屋台人間人事前田 放送業界の明日を考える vol3

株式会社毎日放送東京支社ラジオ部 高本 慧
SHOWROOM株式会社ビジネスデベロップメント部部長 山辺 浩平

放送局は視聴者と
コミュニケーション
できていますか?

5年後10年後の近い未来、放送やメディアの形はどうなっているのだろうか?

『屋台人間人事前田』は就活生が「放送業界で働いてみたい!」と思えるテレビの未来を探すため、毎日放送人事部の前田が自ら「屋台人間」となり、時代の最先端をいくキーマンの元へ話を聞きに行く出張屋台対談コンテンツです。

▶︎詳しい経緯は「屋台人間人事前田 放送業界の明日を考える vol.0」へ。

今回、屋台人間人事前田が訪れたのは、東京都渋谷区にあるSHOWROOM株式会社。同行するのは毎日放送の東京支社ラジオ部で働きながら、業務提携をする音声配信サービス「Radiotalk(ラジオトーク)」の取締役をつとめる高本慧(たかもと けい)。

配信者と視聴者のコミュニケーションによって成り立つライブ配信サービス「SHOWROOM」の中でビジネス戦略を考える山辺浩平(やまべ こうへい)さんと一緒に「放送局は視聴者とコミュニケーションできていますか?」をテーマに、放送業界の未来を探ります。

<この対談のポイント>
・違う業界から見た放送業界の「強み」と「弱み」がわかります
・就活生が具体的な夢を見つけるヒントとしてキーマンからのアドバイスがあります
・ESや面談の参考になるように「ホンネ」で語っています

それではお二人に
座ってもらいスタートです!

Profile

SHOWROOM株式会社 ビジネスデベロップメント部 部長
山辺 浩平(やまべ こうへい)
2011年、大和証券入社。その後、広告代理店、動画関連スタートアップ、DeNAを経て、2017年SHOWROOMに参画。2018年、SHOWROOMのコア事業を展開するSHOWROOM事業部コンサルティング (現ビジネスデベロップメント)部部長に就任。現在はコーポレート本部マーケティンググループにてマーケティングを担当。
株式会社毎日放送 東京支社 ラジオ部
高本 慧(たかもと けい)
入社6年目。テレビ制作で「ちちんぷいぷい」「ごぶごぶ」などを担当。その後ラジオ営業に異動しビジネスを学びながら、ネットを利用した新しい企画を実現。2018年には社内のビジネスプランコンテストで選出され、音声配信アプリ「RadioTalk」への出資と業務提携が決定。現在は東京支社ラジオ部での仕事をしながらRadioTalk社の取締役を勤める。

SHOWROOMがリアルタイムにこだわる訳

前田

前田

SHOWROOMといえば社長の前田裕二さんの著書『メモの魔力』も大ヒットしましたね。わたくしも買わせていただきました!
山辺

山辺

ありがとうございます。
前田

前田

私も「前田」なので、今回私の発言が「SHOWROOM」「前田」で前田裕二社長が語っていると間違えられたら、ご迷惑かなぁと心配しております。
髙本

髙本

写真があってよかったですね。見た目が全然ちがうので大丈夫ですよ(笑)。
前田

前田

実は「頑張っている人を応援したい!」っていう気持ちで放送局を志す若者がとても多いんですね。SHOWROOMさんのギフティングシステムってまさにこれだと思うんです。私自身にも応援したい!という気持ちがあり、とても興味がありお話させていただくのを楽しみにしていました。
山辺

山辺

ありがとうございます。SHOWROOMは、個人が誰でもライブ配信できるサービスです。ほぼライブ配信限定っていうところにこだわりがあるのですが、それはのちほど説明します。アイドルやアーティスト、お笑い芸人さんがちゃんとした機材とスタジオを利用して配信している番組もありますが、9割くらいは一般の方々がスマホからの個人配信していますね。映像コンテンツという意味ではテレビと共通していますが、「誰でも配信できる」のが違う点ですね。そこはどちらかといえばSNSっぽい。
前田

