投開票日が迫る参議院選挙。「党首を追え」と題して、政党要件を満たした10党の党首街頭演説に注目しました。1回目の記事では、取材を終えた「日本維新の会、国民民主党、参政党、社民党、日本保守党」の5つの政党を見ていきます。

【参院選の台風の目 参政党】

「多くの人が集まっています。中には参政党カラーのオレンジのTシャツを着る人の姿も目立ちます」(MBS前田春香アナウンサー)

17日午前、参院選の応援演説で滋賀県米原市を訪れた参政党の神谷宗幣代表。その姿を一目見ようと雨の中、多くの人が詰めかけました。

「参政党の日本人ファースト、これは反グローバリズムです」「この先50年100年の日本の未来を一緒に考えましょうというのが参政党ですからね、みなさん」(参政党・神谷宗幣代表)

今回の参院選で”台風の目”となっている参政党。今月のJNNの世論調査では比例代表での投票先に自民党、立憲民主党に次ぐ3番手となりました。

「少子化を止めるためには、若い日本の女性が早く結婚して、子どもほしいなと思ってもらわないといけないんです。だからそういう社会基盤をつくっていかなければいけない」(参政党・神谷宗幣代表)

一方で、党が掲げる「日本人ファースト」のキャッチフレーズには「排他的」との指摘も…。聴衆の後方には、党と異なる主張を持ったプラカード姿を持つ人も目立っていました。

「今、人口が減ったから外国人でという流れになっていますけれど、外国人だけに頼ってはいけません。同時に、外国人を全部出さないといけないとか、そんなことも言っていません。日本の未来を考える経済政策であり、労働政策であり国づくりのテーマです」(参政党・神谷宗幣代表)

聴衆に話を聞くと、「外国人問題をしっかりやってくるところ」という男性らや、「しがらみがない。自分たちが思っている気持ちを国政に持っていてもらえる政治を作ってくれる」と話す女性らがいました。

台風の目、とも言われる勢いをどう受け止めているか、前田アナが神谷代表を直撃取材しました。

「私、全国回ってるんですけど、毎日過去に見ないくらいの方に来ていただいているので、勢いは落ちずにまだ維持できていると思っています」

Q排他的な主張だという声は?
「ねじ曲げだと思いますね。われわれはこれから活動の中で、そうではなかったなということを証明していけば、たぶんみんな忘れると思う」

Q与党入りという可能性は?
「この参議院選挙明けに考えていません」「足場を固めないといきなり与党に入ってということになると、参政党が崩れてしまいますね」「衆議院で議席がしっかり取れれば、他の選挙情勢をみて、連立で与党に入ることも考えていきたい」

【三足のわらじで挑む 日本維新の会】

「長らくお待たせいたしました。吉村洋文代表の到着です」(アナウンス)

演説会場に走ってあらわれた日本維新の会・吉村洋文代表。大阪府知事、地域政党・大阪維新の会代表、そして日本維新の会代表と三足のわらじを履いた状態での初めての国政選挙です。

「一番負担が大きいのは社会保険料。これを下げる改革をやらさせてもらいたい」「2万円現金をばらまく政治より、社会保険料を下げる政治をしましょうよ」(日本維新の会・吉村洋文代表)

多くの聴衆が集まっていて、年齢層を見ていくと、比較的、現役世代の方が多い印象。中でも女性が多い印象があります。

地元・関西では圧倒的な知名度を誇る維新。参院選で看板政策に掲げたのは『社会保障改革』でした。医療費を4兆円以上削減し、1人あたりの社会保険料を年間で6万円引き下げることを公約に掲げています。さらに訴えるのはこれまでの実績です。

「この尼崎から、ちょっと隣にいったらうめきたがありますけど、ずいぶん緑できれいになりましたね」「維新の会で、あそこの街並みも大きく変わりました。そしたら税収も増えますよね」「我々維新の会は、みなさんと約束したことは実行する、それはやってきました」(日本維新の会・吉村洋文代表)

聴衆に話を聞くと、「吉村さんの熱い演説。ちょっと投票にいってみようかな」と話す女性や、「ばらまきとかじゃなくて税金を下げてくれる政策を重視してみたいなと思いました」と話す男性。

