【小川泰平氏の事件スジ読み】ガーシー前議員に逮捕状--国会への欠席を続け、懲罰処分の「議場での陳謝」にも応じず、参議院で除名処分となったガーシー前議員に対し、今度は警視庁が逮捕状を請求。容疑は、インターネット上で著名人などを脅迫したり、名誉を傷つけたりした「常習的脅迫」「威力業務妨害」の疑いです。ここへきてなぜ逮捕状なのか?犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は「逮捕には煩雑な手続きが必要な国会議員でなくなったため、警察が動いたのだろう」と話します。今後はUAEにいるガーシー容疑者のパスポートを無効化して不法滞在の状態にするのではといいますが、抜け道はいくつかあるというのです。(2023年3月16日MBSテレビ「よんチャンTV」より)

逮捕状がでてもすぐに執行できない。UAEアラブ首長国連邦と日本との間には犯罪人引渡条約がない

―――警視庁は常習的脅迫や威力業務妨害などの疑いでガーシー容疑者の逮捕状を取得しました。この後すぐに容疑者逮捕ということになるのでしょうか?

小川泰平氏: そうですね、例えば日本にガーシー前議員がいるなら逮捕状を執行して逮捕という流れになりますが、国外にガーシー容疑者がいる関係で、いくら日本の犯罪で、日本の裁判所の逮捕状があったとしても、国外では逮捕状を執行することはできません。日本に戻ってこなければ執行できないですから。直ちに逮捕するということにはいかないわけですね。

―――常習的脅迫、そして威力業務妨害などの疑い、わかりやすく言うとどういう容疑でしょうか。

 常習的脅迫っていうのは、通常は暴力団・反社に適用される犯罪なのですが、要は複数脅迫、それを連続してっていうようなことですね。通常の脅迫よりは重い3ヶ月以上5年以下の懲役というふうなちょっと重い罪になっています。威力業務妨害というのは、SNS等で、業務を妨害するような発信をしたっていったようなことが考えられるのではないかなと思いますね。

―――園田さんは弁護士の立場でどう見ていますか。

園田由佳弁護士: 常習的脅迫は基本的に暴力団とかそういうところを想定して作られているものでして、SNSだとかYouTubeとかそういったところで、予定していなかった人がその対象に上がったのだなというところに少し興味深さを感じてます。

―――どうしてこのタイミングで逮捕状取得となったのか?

小川泰平氏: これまでは国会議員に対して逮捕状を取る場合はまず警察が裁判所に逮捕状を請求する。その逮捕状の請求の資料等が有効で逮捕状を発付するに値するとなっても、すぐには逮捕状は発付されず、まず内閣に、逮捕許諾請求書というのを提出し、内閣から国会が許諾するか拒否するかを決めるという、非常に煩雑な手続きがあったわけです。ただ、今回国会議員ではなくなり、一般人となったので、普通に裁判所に逮捕状を請求し、2時間余りで逮捕状が発付されるという流れになったのですが、それでは、国外にいるものを簡単に逮捕することはできない。

―――ガーシー容疑者が滞在するドバイがある、UAE(アラブ首長国連邦)と日本との間には犯罪人引渡条約がありません。海外にいるガーシー容疑者に対して、どんな手続きが進められていきそうですか?

 犯罪人引き渡し条約がないのでね、あの最近でわかりやすいのは「ルフィのグループ」のケース、フィリピンで身柄を拘束され、日本に強制送還されました。犯罪に向けた条約がない国の身柄を、いくら日本人とはいえもらえることはできません。なので、UAEで何らかの罪で身柄を拘束してもらうしかないんですね。何らかの罪でっていうことになると一番簡単に考えられるのは不法滞在で逮捕してもらう。では、不法滞在になるにはどうすればいいのかってなると、「旅券返納命令」という話が出てくるわけです。

―――流れを見ていきます。逮捕状が出されると、外務省は旅券返納命令というものを出すことが可能になります。そうすると大使館職員がガーシー容疑者に接触して「返納をしなさいよ」と促すことができる。そして大使館職員が本人と会えなかった場合も方法があって、外務大臣名義で旅券返納命令が出ていることを官報に掲載いたします。

―――ガーシー容疑者は今UAEにいます。在UAE日本大使館の掲示板に官報を提示かインターネットでもこの官報が見られるようになっています。こういった状態で掲載して20日+アルファ、ある程度の期間掲載したら、本人に到達したものとみなして、パスポート旅券はその時点で失効いたします。そうするとUAEの法律で不法滞在となりますので、日本に強制送還をするということになるのでは。「パスポートが失効したら即、不法滞在になるのですか」ということをUAEの日本大使館に確認してみたんですけども、パスポートが失効していてもビザが有効な間は即不法滞在とはならないと考えられるという返事でした。

小川泰平氏: 不法滞在の状態になってもですね、この身柄を逮捕するかどうかっていうのは、今回でいうとUAEの判断です。簡単に言うと日本にもですね不法滞在者ってたくさんいるわけですよ。それを全員捕まえてるってことはまずないので、その国に迷惑をかけてない。また、国のために何かをしているような場合があれば、直ちに不法滞在、即逮捕ということではない。あとはね日本の警察とUAEの警察の関係、また日本の国とUAEの政府間の関係、まあ力関係というんですかね、そういったところが影響してくる面は結構あります。

旅券が失効しても国籍を買ったり、二重国籍を取ったりできる国もある

―――このガーシー容疑者を擁立した、今では「政治家女子48党」という名前になりましたが、立花孝志氏が、ガーシー容疑者の逮捕状請求を受けた後の動画配信で「ガーシーは、旅券返納命令に関してもなんらかの準備をしているのではないか」という発言をしています。

 通常は、旅券が失効してれば、他の国へ出国することはできません。本来はまだ旅券返納命令が出る前に出ることができます。中東の国のことはあまり詳しくないんですが、例えば中南米とかに行くと、簡単に国籍が「買えたり」、永住権に関しても、ある程度の投資で買えたりする国も実際はあります。また二重国籍という手もなくはないんです。そうなると日本に必ずしも強制送還されるとは限らない。ただそういった場合は日本には永遠に帰ってこられないですけどね、そういった方法もウルトラC的になくはないのかなというふうに思います。