前田

どうやってマネタイズしてるんですか?
山辺

山辺

現状は広告を一切入れていなくて、ユーザーさんからの直接課金の形式をとっています。たとえば路上ミュージシャンの演奏なり歌がよかったらお金を払う。その発想からきていて、視聴者がお金を払って購入されたアイテムを「ギフティング(※)」という形で配信者に贈ることができるんです。ほとんどそれだけでマネタイズしています。要するにSHOWROOMの特徴は、「個人が誰でもライブ配信できる」「収益源は視聴者からの課金」ということですね。

※ギフティング:SHOWROOM内で無料・有料で配信者に文字通りデジタルアイテムのプレゼントをすることができる仕組み。金額に応じてアイテムが変わったり、ギフティングした視聴者のアバターが画面上の目立つ位置に移動する。またそのお金はレベニューシェア(利益分配)され配信者に届くようになっている。

視聴者のアバターやギフティングされたアイテムが配信中には可視化され、視聴者はもちろん配信者からも見えるようになっている。
髙本

髙本

直接課金のパイオニア的存在ですよね。
山辺

山辺

ライブ配信を中心に取り組んでいる理由のひとつとして「観たければ絶対に配信者と時間を合わせなきゃいけない」というのがあります。ギフティングも、ライブ配信だからこそ視聴者も「どれだけ応援できるか」「コミュニケーションをたくさんとりたい」といったモチベーションになる。だからアーカイブ動画も出していません。

前田

前田

今の放送局は真逆の方向に進んでいますね。かつてのテレビは放送時間に合わせてみんな観ていて、今はいつでも観られるようにインターネット上で「TVer」「動画イズム」などのアーカイブを増やしていっています。
山辺

山辺

テレビ番組は、アニメやドラマなど何度も見返されるコンテンツが多いですし、バラエティ番組はあとからネットで話題になることも多いので、何度も観られるようにして、広告をつけることが非常に有効だというのは分かります。SHOWROOMの場合はコンテンツ力以上にコミュニケーションが肝になり、リアルタイムに視聴ができなければそこで収益をあげるのは難しいんです。ギフティングは、時間内でどれだけコミュニケーションをとることができたかの結果なので。

前田

前田

テレビにはない仕組みなので興味があるんですけど、「ギフティングをする」っていうモチベーションはどういうものなんですか?
山辺

山辺

大きく分けると3つのパターンがあります。1つ目は、「パフォーマンスがよかった」とか「お誕生日おめでとう」とかパフォーマンスやコミュニケーションに対するギフティング。2つ目は、ライブ配信中に配信者からも見える視聴者のアバターが並ぶんですけど、その順位がギフティング量によって変わるので、その順位を上げるためのギフティング。そして3つ目がメインなんですけど、MBSさんともやらせていただいたようなオーディションのときに、ギフティング量で争ってもらっていて。そういった応援の意味を込めたギフティングが8割くらいを占めています。

前田

前田

配信者に何か伝えたり応援したりしたい、という気持ちがギフティングのモチベーションになると。応援したい気持ちがギフトになるってすごく画期的ですね。何度聞いてもすごい。
髙本

髙本

そうなんですよね。なのでMBSのラジオでもすでにコラボさせていただいているんです。『アッパレやってまーす!』の姉妹番組として「ゼンミセやってまーす!」という番組を2019年4月~9月まで放送したのですが、そのメインパーソナリティーのオーディションをSHOWROOMさんで開催していただきました。
山辺

山辺

『アッパレやってまーす!』って、よゐこさんやケンドーコバヤシさん、TOKIOの城島さんなど、かなり豪華な面々がパーソナリティをされている帯番組で。普段のSHOWROOM配信ではなかなかそんな急に華々しいところに出ていくことはできないですが、MBSさんご協力のもとプレミアムな体験ができるという形で実施しました。

前田

前田

SHOWROOMさんだけで完結するのかと思い込んでいました。なぜ我々のようなテレビやラジオとコラボしてくださるんですか?
山辺

山辺

SHOWROOMは芸能事務所に所属している配信者が多いんですが、やっぱりみんな最終的に目指してるゴールは、テレビやラジオに出られるとか、雑誌のモデルになれるとかなんですよ。だからそういった権利を獲得できるオーディションはうちとしても実施したい。

