(画像:ウィル・ゲニア選手)
三重ホンダヒートとのラグビーリーグワン、ディヴィジョン1・ディヴィジョン2の入替戦第1戦。ホーム花園ラグビー場でまさかの逆転負けを喫した後、花園近鉄ライナーズのゲームキャプテンを務めたSHウィル・ゲニア選手は、こう答えた。
「相手に対してリスペクトを欠く言葉になるかもしれないが、我々の方が絶対に強い。(次の試合も含めてトータルで)勝てると信じている」
最後の最後、レフリーとの呼吸が合わず自分たちのミスから逆転を許したものの、79分までリードしていた試合内容に確かな手ごたえを感じていたからだ。
試合は花園近鉄ライナーズのペースだったが…
(画像:クエイド・クーパー選手)
実際に試合は、終始ライナーズのペース。
ときおり突風が吹き荒れる難しいコンディションの中、前半からスクラムをコントロールして優位に立つと、前半のうちに2つのトライを奪って15対7とリード。後半も三重ホンダヒートが、推進力のある選手を中心に懸命な反撃を試みる中、後半25分にWTB木村朋也選手のトライで突き放すと、32分には強風の中SOクエイド・クーパー選手が見事なコントロールで確実にPGを決めてリードを保ったまま勝利まであと一歩までこぎつけた。
しかし、最後の最後、マイボールのスクラムからボールを出してけりだせば試合終了という場面で、スクラムがくずれてまさかのペナルティー。そのまま、自陣の深くまで押し込まれて逆転のトライを許した。
それでも、ゲニア選手をはじめ選手たちは前を向き顔をあげる。
「アタックは、十分に通用する。自分たちのミスやペナルティーからエリア深くまで攻め込まれた場合は、(相手に)得点を許してしまったが、相手の攻撃に脅威を感じることはほとんどなかった」
終盤、中央付近で懸命なアタックを繰り出す三重ホンダヒートの波状攻撃をしっかりと抑えたディフェンスに、手ごたえを感じていたからだ。さらには、今のチーム全体の雰囲気が確かな自信を選手たちに与えている。
「最初は、うまくいかない部分も大きかったが、試合を重ねるごとにチームとしての連携が深まって絆が強くなってきた。チームは、ここにきて本当にポジティブな、いいムードの中で練習ができている」
選手17人の退団発表「このメンバーで最後の試合。だからこそ絶対に勝ちたい」
(画像:木村朋也選手)
昨シーズンの入替戦に敗れてディヴィジョン2での捲土重来を期した今シーズン。
ところが、最初の3戦で1勝もできないよもやのスタート。それでも、負ければディヴィジョン1への復帰が閉ざされる苦しい状況から、ライバルを圧倒して7連勝でレギュラーシーズンをフィニッシュ、三重ホンダヒートとの入替戦出場に漕ぎつけた。
そのライナーズが、レギュラーシーズンが終了した5月12日。復調の原動力となった百戦錬磨の元オーストラリア代表コンビ、SHウィル・ゲニア選手、SOクエイド・クーパー選手、このレジェンド2人を含む大量17人の選手の今シーズン限りでの退団を発表した。それでも、選手たちに悲壮感やネガティブな雰囲気はない。
そんな選手たちの気持ちを、この日、久しぶりにスタメン出場して技ありのトライを奪ったWTB木村選手が代弁する。
「みんなこのチームが大好き。次の試合は、このメンバーでできる最後の試合。だからこそ絶対に勝ちたいと思っている」
2019年のトップチャレンジリーグで戦っていた時代からチームに加入して、長年チームを支えてきた、ゲニア選手、クーパー選手の2人が常に口にしていたのは「チームを信じること、チームメイトを信じること」。第1戦のビハインドは4点。5点差以上の勝利を掴めば、待望のディヴィジョン1復帰が決定する。
長い年月をかけて、2人がチームに文化として植え付けてきたチームメイトを信じる気持ち、ライナーズの魂が結実するのか。
決戦は5月30日(金)、午後7時から敵地・三重交通Gスポーツの杜鈴鹿サッカー・ラグビー場で行われる。