投開票日が迫る参議院選挙。「党首を追え」と題して、政党要件を満たした10党の党首街頭演説に注目しました。2回目の記事では、取材を終えた「自由民主党、立憲民主党、公明党、日本共産党、れいわ新選組」の5つの政党を見ていきます。

【“背水の陣” 自由民主党】

今月8日、和歌山県で行われた自民党・石破茂総裁の応援演説をMBS前田春香アナウンサーが取材しました。総理だった安倍氏、岸田氏の襲撃事件などを受け、演説開始前からものものしい警備態勢となっていました。

「和歌山県御坊市にあるJAの施設にきています。演説まで1時間ほどあるんですが、会場のまわりには警察官も多く配備されていて、厳重な警戒態勢です」(前田アナ)

会場の入口では金属探知機で全身を確認。かばんの中や飲み物もチェックしていきます。チェックが終わった人にはシールが貼られます。そして厳重な警戒は入口だけではありません。

「わたしがいる場所は報道陣向けのエリアになっています。ここから10m先に支援者が座る席が並んでいまして、さらにその10mほど先に石破総理が立って演説を行うということなんですね。なかなか総理の近くには行けない会場づくりとなっています」(前田アナ)

この日集まった聴衆は約600人。

「石破総裁が会場に到着したようです。大きな拍手がわき上がっています。ただ距離が非常に遠くて、聴衆とは10m~20mほど離れているような状況です」(前田アナ)

「新しい商品、新しいサービスはこの和歌山にいっぱいある。そういうものを開発するための投資はもっとやりましょう。物価高に対する一番の方策は賃金があがることです。物価高に打ち勝つ賃金上昇」(自由民主党・石破茂総裁)

公約として国民1人あたり2万円、子どもと住民税非課税世帯の大人には4万円の現金給付を掲げ、年内にも実施する考えの石破総裁。消費税の減税については「高所得者ほど恩恵をうける」と述べ、否定的な考えを示しています。

演説を終えた後、支持者と握手や記念撮影をすることなく会場を後にしました。聴衆に話を聞くと…

「総理に出会うなんてきょうが初めてです」
「こんなところまで来てくれるのかと、そういう印象でした」

JNNが中盤情勢を分析した結果では、与党が過半数を割り込む可能性があり、厳しい情勢となっています。

さらに、アメリカとの関税交渉においても、トランプ大統領が8月1日から25%の関税を発動する可能性を示すなど、大きな難題を抱えています。

追い込まれてきた石破総裁。7月16日、大阪・難波でマイクを握り、こう訴えました。

「皆さん本当にこの国の政治、正面から真正面から真面目に取り組んでいかねばならないと思っています。自分がやらないで誰がやるんだ。いまやらないでいつやるんだ。どうぞこの思いかなえてやってください。よろしくお願い申し上げます」(自由民主党・石破茂総裁)

【“新たな戦略”で生き残りを 公明党】

大阪・難波で7月10日に行われた公明党の斉藤鉄夫代表の演説。自民党同様に演説開始前から厳戒な警備態勢が敷かれ、演説を聞きにきた人たちの荷物確認はもちろん、建物の上からも…

「今回の選挙、何と言っても物価高をどう乗り越えるかという選挙でございます。私たちは減税も、そして給付も両方必要だ。このように申し上げております」(公明党・斉藤鉄夫代表)

炎天下の中、年配者らが集まっていました。多くは長年、公明党を後押ししてきた熱心な支持者とみられます。話を聞いてみると…

「支援しているので、直接生の声が聞きたいなと思いまして」
「応援にきました」
「斉藤さん本人に会えてね、もう感動して。人柄の良さもすごく出ているし、おっしゃっていることはピカイチなんでね」