髙本

髙本

SHOWROOMはプラットフォームだからこそいいですよね。仮にテレビやラジオ、雑誌に露出が増えたとしても、活動の拠点はSHOWROOM。露出が増えてその拠点には人が増えるし、人が増えたらオーディションでも有利になって、露出の可能性もさらに増える。
山辺

山辺

そうなんですよ。だからテレビとSHOWROOMは、絶対に共存できるんです。共存どころか、一緒にできることがたくさんある。芸能を目指す人はやっぱり、テレビやラジオに出ることが一番の目標なんです。芸能活動の場としてトップなんですよね。どちらも「芸能×動画のライブ配信」なのでテレビとSHOWROOMはライバルのように見えますが、実はそうではないんです。

重要なのは「どれだけ双方向性があるか」

前田

前田

SHOWROOMで人気が出るコツって何かあるんですか?
山辺

山辺

よく人気が出る「テクニック」的なことを聞かれるのですが、そういうものはなくて、重要なのは「双方向性があること」なんです。たとえば最近あったのは、日向坂46さんの写真集が発売されることになって、SHOWROOM特番の中でライブコマース機能を使って販売してもらったんですよ。

配信中に買うと「◯◯さんが写真集1冊購入されました」と表示されて、さらにメンバーからもお礼を言われるようになっている。購入した瞬間に本人からお礼を言ってもらえるという、その双方向性が重要で。配信中に買うことで、写真集の一番後ろのページにコメントを掲載してもらえる特典もあって。

髙本

髙本

それ金額の上位順に載せているんですか。買った方が順番に?
山辺

山辺

抽選ですね。テレビっぽい配信であってもそういったSHOWROOMならではの仕組みがあって。アクションに対する返しがあることで、1時間配信の間に1,500冊くらい売れました。一方通行ではなく双方向の仕組みを作ることで、直接課金のモチベーションにつながると考えています。

髙本

髙本

SHOWROOMさんは芸能事務所さんと一緒に取り組まれていて、今まではマネタイズといえばテレビで露出増やして広告に出て……といったところが、一段階前も可視化されるようになったのは大きいですよね。テレビに出るためには本人の努力だけではどうにもならないところもあるじゃないですか。でもSHOWROOMは本人の努力とか、テレビに出るまで頑張ってきたことが可視化されている。
髙本

髙本

SHOWROOM代表の前田裕二さんが「努力がフェア(公正)に報われる社会を創る」とおっしゃってますけど、実際僕がプロデューサーをしている番組も、SHOWROOMで頑張ってきた子たちに出てもらっていて、すごく内容はいいしトークスキルもどんどん伸びてるんですよね。本人たちの能力もSHOWROOM内での活躍も、嘘がないのがすごいなと。
前田

前田

テレビ番組のキャスティングをするときって、制作の意図があって選んでいるんですけど、実際、「視聴者の方は喜んでくれているのかな?」ってふと思うことがあります。この方は本当に人気があるのかなって。SHOWROOMは本当に応援されている人が目に見えてわかるのっておもしろいですよね。
髙本

髙本

今RadioTalkで仕事していて思うのは、放送業界はまだまだデジタルマーケティングが進んでないなっということなんです。
前田

前田

この屋台人間シリーズでも、マイクロソフトさんやヤフーさんとの対談で全く同じことを言われました。放送業界でもまもなく視聴ログ(※)がとれるようになり、インターネット同様のデジタルマーケティングが導入される動きはあるんですけどもね……。SHOWROOMさんはどういうことをされているんですか?

