時代を映すメッセージの発信はテレビ局の社会的使命でもある

INTERVIEW 01ドキュメンタリー番組を制作する部署へ

報道局 ニュースセンターで報道記者として10年間働いた後、2012年7月より報道局 番組センターに異動となりました。同じ「報道局」ではありますが、毎日のニュースを扱うニュースセンターと違って、番組センターでは毎月第3日曜日の深夜に放送される1時間のドキュメンタリー番組『映像'12』の制作が主な仕事になります。この番組は1980年に『映像80』のタイトルでスタートした関西発のドキュメンタリー。月1回、日曜深夜の放送という地味な番組ながら、ドキュメンタリーファンからの根強い支持があり、放送開始から30年も続いています。その間に芸術祭賞をはじめ、日本民間放送連盟賞、日本ジャーナリスト会議賞、テレビ界のアカデミー賞といわれる国際エミー賞の最優秀賞を受賞するなど、先輩たちが輝かしい成果をあげてきました。2003年にはこうした長年にわたる地道な活動と実績に対してギャラクシー特別賞も受賞しています。

私は報道記者として児童虐待事件に多く携わった経験を活かし、増加する子どもたちの貧困問題をテーマに継続的な取材を行ってきました。しかし毎日のニュース番組では長くても15分間のVTRしか作れない・・・もっと長い放送枠でこの問題をじっくりと取り上げてみたいと思い、番組センターを希望しました。ドキュメンタリー番組の制作だけに集中できる部署があるというのは非常に恵まれているし、MBSの強みの一つだとも思います。

INTERVIEW 02事象の背景にある社会の今を追いかけて

現在(10月)は、来月に放送する番組の取材が終盤にさしかかり、編集の準備作業を進めている日々です。これまで10年間の記者時代は日々起こるニュースを追いかける毎日でした。しかしドキュメンタリー制作に携わるようになってからは、日々起こるニュースを立ち止まってじっくり見つめテーマを見つけ出し、取材を重ね、社会の今の有り様をあぶり出していく作業だと感じています。記者時代は1日から数日単位の短い取材で行っていたものを数ヶ月単位で行うようになりました。それだけにじっくりと取材を受けて下さる方と向き合い信頼関係を築いていかなければなりません。「この記者は何を伝えたくて自分のところに来ているんだろうか。」と、私の人間性も見られている緊張感があります。

記者時代からずっと継続して取材しているのは「子どもの貧困問題」です。おととしには1時間のドキュメンタリー番組にしました。非常にデリケートであるこの問題は、相手にとっては出来れば触れられたくない話題ですし、たとえ撮影なしであってもお話を伺うことさえ難しいことが多々あります。そんな時は「当事者のお話を世の中に伝えることで、貧困の実態があることを知ってもらい、どうすれば改善できるか一つひとつ問題を紐解いて行きたいと考えている」ということを根気強く訴えることしか出来ません。実際に、いまの日本にあって「子どもの貧困」と言ってもあまりイメージ出来ない場合も多いと思います。でも現実には2度の食事が出来なかったり、学校に来られず進学をあきらめる子どもたちがいる。でもそういう人たちは自分からSOSを発することは出来ません。目をこらさないと見えてこないものを映し出すことが記者としての自分の使命だと感じています。

INTERVIEW 03取材相手の想いや現場の空気を視聴者へ届けたい

実はこれまでの10年間では、取材を受けてくださった方の想いを100%伝えられた!という手応えを感じたことが少なかったんです。5分、10分、長くて15分のVTRでは取材した大部分を割愛してしまいますから。それが1時間のドキュメンタリー番組を制作することで、できるだけ取材を受けてくださった方の想いをたくさん伝えられればと思っています。

ただし構成はシンプルに、ワンエッセンスで。私は取材を始めると、あれも聞きたい、これも聞きたいと、いろいろ取材してしまうタイプなんですが、編集の際に多くの情報を入れてしまうと視聴者にとってはわかりづらいものになってしまいます。メッセージを強く、ダイレクトに伝えるには、一つのテーマにワンエッセンスしか入れられないというのが10年間で得た答え。それはこれからも肝に銘じていきたいと思っています。

みなさんへ一言

私は10年間ずっと報道記者をやってきて、ドキュメンタリー番組を作るチャンスを与えてもらいました。入社した当時は右も左もわからなかったけれど、温かく見守ってもらいながら続けてくることができました。そういう意味では、好きなことを信念持ってやり続けていれば、ちゃんと応援してもらえる職場だと思います。だから就職活動でも「入社して何がしたいか」という目線を大事にしてほしいです。そして面接ではリラックスして臨んでください。記者と同じで短時間で相手に自分を分かってもらい信頼してもらうのは難しいことですが、一瞬でもリラックスして話せる瞬間があればいいと思いますよ。