しかし維新は去年の衆院選で、大阪の選挙区で全勝したものの、全体では5議席を失い、先月の都議選に至っては候補者全員が落選してしまいました。

吉村代表のインスタグラムでは、「20万円もひかれてるやん~社会保険料、高すぎるやろ」と、自ら出演するショート動画をSNSで展開するなど発信にも力を入れています。目指すものは…

「選挙のやり方とか、見る媒体が変わってきているので、ただ本質は変えない、そこが重要だと思います。改革で財源を生み出していく、まず自分たちのことからやる、そういったことを徹底してしっかりやっていきたいと思います」(日本維新の会・吉村洋文代表)

参院選で結果を出し、その後の政局でキャスティングボートをにぎることができるのでしょうか。

【再び風を起こせるか 国民民主党】

「午前10時15分です。平日月曜日なんですけれどもJR天王寺駅前には多くの聴衆が集まっています、目の前では国民民主党代表の玉木雄一郎氏が演説を行っています。集まっている年齢層を見ると、やはり国民民主党が訴えかけている現役世代が多いなという印象があります」(MBS前田春香アナ)

選挙期間中、何度も大阪に入った国民民主党の玉木雄一郎代表。「わたしたち国民民主党が、参議院選挙で掲げているメッセージも明確です。それは改めて、みなさんの手取りを増やしたいんです」(国民民主党・玉木雄一郎代表)

国民民主党は「手取りを増やす」をスローガンに去年の衆院選で議席を大幅に増やし、躍進。今回の参院選でも、改選4議席から4倍にあたる16議席を目標にしています。

「特に私たちは、今一生懸命働いている現役世代のみなさんから豊かになろうと言っています」「日本の政治を変える夏。そして皆さんの手取りを増やす夏にしていこうではありませんか」(国民民主党・玉木雄一郎代表)

拍手がわく会場。演説を聞いた女性は「頑張っている現役世代の皆さんから豊かになろうというメッセージが一番強く心に残りました」と話しました。

一方で、衆院選で掲げた、年収「103万円の壁」を178万円に引き上げるための与党との交渉は決裂。有権者との約束はまだ果たせていません。

衆院選後には、野党第一党の立憲民主党を半年にわたって上回っていた支持率も現在はピークの半分程度に落ちました。玉木代表は演説終了後、集まった有権者1人1人と握手を交わし、若者らと写真を撮っていました。

玉木代表を前田アナウンサーが直撃取材します。

Qきょうの演説の印象はいかがでしょうか。
「平日なんですけど、(歩道橋の)上でもたくさん聞いていただいて大変な関心と期待を感じることができました」

Qどんなことを差別化して、意識して演説している?
「やっぱり現役世代を重視しているということ、そして中期の経済成長戦略を持っていること。これは他の党と比べて、我が党の特徴だと思う」

有権者の期待をもう一度集めて再び風を起こすことはできるのか?国民民主党にとって正念場の選挙です。

【党としての生き残りかける 社民党】

「ミサイルより米を、ミサイルよりも暮らしを、ミサイルより平和を」

キャッチーなフレーズを繰り返す社民党の福島みずほ党首。社民党の掲げる公約には、脱原発やジェンダー平等など、リベラル政党らしい政策がずらりと並びます。

「私は土井たか子さんが社会党委員長だったときの、1992年街頭デビュー。土井さんと一緒に神戸を、兵庫県を駆け回りました」(社民党・福島みずほ党首)

当時の社会党・土井たか子委員長は、「政治を変えようという雰囲気が動いてきた。山は動いてきた」。かつて、「マドンナ旋風」を巻き起こした社会党。1989年の参院選では野党第一党として歴史的な大勝をおさめました。その流れをくむのが社民党です。

しかし今は国会議員がわずか3人。党の存続が危ぶまれる崖っぷちに立たされています。

有権者は「なくなったらダメな政党とずっと思っています。戦争反対を掲げているのは、ずっと貫いてほしいです」と話していました。生き残りをかけた戦いに、福島みずほ党首はこう話します。