※視聴ログ:今回は大きく話が脱線するのでお話できませが放送業界のビックトピックです。「視聴ログ」ぜひググってみてください。

山辺

山辺

いろいろやっていますけど、ひとつはKPIですね。目標そのものではなく、目標を達成するために、目標を達成するために重視する指標をKPI(Key Performance Indicator)と呼ぶのですが、その分析に力を入れています。
前田

前田

KPIマネジメントってやつですね。KPIは簡単にいうと経営目標をしっかりたてて、それを達成するために必要な要素を決めて分析していくっていうことですよね。聞いたことはありますが、使ったことはないですね。
山辺

山辺

SHOWROOMの場合はまず「ユーザー数×一人あたりの単価=売り上げ」という式があります。「売り上げ」がゴールなので、それを達成するために、「単価」をどう上げるかを考える。「単価」をさらに分解したら「課金率と課金単価」になるので、視聴者にどこでお金を使ってもらうか考える。そうやって日々KPIをたくさん分解して考えています。
髙本

髙本

たとえば「マラソンを完走したい」というゴールがあったら、完走できないのは「体力がないから」なのか「マラソンが楽しくないから」なのか。体力の問題なら、体力がつく食事を開発するなど、一番効率的に進めていって、確実に達成するためにKPIを設定するんですよね。
前田

前田

KPIってなんか血も涙もないすごく怖いもののようなイメージだったんですけど、お話を聞くと、すごく当たり前なことをちゃんとやることなんだなって思えました。私が制作現場で学んだことは「自分たちがおもしろいことをやることが大事」っていうことなんです。「視聴率取れるからやる」だと「テレビは同じものばかり放送している」ことになってしまいます。なので面白い番組は分析では生まれないという考えがしみついています……。
でも、「分析」と「自分たちがおもしろいと思うことをやる」は相反することではなくて、全く別の軸なのかなと思えました。例えばKPI的にいうと、我々の目標は「自分たちがおもしろいと思うことをやって、それをたくさんの方に観ていただく」ということで、それを達成するために分析をする。であれば、自分が今までやってきたことと矛盾しないように思います。
髙本

髙本

そうですね。ぜひ試してみたいですね。
前田

前田

話戻るんですけど、さっき「双方向性が重要」って話があったじゃないですか。MBSラジオができることってあるんですかね?
山辺

山辺

現状のラジオ番組はなかなか双方向性を作りにくいので、リスナーがアクションを起こすのはなかなか難しいと思います。もしやるのであれば、ラジオにリスナーのアクションが溶け込むようなコンテンツがいいんじゃないでしょうか。たとえば、リスナーがSHOWROOMでギフティングした総量によってラジオ番組内で出演者が戦うとか。そうすると出演者とリスナーが一緒に番組を作っている実感が生まれるので、より熱いアクションがくるんじゃないかとか考えたりしています。
前田

前田

SHOWROOMさんは、そういった企画を一緒に考えてくださるんですか?
山辺

山辺

もちろん一緒に考えて、コラボ企画として実施します。
髙本

髙本

SHOWROOMさんメインで企画を考えていただいて、テレビやラジオ側はマネタイズをする方法もあるのではないでしょうか。レベニューシェア(利益を決められた率で配分する)にしたらお互い目標になるし、放送局のマネタイズを直接課金の方向性で取り組むのは、個人的にメチャクチャある話だなと思っています。
山辺

山辺

実際、放送外収益の文脈のお取引はかなり多いですね。
前田

前田

SHOWROOMさんって芸能事務所さんと密にコミュニケーションを取られていると思うのですが、配信者のプロデュースやコントロールって実際のところどれくらいされてるんですか?
山辺

山辺

配信自体のプロデュースはすべて配信者や配信者の所属する事務所にお願いしています。我々はタレントさんを選ぶときコンサルだけさせていただいていて。「今こういう配信が流行っているからこういうタレントさんに需要が集まりますよ」くらいのアドバイスです。そうやってSHOWROOMと芸能事務所がお互いの求めていることを擦り合わせていくような感じです。
前田

前田

テレビやラジオはまず番組ありきで出演者を決めますけど、SHOWROOMさん配信の内容自体を事務所さんにお任せして、出演者の選び方のみをサポートしているということですね。実に興味深いです。
山辺

