7月20日に投開票される参議院議員選挙で、4議席に対して19人が立候補している大阪選挙区。
関西・大阪万博の開幕、2030年秋ごろ開業予定のIR=統合型リゾートについて各候補者はどのように考えているのか、MBSでは独自アンケートを実施しました。また、地元の人たちはどのように考えているのか?MBS行政キャップ・森亮介記者とMBS大八木友之解説委員の見解を含めてまとめました。
万博閉幕後の大阪経済に府民から「厳しい意見」も
開幕から約3か月が過ぎ、折り返し地点を迎えた大阪・関西万博ですが、盛り上がりは日に日に高まっています。
博覧会協会によりますと、チケットの販売状況は7月11日時点で約1600万枚。赤字になるかならないかの「損益分岐点」となる1840万枚も射程圏内に入り、黒字化が現実味を帯び始めています。
万博ブームの影響は周辺の地域にも。
(グランドプリンスホテル大阪ベイ 大崎誓也総支配人)「エクストラベッドを導入したことによって、1室あたりの宿泊人数を増やした。(宿泊者は1日)150人ぐらい増えている」
夢洲駅から1駅のこのホテルは、万博の開幕に合わせてほとんどの部屋を改装したといいます。
(グランドプリンスホテル大阪ベイ 大崎誓也総支配人)「(万博が開幕した)4月13日以降、徐々に右肩上がりになっていて、ゴールデンウィークぐらいからはほとんど残室がないような状況」
「万博特需」とも言える状況ですが、府民に「万博閉幕後の大阪」について聞くと…。
(府民 60代)「そこまで期待していないです。賃金も上がってないから」
(府民 80代)「またもとに戻るんちゃいますか。景気がものすごく上がることはない。シビアですよ」
聞こえきたのは「万博閉幕後の大阪に期待できない」という声でした。
「大阪の未来」とは。その象徴として語られることが多いのが、海に囲まれ、高級感漂うホテルや迫力ある噴水が目を引く非日常的な空間、IR=統合型リゾート施設です。万博会場のすぐ隣に位置し、2030年秋ごろ開業する予定です。
いま、現場はどうなっているのでしょうか。取材班が7月7日、大屋根リングの上から見てみると、甲子園球場約13個分の広大な敷地で工事が進められていました。カジノやホテル、国際会議場などが建設され、経済効果は年間で約1兆1400億円にものぼるといいます。
一方、IRをめぐっては長年、激しく賛否が分かれてきました。
2018年6月、IR整備法案が賛成多数で可決した際の衆議院の内閣委員会ではもみ合いが起きていました。ギャンブル依存症や治安の悪化などを懸念した野党が抵抗するなか、進めたのは自公と維新でした。
あれから7年、今年6月に開かれたIRに関する府民向けの説明会で目立ったのは「カジノ反対」の声でした。
(府民)「カジノを大阪に作らない。これが依存症対策にとって最も大切だと思う」
(大阪府市IR推進局 職員)「大阪の経済成長のためにIRは進めていく。懸念事項はあるが、万全の体制を講じながらしっかり進め、大阪の成長を目指したい」
IRについて町で聞いてみました。
(府民 30代)「もともと何もない土地なのでちょっとでも有効活用できればなと」
(府民 30代)「カジノをするために海外へ行く友人もいる。それが日本にできるのは良いと思う」
IRに期待する企業も。こちらの会社は身寄りのない高齢者の保証人になる事業を展開していますが、いま日本に住む外国人からの依頼も急増し、事業が伸びているといいます。取材した日も外国籍の男性が身元保証の依頼で訪れていました。
(あかり保証 清水勇希社長)「今から就職されるんですよね?そのときの保証人を求めておられると」
(外国籍の男性)「そうです」
(あかり保証 清水勇希社長)「頼れる家族は日本に?」
(外国籍の男性)「いないです」
社長は今後、こうしたニーズが高まるのではないかと見ています。
(あかり保証 清水勇希社長)「IRは賛否あると思うんですが、外国人が増えて、大阪が盛り上がっていく、そして我々にとっても助けられる人が増えるという意味ではビジネスチャンスとしては捉えています」
万博やIRに候補者はどんな訴え?
