東京・江戸川区の住宅で男性(63)を刃物で殺害したとして逮捕された中学校教諭の尾本幸祐容疑者(36)。その後の捜査でギャンブルで数百万円の借金を抱えていたことが明らかに。この借金が犯行動機にかかわっていた疑いが出てきていますが、犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は「FXなどの投資で失敗したと聞いている」としたうえで「ギャンブルの借金を投資で穴埋めしようとして、また失敗してギャンブルで取り戻そうとしていたのではないか」とみています。ギャンブルと投資で泥沼の借金状態にあったのではないかという構図を話します。(2023年5月11日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

◎小川泰平氏(元神奈川県警刑事 30年の勤務経験 第一線で数々の事件を解決 豊富な経験と元捜査員のカンをもとに現代の事件の背景や見立て<スジ読み>を展開)

まずは山岸さんの自宅の鑑識捜査に注目。容疑者が土足で侵入していれば、新しい<土足痕>があるはず

---現場から犯罪ジャーナリストの小川泰平さん。そしてMBSの尾藤記者が解説します。

(MBS尾藤貴裕記者)私たちは今、殺害された山岸正史さんの自宅前にいます。この辺りは非常に閑静な住宅街で、ここに来るまでも非常に細くて狭い道で、車通りはほとんどないようなエリアです。普段は多分、地元の方が行き交うような場所ですが、事件を受けて取材の記者やカメラクルーが周辺で取材をしているという様子が見受けられました。小川さん、事件現場歩かれてみてどのような印象を持たれますか?

(小川泰平氏)旧来からの住宅街ですね。中学校からここまで直線で150m、歩いて200mぐらいの4分ぐらいで学校まで行けます。学校の前が大通りになっていてそこからちょっと入ったところですね。この通り沿いを回ってみたら、防犯カメラが複数ありました。ただ防犯カメラのお宅が不在だったのでいつ設置したかはわからなかったのですが、例えば2月の事件後につけたものか、その前からかはわからないんですけども、防犯カメラがあるので、当然、警視庁は防犯カメラを精査しているということは言えると思います。

(MBS尾藤貴裕記者)逮捕された尾本容疑者の勤務先の中学校から事件現場まで直線距離でおよそ150m歩いて4分、5分で非常に近いのですが、この距離感から何か読み取れるものというのはありますか?
(小川泰平氏)これからの捜査で非常に重要なところだと思います。容疑者と被害者との関係性ですね。今回、自宅に泥棒に侵入したあとに帰宅した被害者と出くわして犯行に及んだのではないかというふうに言われていますが、例えば泥棒に入るにしても、山口さん宅をわざわざ狙う必要はないわけですね。また、任意の取り調べでも「行ったことはある」と話しているということで、顔見知りだったんだろうとってことはわかりますが、どういう関係だったのかっていうのは容疑者自身が現在も否認、その後黙秘に転じているので、詳細は今のところわかっていないということになります。
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---事件が起きたのは2月24日、学校は定期考査でした。尾本容疑者は事前に休暇を申請して、午後半休を取っていました。午後5時半ごろに現場から1キロほどの防犯カメラに容疑者の姿が映っています。午後6時半ごろ、山岸正史さんが自宅で顔などを刃物で刺され死亡、同居する山岸さんの母も母親も刃物で切りつけられたということです。その後も容疑者は教諭として勤務し、逮捕前日の5月9日まで放課後まで勤務していたことがわかっています。逮捕の1ヶ月ほど前から捜査員とみられる人物が近所を聞き込みしていたという情報も入っていて、5月10日に逮捕という流れです。事件が2月24日、逮捕が5月10日。約この間、2ヶ月半ほどありますが、この間どんな捜査が行われていたのか?どうして2ヶ月半がかかったのでしょうか?

(小川泰平氏)まず防犯カメラの捜査は当然やっていると思います。あとは被害者宅に土足で入っていれば足跡ですね。あとは指紋などの鑑定。今回容疑者に借金があったんじゃないかという話ですので、借金が犯行後どのように変わっていったのかを慎重に捜査をした結果、容疑者と特定し、逮捕状を請求し、本人を逮捕したという流れだったと思います。今、現在警察の発表だけを見ると、何か一つ大きな、自宅から出てくるところを防犯カメラに捉えているとか、出てくるところを誰かに見られているとかっていうのではなくて、この付近をこの容疑者が実際に通行している。通っていた。あと借金の関係とか。ただ自宅には過去に行ったことがあるというので、自宅の中から足跡とか、指紋が出たからといって一概には本人だとは言えない可能性があります。ただ足跡は、「土足痕」については、自宅で生活していると、部屋の中掃除しますから、にもかかわらず新しい足跡があったってことは、犯行日に侵入したと言えるのではないかと思います。

小川泰平氏のスジ読み「投資で失敗し、穴埋めでギャンブル。またギャンブル負けて借金繰り返す...」

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---では尾本容疑者ってどんな人物だったのか。昨日勤務先の中学校が会見しました。特別支援学級の主任だったこと。普段は明朗快活で、誰とでも穏やかに会話をする。お金に困った様子もなかったということが話されました。一方で捜査関係者によると、尾本容疑者は事件当時、ギャンブルなどで数百万円の借金を抱えていたという情報も入っています。お金に困った様子はなかったということですが、調べれば数百万円の借金というところで、人物像はどうみていますか?

(小川泰平氏)逆に借金があるからこそ、同僚とか周りのものには「借金がない」。逆にギャンブルやっても「ギャンブルで儲かった」とか、そういう話をし、まさかギャンブルで負けて借金がかさんでいるというふうには周りに思わせない、素振りを見せない状況だったのではないかな。また捜査関係者の話によると、ギャンブル以外にも以前は投資をやっていたと。FX等ですね。そういう投資をやっていて投資で失敗をしたという話も聞いてます。私の推測ですが、投資で失敗し、その穴埋めにギャンブルをする。またギャンブルで負けて、借金を繰り返し、またギャンブルで取り返そうとしたのではないかなというふうに思っています。

---では容疑者と被害者接点はあったんでしょうか。逮捕前の事情聴取で容疑者は、学校から駅に向かう途中、山岸さんから荷物を運ぶのを手伝ってほしいと言われ、家に入ったことがあるという趣旨の説明をしたといいます。容疑の認否については、逮捕時は容疑を否認していたものの、現在は黙秘をしているということです。逮捕前の事情聴取で荷物を運ぶのを手伝ってほしいと言われ、家に入ったことがあるというふうに話してますが、この供述をどうみてますか?

(小川泰平氏)実際に荷物を運ぶのを手伝ってくれと話があって入ったかどうかは、わかりませんが、やはりなにがしかで家に入ったことがあるんだろうと思います。家に入ってタンス預金とか、そういったものがあるのを知って、山岸さん宅に入ればこれだけのお金を置いてあるというのを知って、それを狙った犯行だろうというふうには思っています。

---現在は黙秘を続けているということですが、今後の捜査のポイントを教えてください。(小川泰平氏)お金の流れも大事ですが、本人が黙秘しているので簡単に動機はわからないかもわかりませんが、犯行後にお金がどのようになっているか。急にお金を返済したとか。あとは、現場での鑑識活動により、新しい足跡があったとか指紋があったとか。あとは被害者と容疑者との関係性を一つ一つ慎重に捜査が進められていくんだろうというふうに思っています。