山辺

だからこそ大手の事務所さんともご一緒できるところがありますね。
前田

前田

SHOWROOMさんとのコラボレーションもそうですけど、ラジオって新しい技術を使った仕組みをどんどん試しているイメージがあります。
髙本

髙本

手前味噌になっちゃうんですけど、僕が最近気合いを入れたのは「TokenCastRadio(トークン・キャスト・ラジオ)」っていう、ブロックチェーンで管理されたトークンを、ラジオをリアルタイムで聴いている人にだけ届けるもので。電波に透かし音声を入れて、その音声をアプリが感知すると受け取れる仕組みなんですけど…。
前田

前田

……分かります?
山辺

山辺

分かりますよ(笑)
前田

前田

私は分かりません(笑)。もうちょっと教えてください。
髙本

髙本

すごく簡単に言うと、ラジオを聴いてるだけでクーポンとかがもらえるんですよ。
前田

前田

え、そんなのできるんですか。これからどういう展開になっていくんですか?究極形でいうと。
髙本

髙本

法的な面も勿論考慮しなければなりませんが、ラジオを聴いてるだけで生活が出来るようになればおもしろいなぁと妄想しています。
前田

前田

要は電子マネーを電波でいただいて、ギャラをもらって聴くみたいなこと?
髙本

髙本

みたいなものですね。ちなみにタイム管理しているので、日時制限があります。録音したものを聴いても受け取れません。
山辺

山辺

実は我々も音声メディアってすごく注目していて、ネクストステップでやってみようかなと検討はしているんですよね。ちょっと形は違いますが。芸能×音声の販売というコンテンツに注目しているところです。
前田

前田

さっきの「トークンキャストラジオ」じゃないですけど、MBSはさまざまなジャンルで新規事業を立ち上げようとしているんです。高本は入社6年目で「Radiotalk(ラジオトーク)」という会社さんに取締役として入らせていただいています。
山辺

山辺

そうなんですか。
髙本

髙本

Radiotalkもメチャクチャおもしろいサービスですし、素敵な会社なんです。山辺さん、またお話させてください。
山辺

山辺

我々も新しい取り組みはやっています。たとえば、「SHOWROOM V」って最新技術を使ったサービスを始めています。
前田

前田

どんどん新しいことに挑戦していくんですね。
山辺

山辺

バーチャルキャラクターが配信するものを今新規事業でやっていて。バーチャルキャラクターに対してもギフティングできます。
前田

前田

人間にギフティングするのも驚きなんですが、キャラクターまでギフティングされているんですね。これはまた新しい感覚です。
髙本

髙本

実はバーチャルキャラクターの方が生身の人間より課金率がメチャクチャ高いという噂をきいたことがあります。
山辺

山辺

高いですね。
髙本

髙本

僕も分からないので聞いてみたいんですけど、YouTuberがスーパーチャット(YouTubeの投げ銭システム)されるより、VTuberのほうがメチャクチャ課金されてるんですよね。なんでVTuberってこんなに課金率が高いんだろうなって。どう思われますか?
山辺

山辺

ゲームとかアニメ市場が、そもそも全力で趣味にお金を使う方が多いですよね。その市場だと思います。あと結構インドアの方が多くて、アウトドアの趣味をしていなくてそこでお金を使わない…ということはユーザー調査から分かっています。
前田

前田

本当に新しい感覚です。刺激になります。
山辺

山辺

説明がややこしかったのですが、基本SHOWROOMがやっていることは一個しかないんですね。ずっとリアルの人間が芸能を目指して頑張るみたいな感じだったんですけど、生身じゃない配信者も増やしているというだけで。
前田

前田

リアルであろうが、バーチャルであろうが、頑張っている人を応援する気持ちがベースにあるということですね。
山辺

山辺

我々としては新しい市場を切り拓きたいというのと、配信者を増やすという目的もあって。どうしてもビジュアルを出すのに抵抗があったり出せない事情があったりする、でも芸能は目指したい、声がいい、歌だけがメチャクチャ上手…と、いろいろあると思うんです。そういう人たちが気軽にバーチャルキャラクターを演じて配信できるようにSHOWROOM Vはあります。
前田

前田

顔を出すってものすごく大きなことですもんね。なるほどです。我々でも何か応用できるかもしれない考え方です。本当に刺激になります。

MBSの社員だったら何をする?