古くから「常勝関西」と呼ばれ、安定的な強さを誇ってきた公明党。支持団体「創価学会」などの強固な組織票を支えにしてきました。

しかし、ピーク時に約900万票あった国政選挙の比例得票数は、去年の衆院選では600万票を割り込み、大阪の4選挙区すべてで議席を失いました。

支持団体以外にもどうアピールしていくのか。今年に入り、若者などを狙って党のYoutubeでサブチャンネルを開始。

<YouTube「公明党のサブチャンネル」より>
「時刻表を読む『読み鉄』が私のジャンル」(公明党・斉藤鉄夫代表)
「『乗り鉄』兼、乗って酒を飲むのが大好きだ。『飲み鉄』」(自由民主党・石破茂総裁)

 幹部の素顔も含め、政治の裏側をつまびらかにする内容を配信しています。

「これまで私たちの声がなかなか届きにくかった層の皆さんにも、公明党の政策・考えを知っていただきたいという思いで、力を入れているところでございます」(公明党・斉藤鉄夫代表)

 新たな戦略で新規の票も取り込めるのか。公明党は正念場の夏を迎えています。

【勝利で“政権交代”狙う 立憲民主党】

「物価高からあなたを守り抜く。立憲民主党代表の野田佳彦です」(立憲民主党・野田佳彦代表)

選挙戦最後の日曜日・ラストサンデーに大阪入りした立憲民主党の野田佳彦代表。

「聴衆を見てみますと、現役世代男性の姿が目立ちます」(前田アナ)

実際に話を聞いてみると…

「現地で聞くと実際にこの人には応援している人がこれだけいるんだなと見てわかるし、熱意とか勢いを感じられるのがいいところかなと思っています」

演説を行う選挙カーにはほかの政党にはない特徴が…

「選挙カーを見てみますと、視覚的に立憲民主党の物価高対策が描かれた垂れ幕がさがっています。イラストを交え非常にカラフルで見やすいです」(前田アナ)

「日本が豊かになっても、家計が豊かにならなかったら何の意味もないんじゃないですか皆さん。物価高からあなたを守り抜くなかの一丁目一番地の政策が食料品、消費税0(%)なんです」(立憲民主党・野田佳彦代表)

背後のパネルにシールを貼り付けながら演説。最優先する「物価高対策」では、来年4月から最長で2年間、食料品にかかる税率をゼロにすることなどを公約に掲げています。そして…

「キャッシュバックが立憲民主党。キックバックが自民党。全然違いますよね」(立憲民主党・野田佳彦代表)

自民党との対決姿勢を全面に押し出していました。

「私は本気で政権を取りに行く覚悟であります」(立憲民主党・野田佳彦代表 ※去年9月)

去年「政権交代」を掲げて党の代表に就任した野田代表。その道筋について「ホップ・ステップ・ジャンプ」に例えています。

「ホップ」と位置づけた去年の衆院選で、50議席増やす躍進をとげ、与党を少数に追い込みました。「ステップ」となる参院選でも参議院の与党過半数割れを狙います。

ただ、最新のJNNの世論調査で立憲の支持率は6.3%、自民党が逆風にもかかわらず、その受け皿にはなりきれていません。

野党第一党としての山場を迎え、野田代表は…

Q演説の見せ方について意識している?
「物価高からあなたを守り抜くというのは一番軸となる政策ですので、あらゆる形でわかりやすくお伝えできるように工夫をしていきたいと思います」(立憲民主党・野田佳彦代表)
Q演説で「皆さん」ではなく「あなた」と呼びかけていたのは?
「われわれは1人1人『あなた』と、そういう声を拾って国政に届ける役割を果たしたい」(立憲民主党・野田佳彦代表)

政権交代への前哨戦でジャンプできるのでしょうか。

【“脱・オールド政党”なるか 日本共産党】

「滋賀県JR石山駅前に来ています。このあと5分ほどで共産党の田村委員長がこの場所で演説を行う予定なんですが、すでに聴衆が集まっています。比較的年齢層が高い方が多いなという印象です」(前田アナ)

ラストサンデーの13日に関西で応援演説を行った日本共産党の田村智子委員長。

「私たちは消費税全部5%に減税する。もうかっている大企業や超富裕層、こういう皆さんへの減税、税金のおまけ、これをやめれば税収を減らすことなく消費税5%減税できるんです」(日本共産党・田村智子委員長)

