決めた。

 就任当初の部員は11人のみ。自ら勧誘を続けたが、なかなか集まらない。けんかを繰り返す部員も絶えなかった。優れた選手を集めるための特待生制度がない中、どうしたら部を存続させられるか悩み続けた。

 そんな時、一つの考えがひらめいた。「ラグビーに関心を持つ子どもたちがいれば、いい選手が入ってくるんじゃないか」。10年11月、文部科学省の助成で、放課後に小中学校の枠を超えて行う「タグラグビー教室」を始めた。一方で佐藤監督は、伊達市内の各小学校を巡り、体育の授業の一環としてタグラグビーを教える活動もボランティアで行い続けた。

 だが翌年の東日本大震災と福島第1原発事故により、教室開催場所に使っていた各校の体育館は避難所になった。集まる子どもは半減した。聖光ラグビー部自体も思うような結果を出せなかった。「もうラグビーをやめよう」との考えと「教室まで作ったのに、やめるのか?」との思いの間を、心が揺れ動いた。

 そんな時、神奈川県相模原市に本拠地を置く三菱重工相模原ダイナボアーズ(来季のトップリーグ昇格が決定)から「タグラグビー大会を開き、伊達市の子どもたちを元気づけたい」との申し出があった。12年5月に相模原市で大会が開かれ、ダイナボアーズと交流する伊達市の子どもたちに笑顔が広がった。これを機にタグラグビー教室は人気となり、50~60人が集まるようになった。13年4月には、より本格的なミニラグビーも教える独自運営の「伊達ラグビースクール」として新たなスタートを切った。

 聖光学院の部員らは時折、スクールで子どもたちを指導している。スクールでラグビーに触れた子どもたちは、聖光学院に入学するようになった。フルバックの渡辺唯斗選手(2年)など、花園出場予定メンバーのうち4人が同スクール出身だ。佐藤監督は言う。「最初から花園を目標にしていたわけじゃない。聖光ラグビー部を終わらせたくない一心だったんです」

 ■ことば

タグラグビー

 ラグビーと同じ楕円(だえん)球を使用するが、タックルの代わりに相手の腰に付けられたリボン(タグ)を奪うことで、相手の動きを止める。身体接触や地面に倒れるプレーがないため、誰でも安全に楽しめる。

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記事(提供:毎日新聞/2018/12/27 11:58)

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