前田

前田

このコンテンツは放送局に興味がある学生の皆さんに読んでいただくための企画です。彼らの刺激になると思うので、ぜひお聞きしたいのですが、山辺さんがもしMBSの社員だったら「これをやりたい」ってことを教えていただけますか?
山辺

山辺

オーディション番組を作りたいですね。SHOWROOMの中から圧倒的なスター、YouTubeでいえばヒカキンさんみたいな方をどんどん排出していきたいんですけど、SHOWROOMだけで作り出すのはすごく難しいと思っていて。

あとはSHOWROOMの配信者がマスメディアに対する思い入れは非常に強いので、テレビ×SHOWROOMで連動したオーディション番組からスターを生んでいくようなことを提案してみたいなと思います。

前田

前田

オーディション番組って昔からあるじゃないですか。山辺さんが考えたらどんな仕組みになるんですか?
山辺

山辺

今までって、過程を編集したものを見せてこなかったと思うんです。本当に生々しい部分をしっかり見せたらおもしろいんじゃないかなと思いますね。

前田

前田

編集しないってことですか?
山辺

山辺

そうですね。SHOWROOMもそうですが、編集しない素の部分をある程度見ていただくことによって、その人への共感度合いが高まるんだろうなと思います。今までの既存の仕組みだと「なぜ選ばれたのか」とか、「どういう基準でこの人たちが来ているのか」というのが、視聴者は分からないままだったと思うので。

前田

前田

ドキュメンタリー番組の担当もしていたことがあるのですが、テレビでは時間の制限があるので、どうしても短くしなくちゃいけないしばりはあるんですよね。そこで落ちていくものがあることは自分たちでも感じています。
山辺

山辺

ストーリーに共感するためには、編集された映像よりも、できるだけ本当の姿を観た方が感動すると思うんですよね。
前田

前田

ドキュメンタリーやっている人ってそもそも編集したいわけじゃないんですよね。気持ちを伝えたいし、気持ちをゆさぶりたいんですよね。でも放送の枠は決まっている。だからドキュメンタリーのディレクターは「ある部分ははしょって、ここはノー編集でやりきった!」みたいなことを誇りに思っていたりするんです。ネットだと時間の制限がなくなるんですね。それはそれでディレクターはワクワクするかもしれませんね。
髙本

髙本

MBSで働いている人たちは映像のプロなので分かっている話だとは思うんですけど、「ドキュメンタリーは嘘をつく」みたいなことで、人間の編集が入った時点でそれはもうその人の主観が入っているから、真実みたいなものはないわけじゃないですか。

でもそのままカメラとその人だけを垂れ流しているから、もしかしたらその人が嘘をついている可能性はあるけど、そこに第三者の編集という主観が加わっていないことによるリアルはたしかにあるような気がします。

前田

前田

正直僕らからすると、「若者のテレビ離れ」みたいな言葉に象徴されるように、テレビでやらなくてもインターネットで完結している気がしているんですけど、なんでわざわざ「テレビでやりたい」って思っていただけるんでしょうか?
山辺

山辺

芸能を志す配信者、事務所所属者に聞くと、やっぱりみんな「テレビに出たい」という気持ちが一番なんですよね。どうしてもゴールデンタイムのバラエティ番組に出たいとか、ドラマに出たいというのはずっと変わらないところなんです。
前田

前田

テレビの放送局にいると悲観的になりがちで、テレビに出たい若者は大勢いても、テレビ自体はあまり観られてないと思いがちなんです。
山辺

山辺

「観ていない」ことはないと思います。どちらかといえば「テレビをつけてはいるけど観ていない」のが正しいと思っていて。ゲームしながらとかTwitterしながら、要はスマートフォンを使いながらテレビをチラ見するみたいなことが多い。だからこそ、スマートフォンとしっかり連携したテレビのコンテンツを考えていくべきだなと思っています。
前田

