各府県の予選を勝ち抜いた8校が参加する、春季近畿地区高等学校野球大会。5月24日から奈良県のさとやくスタジアム(県立橿原球場)で1回戦4試合が行われ、25日には大阪桐蔭(大阪)と東洋大姫路(兵庫)の強豪同士が激突しました。
智弁和歌山(和歌山)と滋賀学園(滋賀)が盤石の強さで1回戦を突破した翌日、西谷浩一監督が「センバツに出場できなかった悔しさをバネに、チーム力を底上げしてきた」と話した大阪桐蔭。降りしきる雨の中、秋の近畿大会王者に挑んだ注目の対決に満員の観衆が詰めかけ、立ち見の観戦客も見られました。
「小さい体でも振り負けないように」観客の度肝抜く先制2ラン
先制したのは東洋大姫路でした。1回裏、3番・高畑知季選手が、大阪桐蔭の先発・中野大虎投手から左中間スタンドに飛び込む先制の2ランホームラン。「小さい体でも、振り負けないように、ウェイトトレーニングを取り入れてしっかりと体を鍛え上げてきた」と話した高畑選手。コンパクトながら鋭く振り抜く体のバネを生かした強烈なスイングで、いきなり観客の度肝を抜きました。
さらに3回、先頭の1番・渡邊拓雲選手が、右中間へ2ベースヒットを放つと、外野手のボール処理がもたついている間にすかさず3塁を陥れます。このチャンスに2番・木本琉惺選手が追い込まれながらも、しぶとくライトへ犠牲フライ。大阪桐蔭のミスを見逃さず、序盤で3点のリードを奪いました。
東洋大姫路の先発は、この春背番号「1」をつけて、堂々たるピッチングを披露している木下鷹大投手。3回まで力のあるストレートを軸に、ストライク先行の安定感抜群の投球で、強力な大阪桐蔭打線につけ入るスキを与えません。
流れをつかんだ大阪桐蔭はピンチヒッターを投入…しかし打球はレフト正面に
それでも、さすがは全国の有望選手が集まった大阪桐蔭。各バッターが打席を重ねるごとに木下投手の投球に対応していきます。そして5回表、2アウト3塁のチャンスをつくると、1番・宮本楽久選手がレフト線へタイムリー2ベースヒット。さらに2番・中西佳虎選手が三遊間へしぶとく転がします。この当たりが内野安打となり、ファーストへの送球が乱れる間に宮本選手がホームイン。3対2と1点差に詰め寄りました。
1点差となって、俄然試合の流れは大阪桐蔭へ。6回表には2アウト1・2塁と、再びチャンスをつくります。この場面で西谷監督は、ピンチヒッターの藤田拓志選手を投入。ここぞとばかりに勝負に出ます。しかし、藤田選手の打球は、レフト正面への強烈なライナーとなって3アウトチェンジ。完璧にとらえた打球でしたが、ここは木下投手の気迫が勝りました。
素早いフィールディング!ビッグプレーでピンチ断ち切る
ピンチをしのいだ東洋大姫路。その裏、先頭の5番・見村昊成選手が右中間への2ベースヒットを放ち、大阪桐蔭を突き放す絶好のチャンスをつくります。そして、続く6番・白鳥翔哉真選手が3塁側への送りバント。
しかし、猛然とダッシュしてきた中野投手が、素早いフィールディングで打球を処理し、3塁タッチアウトとなります。「ホームランは仕方ない。ヒットを積み重ねられても、途中からはとにかく点をやらない投球、チームに流れを呼び込む投球を心掛けていた」と話した中野投手。思わずガッツポーズが出るほどのビッグプレーでピンチを断ち切ったかに見えました。
全国の舞台を経験してきた底力…傾きかけた流れを引き戻す
しかし、ここから、全国の舞台を経験してきた東洋大姫路が底力を発揮します。2アウトから8番・桒原大礼選手のレフト前ヒットで1・2塁と再びチャンスをつくると、9番・木下投手が、追い込まれながらも変化球を上手く拾ってライト線へのタイムリー2ベースヒット。「相手は9番バッターで投手。ここで抑えると思って勝負を急いでしまった。ボール球を使える場面だったが、(バットが届く範囲に投げて)うまく拾い上げられてしまった」と振り返った中野投手。この一打が勝負の分かれ目となりました。
さらに1番・渡邊選手が初球を叩いてライトオーバーの2点タイムリー2ベースヒット。この回一挙3点を奪って6対2。東洋大姫路が相手に傾きかけていた試合の流れを完全に引き戻しました。
こうなると、東洋大姫路の勢いは止まりません。木下投手が「終盤にきてボールの勢いは落ちていたが、とにかく丁寧に低めに投げていくことを心掛けた」というピッチングで、ランナーを出しながらも7回・8回の大阪桐蔭の反撃をゼロで抑えると、中野投手に代わって登板した大阪桐蔭の2枚看板の1人、森陽樹投手を攻め立てます。7回に1点を加え、さらに8回にも1アウト2・3塁のチャンスで、高畑選手が6球目をレフト線へ目の覚めるような一打を放ち9対2として、勝負を決めました。
「このまま夏に突入すると危ない」更なる奮起を促した岡田監督
終わってみれば、東洋大姫路が8回で7点差をつけて9対2のコールド勝ち。準決勝進出を決めました。大阪桐蔭の森投手は「今まで対戦したチームの中で一番振りが鋭かった。8回の最後の場面も、(自分としては)悪い球ではなかったが、(自分の)力の無さを思い知らされた」とコメントしています。
試合後、「(全国で勝つには)攻守ともに自分たちの力が足りないことを教えていただいた」と振り返った大阪桐蔭・西谷監督。一方、「(コールドで)勝てたのはよかったが、これで大丈夫だと選手達が思うのが一番怖い。まだまだバントで進める場面、守備の部分でしっかりとした野球ができていない。このまま夏に突入すると危ない」と選手たちに、更なる奮起を促した東洋大姫路・岡田龍生監督。両監督の夏への決意とともに、注目の対決は幕を閉じました。
岡田監督の言葉をうけた渡邊拓雲主将が「守備、走塁、バント、攻守ともにきちんとした野球を進めていくのが僕たちの野球。チームとして、(この勝利を)過信せずにチャレンジャーとして挑んでいきたい」と話した東洋大姫路。さらなる高みを目指してこの後の戦いに臨みます。
春季近畿地区高等学校野球大会 1回戦結果
1回戦、4試合の結果は以下のとおり。5月31日に勝ち上がった4校による準決勝が行われ、翌日の6月1日に、春の近畿大会王者が決定します。
<1回戦結果>
智弁和歌山(和歌山)7―3 天理(奈良)
滋賀学園(滋賀) 8―2 奈良(奈良)
奈良大付(奈良) 8―1 京都共栄(京都)※8回コールド
東洋大姫路(兵庫) 9―2 大阪桐蔭(大阪)※8回コールド
<準決勝組合せ>(5月31日)
智弁和歌山 対 滋賀学園 午前10時~
奈良大付 対 東洋大姫路 午後0時30分~