「戦争にも差別・排外主義にも反対。あらゆる差別をなくしていく、それをガンガンガン主張できる政党だと思っています」「憲法がやっぱり生かされる社会でなくちゃ、と思っているので社民党は崖っぷちですが、時代が、社会が崖っぷちだと思って頑張ります」(社民党・福島みずほ党首)

【さらなる勢力の拡大へ 日本保守党】

「私たちは日本を豊かに強く。これを旗頭に掲げて立ち上がった、日本で一番新しい国政政党です」

おととし結党した日本保守党の百田尚樹代表。日本の伝統的価値観を重視し、憲法9条の改正や、入管難民法の運用の厳格化といった外国人政策を訴えています。

去年の衆院選で初めて議席を獲得した日本保守党。今回は参議院で初めての議席を狙います。ラストサンデーに大阪・京橋で行われた演説。幅広い層の有権者が集まる中、百田代表がもっとも強く訴えたのが。

「野放図な移民政策、野放図な外国人政策を、これも根本から見直したい」「とにかく歯止めをかけないと私たちの日本の国が、私たちの国ではなくなるんですよ」(日本保守党・百田尚樹代表)

外国人政策の一方で、経済対策も。「6割ぐらいの人が生活に苦しいというそういう実感があるんでやっぱり減税というのはね、もう本当に手っ取り早く、手取りを増やす手段ですからこれを私達はまずやっていこうと思っています」

党首の街頭演説を取材したMBSの前田アナウンサーは、共通する三つのキーワードから街頭演説を振り返りました。

キーワードは「スマホ準備」「世代差」

一つ目は「スマホの準備はいいですか」という呼びかけです。演説で「皆さん、携帯を今構えてください」とか、「これをTikTokで拡散してください」とか、スタッフが「写真撮影ができます。拡散を希望します。」など書かれたプラカードを持って聴衆の間を歩くという姿も目にしました。演説が終わった後に、候補者と党首が、選挙カーの上に並んで手を取って、「ここから写真撮影の時間ですよ。」と呼び掛けて、今スマートフォンを出してくださいと、間を作る行動を積極的にやっていて、陣営側も拡散を希望しているという姿勢が見えました。

二つ目は「世代の差」です。実際に演説に行きますと、現役世代ばかりが集まる政党、一方で高齢者ばかりが集まる政党。聴衆の層が政党によって変わっていました。現役世代と高齢者がほどほど交わるような政党っていうのは、取材した中では見られなかったということです。また実際に現場に行くことで、どんな人が支持しているのかを知ることができたということです。

三つ目は「党首登場でボルテージが一段アップ」した姿です。カメラを向ける人の数も変わり、手を振って黄色い声援が飛び交うことで、党首が登場したこともわかりました。党首が演説する順番は、まず最初に候補者が演説を行って、演説の最後に、党のリーダーが話すというのが基本的な流れでした。最初に党首が演説してしまうと、それを聞いて帰ってしまう人がいるので、最後まで聞いてもらうため党首が最後に演説をするのがセオリーになっているんだなと感じました。

アイドルグループに例えると…

MBSの大八木解説委員に聞きますと、これを例えるなら「アイドルグループの新メンバーお披露目ライブのよう」だと。党首は全国ツアーのように全国を回り、人気があって、アイドルの中でリーダー的な立ち位置です。いっぽう候補者には、知名度がない方もいて、やはりリーダーの知名度を利用して、新メンバーに注目を集めよう、という構図になっています。

コンサートでは歌を歌いますが、選挙なら、「歌声は演説」「歌詞は政策」になっていて、歌声が綺麗、つまり演説が良かったら感動します。ただ、喋りがあまり…でも歌詞の中身を聞くと心に刺さる=政策を聞いて刺さる、そういったこともあります。

演説会場では党首の顔写真を切り抜いて、「推し活」という雰囲気の人もいました。また、街頭演説は素材集めの場になっていて、素材を切り取ってSNSで発信し、拡散されるということもありそうです。シリーズ第二回では、政党要件を満たす残り五つの政党(自民党、立憲民主党、公明党、れいわ新選組、共産党)の党首の街頭演説に注目して紹介します。