開幕中の大阪・関西万博や2030年秋ごろ開業予定のIRに、府民からは「万博後の景気は期待できない」「夢洲駅が開通したことは期待」「万博後の夢洲の有効活用になっている」「IRには賛成ではない」などさまざまな意見がありました。
MBS大八木友之解説委員は「IRは万博終了の5年後に開業を控えていて、”大阪の未来”がかかってる計画のため行く末はかなり注目」としています。
7月20日投開票の参議院選挙で、大阪選挙区は4議席に対して19人が立候補する激戦区です。万博とIRが大きなテーマとなっていますが、参院選での動きについて大八木解説委員は次のように解説しています。
(大八木友之解説委員)「参院選の選挙戦、不思議なほど候補者から万博やIRという話題は出ていません。特に維新が開催および誘致も主導してきた面があるため、実績として万博のことを吉村代表(大阪府知事・日本維新の会代表)も触れるのかなと思いきや、街頭演説でも語っていません。党としての政策の1つ『社会保険料』の話題をした最後に『大阪で万博もやっているので、来てない方はまた来てください』ぐらいの触れ方しかしていない」
「維新の議員に話を聞くと、『万博自体を政治利用や選挙利用するのは良くない、控えていこう』もしくは『ある程度万博にはマイナスのイメージもあるので選挙ではあまり口にしない、万博のロゴの入ったTシャツなどは着ないようにしよう』といった話もあるようです」
取材をしたMBS行政キャップの森亮介記者は次のように話します。
(森亮介記者)「IRの開業は2030年秋でかなり先のため、まずは目の前の物価高対策などが話の中心にあるのかなと思います。ただ、今回当選した候補者の任期は2031年までなので、IRの開業の時期をまたぐというところで、当選した場合にはIRの進め方などに関わることもあると考えられます」
【候補者にアンケート】Q大阪・関西万博は何点?
MBSは大阪選挙区の候補者に独自アンケートを実施。万博・IRについての各候補者の考えを見ていきます。1つ目の質問は「大阪・関西万博は何点?」。各候補者の回答は以下です。
【自民・柳本 顕氏】現状で点数化困難
【公明・杉 久武氏】80点
【立憲・橋口 玲氏】70点
【維新・岡崎 太氏】100点
【維新・佐々木 理江氏】80点
【共産・清水 忠史氏】ー100点
【国民・渡邉 莉央氏】85点
【れいわ・椛田 健吾氏】0点
【参政・宮出 千慧氏】50点
【保守・正木 真希氏】20点
【N党・武内 隆氏】60点
【みらい・平 理沙子氏】80点
【無・東 修平氏】現時点は採点不能
【無・世良 公則氏】75点
【諸派・稲垣 秀哉氏】0点
【諸派・橋口 和矢氏】0点
【諸派・上妻 敬二氏】60点
【諸派・吉野 純子氏】0点
【諸派・瀬戸 弘幸氏】未回答
アンケートの結果についてMBS行政キャップの森亮介記者は以下のように分析しています。
(森亮介記者)「万博の誘致を主導した維新から立候補している岡崎氏は満点。佐々木氏も評価をしたうえで運営面でもう少しスムーズにできる余地があったのではというところで80点と評価しています。一方、万博終了後も含めて中長期的に見て評価すべきという声も聞かれ、例えば自民の柳本氏、無所属の東氏は現時点で採点できないとしています。点数は入れていますが、立憲の橋口氏もそのようなコメントをしています。また国民の渡邉氏は閉幕後の土地の活用についても言及していました」
【候補者にアンケート】Q2030年開業IRは大阪の発展に必要?
