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(2017/1/6 16:49)
第6日・準決勝(5日・東大阪市花園ラグビー場)
桐蔭学園(神奈川) 反6
2 2 0 0 14 1 1 0 0 7 21
T G P D 前 T G P D 後 計
1 1 0 0 7 3 2 1 0 22 29
東海大仰星(大阪第1) 反7
▽主審=町田裕一
東海大仰星29-21桐蔭学園
東海大仰星が後半、バックス陣の縦突破で逆転した。5分にWTB根塚が中央を突いてトライ。CTB松本が同点ゴールを決めると、7分には松本、根塚が中央突破し、フランカー山村の決勝トライにつなげた。桐蔭学園は後半、相手の粘り強い防御に苦戦した。
■ノーサイド
後半ひっくり返す
東海大仰星の湯浅監督が「一番シンプルだが重要」と選手に意識付けてきたのは、最短距離を走ることだ。磨いてきた「直線突破」で活路を開いた。
7点を追う後半5分。WTB根塚が22メートルライン手前でボールを受けた。「スペースが空いていた。ここで、自分が取り切れるかどうか」。一気に中央を切り裂いた。ゴールも決まり、追い付く。
さらに2分後。CTB松本が自陣22メートルから相手陣へ一直線に入り、パスを受けた根塚も縦に走ってゴール前10メートルまで攻め込む。相手のタックルに捕まりながらも、左へパスをつなぎ、勝ち越しのトライにつなげた。
連覇を目指した今季、湯浅監督は「今までと違うことにチャレンジしないと、次(のレベル)にいけない」と選手に説き、「直線突破」を切り札にすべく、取り組んできた。春から夏にかけては「これまでやってこなかった練習を、いっぱい積んだ」と明かす。
桐蔭学園とは春の全国高校選抜大会で対戦し、後半に逆転されて3点差で敗れた。「1年間の集大成」(主将のフランカー山田)と臨んだ試合。素早い球出しで相手の防御ラインがそろわないところを一直線に突き、「テーマにしていたことを達成できた」と根塚。湯浅監督も「大会中にこれだけ伸びるチームがあるのか」と驚いた。ただ、根塚は「僕たちは挑戦者」と気を引き締める。今季のキーワードは「チャレンジ」だからだ。【坂本太郎】
桐蔭学園、攻め手欠く
「負けてつらかった。この日を目指してきた」。東海大仰星との前回大会決勝を振り返った桐蔭学園のCTB斉藤の言葉だ。東海大仰星への雪辱、さらには第90回大会で優勝を分け合った東福岡との決勝での再戦を懸けた一戦。舞台は整ったが、主役になるための技を封じられた。
得意とする展開ラグビーに持ち込めなかった。相手FWの圧力が強く、前進できない。準々決勝までは斉藤ら個々の能力による突破で状況を打開してきたが、簡単には許してもらえない。攻め手を欠いた。
斉藤は前半7分に先制トライ。12点を追う後半26分にも、強引な中央突破でロック高橋のトライにつなげた。ただ、斉藤頼みには限界がある。斉藤も突破を止められる場面が目立ち、連係は寸断された。
前半終了間際のミスも痛かった。斉藤らの突破からゴールまで残り5メートルに迫りながら、ノックオン。ここでリードを広げておけば、後半の戦い方も違っていたはずだ。
「絶対に勝ちたかった。こういう形になってしまって……」と言葉を継げなかった斉藤。リベンジを遂げられず、悲願の単独優勝の夢も消え、戦いの幕は下りた。【谷口拓未】
■ホイッスル
走れる第1列
バックス顔負けの瞬発力と軽快な足さばき。東海大仰星のプロップ谷口祐一郎(3年)は180センチ、105キロながら、50メートル6秒8の華麗なランニングで観客を沸かせる。準決勝も前半10分、残り20メートルのラックからパスを受けると、小刻みなステップと強烈なハンドオフでゴール直前まで迫る走りを披露。直後のトライにつなげた。
今大会、走力のあるFWの第1列(プロップ、フッカー)を多く見た。一昔前までは、大きな体を生かしてセットプレーを安定させ、モールやラックサイドを突く攻撃で貢献する印象が強かった。現在は少し事情が違う。
谷口が言う。「ワールドカップでも、強豪国は特に第1列がよく走って、トライに絡む」。日ごろから、ラダー(はしご状の縄)を使って細かくステップを踏み、足の回転数を上げるなど、走力を意識してきた。「動けない第1列は、やる方も見る方も楽しくないと思う」と笑う。
WTBからプロップに転向した長崎北陽台の村中龍(3年)のように、走力がある選手を第1列に置くのは、高校ラグビーでも主流になりつつある。高校日本代表を指揮する新潟工の樋口猛監督は「今は15人全員でトライを目指すのが大きな流れ。ミスマッチを作れる選手の重要性が高まった」と分析する。走れるFWの存在は、世界へとつながっている。【角田直哉】