前田

なるほど。
山辺

山辺

テレビ番組のテロップがTwitterと連携している番組とかあるじゃないですか。あれはむしろTwitterに時間を取らせてしまっていると思うので、だったらテレビのコンテンツともっとちゃんと連携させたことをやるべきだと思っています。

Twitterはテレビのコンテンツと連携させやすいし、情報のピックアップも楽です。でも、視聴者が参加して番組を一緒に作っている感じが足りない。スマートフォンを観ながらも、ちゃんとテレビの内容に熱中できる仕組みを考えられたら、おもしろくなるんだろうなと思っています。

前田

前田

どうやったら視聴者はテレビに集中してくれるんですかね……。
山辺

山辺

SHOWROOMの場合は「生放送でしか観られない」という圧倒的な特徴があるので、視聴者が集中する率は高いです。ここを見逃すとリアルタイムのコミュニケーションはとれないし、録画はもちろんできない。昔のテレビとすごく似ているんですよね。

昔はリアルタイムで人気番組を観ないと次の日みんなの話題についていけないから、絶対に観る習慣があった。今のSHOWROOMって、そういった状態を狙ってやっているんです。

前田

前田

リアルタイムのコミュニケーションを意識的に生み出して、「絶対に観なきゃ」と思わせていると。
山辺

山辺

そうです。テレビはその点、リーチ力と拡散力が強みなのに、視聴者はテレビから情報を受け取っているだけ。自分から何かアクションをしても何も返ってこないのが当たり前。1対100万人みたいなことになっているのが現状です。そこの課題を解決するためには、テレビを集中して観るための意味を作る必要があると思います。
髙本

髙本

テレビやラジオのコンテンツって過渡期なんですけど、放送局にはこれまで培ってきた経験はもちろん、お金もつながりがある。その状態で「変わりたい」と思っている今だからこそ、新しいことをやりたい人には最適な場だと思っているんですよね。今テレビ業界は一番おもしろいときだと思います。
前田

前田

今現場にいる人たちのもっと新しいことしたいとか、勝ちたいとかの士気は社内的には上がっている感覚はあります?
髙本

髙本

士気はメチャクチャあがっています。ラジオトークに関してこんな番組やろうよみたいな企画案は毎日のようにいろんなディレクターからくるし、それをすぐ作りましょうってどんどんコンテンツ化していっている時期なので楽しいです。
前田

前田

たしかに「変えてみたい」「新しいことやってみたい」と思う若者が以前よりも挑戦できるような環境になっていると思いますね。
髙本

髙本

今まではメチャクチャ恵まれた環境で基本的には勝ち戦だったので「こうやれば勝てる!」みたいな形があったような気がします。逆にそれ以外のやり方はやらなくていいみたいな。でも、今は必ずしも勝ちばかりではない。そうなると「いろいろやってみよう」となるで、若者にチャンスがあるという意味で、放送局の仕事って今が一番おもしろい時期だと思います。

テレビが双方向性を持った時どんな番組を作れるのか?放送の未来を握る鍵はやはりコンテンツ

視聴者からのギフティングで注目されるインターネットサービスSHOWROOM。番組の内容と同じぐらい大事にされているのが「どれだけ双方向性を作れるか」ということ。リスナーとハガキやメールでのコミュニケーションで盛り上がるラジオと似ているけど、超最先端!そんな印象を受けました。

双方向性の重要性を感じながら、それが放送局にとって、最終の目標ではないということも改めて認識できました。テレビがネットに繋がり双方向性を持てる時代は確実に来ます。一番大事なのは、その時に「どんなワクワクする双方向性を持った番組を作れるのか?」。私たちももちろん考えていきますが、これから放送業界で働く若者たちにぜひこの課題を解決していって欲しいとも思いました。

さて、屋台人間 人事前田の東京の旅<第一弾>は今回で最終回。ライバルだと思っていた皆さんに温かいエールをいただき、皆さんから元気をいただくことになりました。これからも放送業界を毎日放送をよろしくお願いいたします。

文 :鈴木梢
写真:黒羽政士
編集:人間編集部

企画・制作:株式会社人間
屋台協力:のびしろラボ

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