続いて、候補者に「2030年開業IRは大阪の発展に必要?」と質問。その回答は以下です。
※YES or NOで回答
【自民・柳本氏】△
【公明・杉氏】YES 条件付き
【立憲・橋口氏】YES カジノは疑問
【維新・岡崎氏】YES
【維新・佐々木氏】YES
【共産・清水氏】NO
【国民・渡邉氏】YES カジノは反対
【れいわ・椛田氏】NO
【参政・宮出氏】NO
【保守・正木氏】NO
【N党・武内氏】YES 条件付き
【みらい・平氏】YES
【無・東氏】YES 条件付き
【無・世良氏】NO
【諸派・稲垣氏】NO
【諸派・橋口氏】NO
【諸派・上妻氏】NO
【諸派・吉野氏】NO
【諸派・瀬戸氏】未回答
▼「YES」の候補者
【公明・杉氏】ギャンブル依存などの対策は必要
【立憲・橋口氏】カジノありきは疑問
【維新・岡崎氏】雇用や観光、税収期待
【維新・佐々木氏】税収増で住民サービス向上
【国民・渡邉氏】課題多い カジノは反対
【N党・武内氏】社会的リスクの対応不可欠
【みらい・平氏】収益を使い長期的な成長を実現
【無・東氏】負の側面が最小になるよう追求を
▼「NO」の候補者
【共産・清水氏】経済効果より社会的マイナス
【れいわ・椛田氏】地元経済が衰退の可能性
【参政・宮出氏】持続的な経済成長に寄与するか疑問
【保守・正木氏】求めるべきは観光による発展ではない
【無・世良氏】地元への悪影響の予測立たず
【諸派・稲垣氏】資金洗浄など犯罪の温床になる
【諸派・橋口氏】軟弱な地盤で防災は?
【諸派・上妻氏】お金が外国資本に流れる
【諸派・吉野氏】先進国でIRで収益をあげている国ない
▼「△」の候補者
【自民・柳本氏】必ずしも必要ではない 一方で方向性追求の必要
アンケート結果を受けて森記者と大八木解説委員は以下のように分析しています。
(森亮介記者)「条件付きYESの回答者も含めると、19人中8人が必要だと回答しました。ギャンブル依存症対策を厳格にすることが条件だというような意見が多数ありました。一方で『不要』と回答した候補者も9人で賛否が分かれています。IRが不要と回答した候補者は「ギャンブル依存症」「治安悪化の懸念」「経済効果を上回る負の側面」があると指摘していて、これからどのように府民の不安を解消していくのかが注目されます」
(大八木友之解説委員)「IRは良くてもカジノはダメと回答した候補者に問いたいのは、IRの収益の8割はカジノという構想なんですよね。そういう意味ではカジノがないと難しくなってくる。すでに大阪府市も一定の投資をしていて、カジノをやめた場合、どういう方法で地元にお金が入るか、投資した分を回収するのかという問題はあります」
「また、IRを推進したい人にとっても、日本のIRは世界に比べると後発であり、カジノ自体の経営状態も世界的に苦しい側面もあるため、失敗した場合はどうするのかという話も聞きたいところです」
改選議席数4 大阪選挙区 中盤情勢
7月20日投開票の参院選をめぐり、JNNでは7月12日と13日にインターネット調査を行い、取材を加味して中盤の情勢を分析しました。
改選数4の大阪選挙区には総勢19人が立候補していて、維新・新人の佐々木氏がリードしています。
佐々木氏に、▽公明・現職の杉氏 ▽参政・新人の宮出氏 ▽維新・新人の岡崎氏 ▽自民・新人の柳本氏 ▽国民・新人の渡邉氏 の5人が横一線で続いています。
大阪選挙区では、2019年の参院選では維新2議席、公明・自民が1議席ずつ。2022年も維新2議席、自民・公明が1議席ずつ獲得しています。
ただ今回の調査では、3割以上の人が「まだ投票先を決めていない」と答えていて、情勢が今後大きく変わる可能性があります。