今ある政党で最も古く、100年を超える歴史がある日本共産党。食料品に限らず、全ての消費税を5%に減税、そして廃止を目指すと公約に掲げています。

「私たち裏金も暴いて、自民党・公明党を少数に追い込むことができましたよね。そのことで政治は確かに変わってきています」(日本共産党・田村智子委員長)

機関誌「しんぶん赤旗」は、自民党の裏金事件をスクープするなど、存在感を示しています。その一方で読者数は年々減少。さらに党員数もピーク時から約半減し、現在は25万人程度と低迷しています。

こうした中、党勢の回復に向けて乗り出したのが、若者をターゲットにしたSNS発信の強化です。

<共産党公式YouTubeチャンネルより>
「低迷する経済、混迷する現在、富裕層大企業優遇する原罪」

今の政治への皮肉が込められたラップソングも制作しています。

この日の演説会場でも…

「この街頭演説会の模様を動画に撮ってどんどん拡散してください」(日本共産党・田村智子委員長)

Q動画を撮って拡散してくださいと呼びかけていたが?)
「(去年の)総選挙でSNSが立ち遅れたという反省があります。党員の方々は年齢層は高かったとしてもいらっしゃるわけです。そういう皆さんにもどんどんSNSを活用してもらって広げる力にしていこうと。連帯の力で世の中を変えるというのが私たちの一番の立場ですね」(日本共産党・田村智子委員長)

スタイルを貫きつつ、選挙戦で「バズる」ことはできるのでしょうか。

【貫く“消費税廃止” れいわ新選組】

「れいわ新選組の山本太郎代表が演説をおこなっているんですけれども、山本太郎代表がなかなか見えないほど人が集まっています」(前田アナ)

7月9日、神戸のJR三ノ宮駅前で行われたれいわ新選組・山本太郎代表の街頭演説。多くの人が足を止めていました。山本代表のすぐ横にはバンドメンバーたち。ほかの政党にはない生演奏にあわせた演説が「れいわ」のスタイルです。

「いま必要なことは大胆な経済政策。この国に生きるすべての人々を底上げし、そして日本のものづくり、この力を取り戻していきながらジャパン・アズ・ナンバーワン、もう一度取り戻したいと思っています」(れいわ新選組・山本太郎代表)

「周りからは口笛、そして拍手も聞こえてきました」(前田アナ)

さらに代表自ら、聴衆からの質問に答えるQ&Aタイムも。

「じゃあ一番前の…」(れいわ新選組・山本太郎代表)
Q政策の順位教えてほしいです。どこからやっていくか。
「一番最初は減税。今こそ消費税をやめるべき。ひとりひとりの購買力、お金を使える力を増やして日本の消費と投資を取り戻そう」(れいわ新選組・山本太郎代表)

今回の参院選では経済対策として消費税の廃止や、国民1人あたり10万円の現金給付などを訴えています。

会場に集まった人たちはスマホを向け撮影。配信をしている人の姿も大勢見られました。街頭演説が終わると山本代表との写真撮影会。アイドルの握手会さながらに長い行列ができていました。話を聞いてみると…

Qなぜこの場所に?
「山本さんがいたんで写真撮ろうかなって。TikTokとかでみていたんで」
「声聞いたら山本太郎さんやったからちょっとのぞきに。いつもTikTokとかでチェックしているので」

SNS発信に力を入れることで、比例代表の得票数を伸ばしてきたれいわ新選組。前田アナが山本代表に話を聞きました。

Q今回の演説の雰囲気は?
「全国まわって大体どこもいい雰囲気ではあります。手ごたえはあります」(れいわ新選組・山本太郎代表)
Q演説スタイルの意図は?
「ふだんから全国まわりながらこういうふうにみんなにマイクでしゃべってもらう機会を広げているんですよ。普通の選挙って一方的じゃないですか。言いたいこと言ってどこか行くというスタイルだから。極力そうはならないように」

今回の参院選。新しい政党が支持を伸ばす中、れいわは議席を増やすことができるのでしょうか。