高齢者を狙う悪徳訪問販売の実態。9月4日、大阪府警は火災報知器をめぐってウソの内容で作業をしたとして兄弟を詐欺などの疑いで逮捕した。MBS取材班は逮捕前にこの容疑者を直撃取材、カメラの前で容疑者が語ったこととは。そして訪問販売を受けた高齢の被害者らが証言するその手口とは。

火災報知器めぐり逮捕された兄弟ら5人

 9月4日、詐欺などの疑いで逮捕された大阪市中央区の野崎永遠容疑者(25)と弟の野崎宇宙容疑者(24)ら計5人。警察によると、野崎容疑者らは今年1月、訪問販売で火災報知器の電池交換の業務を勧誘する際、新品だと偽り、中古電池に交換するなどの手口で、男女4人(30代~80代)から現金合計2万円をだまし取った疑いが持たれている。

 高齢者を狙って火災報知器の交換を執拗に売り込んでいたとみられ、去年8月~今年5月で、顧客はのべ約1500人、売上は3500万円に上るということだ。その手口とはどういうものだったのか。

訪問販売を受けた高齢者の証言

 大阪市平野区に住む浜口一三さん(71)。去年11月、自宅に1人でいたところ、突然制服姿の男が訪ねてきて「火災報知器の点検に来た」と話したという。

 (浜口一三さん)「向こうは一方的に、よそでも付けてきました、だから付けた方がいいですよと。消防法にも引っかかりますよとか。だから替えておいた方がいいですよ、期限が切れてますんで、と」
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 消防法では全ての住宅で火災報知器の設置を義務付けている。ただ、守っていなくても罰則などはない。ところが男は「火災報知器の期限が切れていて、消防法に違反するため、交換しておいたほうがいい」と強引に契約を迫ったという。

 (浜口一三さん)「金額はどのくらいですかと言ったら、1万円です、と言われました。1万円くらいならええかなと思って承知しました」

 しかし、その後に帰宅した同居する真砂子さんが、費用が相場と比べて高いと契約の解除を申し出た。

 (浜口真砂子さん)「いつもよくしてもらっている電気屋さんがいるから、その人に付けてもらうから、もういいですって断ったんです。でもお父さんが契約してるからって。だからどうかこうかっておっしゃって。最後はどうしても付けないとあかんみたいなことをおっしゃっていました」

 法律では訪問販売での契約は一定期間は無条件で解除ができると定められている。しかし男は「解除はできない」とウソの説明をして火災報知器の交換を強行した。

この日この集合住宅で『15軒が契約』

 浜口さんの家で火災報知器が交換された日、この集合住宅では他に14軒が契約を結んだ。契約した別の住人も当時の状況を次のように証言する。

 (Aさん)「トントンたたいて入ってきて、あれ(火災報知器)を替えに来ましたからと言って。替えなければ罰金ありますよって言われて。あのままほったらかしていたら10万円くらい取られますよって言われて」
 (Bさん)「何もせずに放っておいたら刑法に触れるんで警察に捕まりますよって言われた。しゃあない、捕まるって言われたら」

 執拗な売り込みを不審に思ったBさんは、他の住民らと相談し、警察を呼んだ。するとしばらくして現場責任者を名乗る弟の野崎宇宙容疑者が姿を現したという。

 (野崎宇宙容疑者と直接話した住人)「僕が集会所の前で1時間くらい言い合いをして、払う払わないで。クーリングオフのことも言ったけど対応しないと言われて。せめて9割返金でも、今日で全て終わってみんなゆっくりできるのであれば、そういうふうに話をしましょうかというのを提案しますって言って出しました」
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 支払った金額の1割を手数料として渡すことで返金に応じた野崎宇宙容疑者。被害者の心の傷は今も癒えない。
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 (Bさん)「だまされたし情けないわ。信用できひんくなるしね、人を。鍵は絶対開けないとか思ってね。人来ても、いやーって思ったりとかね。うわーってなるんですよ。来んといてーってなるしね」

逮捕前の容疑者本人に直撃取材 その言い分は?

 高齢者をだまして火災報知器の交換を強引に行う野崎容疑者ら。取材班は現場責任者の野崎宇宙容疑者を逮捕前に直撃した。

 (記者)「火災報知器ってあるじゃないですか。交換しないと違法になるというふうにおっしゃられていると聞いているんですけど」
 (野崎宇宙容疑者)「言ってはいないですね。やめてもらっていいですか」
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 カメラを嫌がりながらも、自身は法律を理解していて、違法なことはしていないと語り始めた。

 (野崎宇宙容疑者)「自分ら法律わかっとる?」
 (記者)「はい、特商法わかっています。ウソをついたりしたら違法になりますよね」
 (野崎宇宙容疑者)「不実の告知に当たるよね」
 (記者)「はい、当たります」
 (野崎宇宙容疑者)「それやるわけないよね。やけど個人間でプレイヤーがね、お金ほしくてやっちゃってしまったことあるでしょ」
 (記者)「プレイヤーというのは従業員の方のこと?」
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 (野崎宇宙容疑者)「そうですよ。だからそれは改善をずっとやってるわけじゃないですか。正直ね、従業員の子らも認めてるわけですよ、不実の告知を認めてるわけですよ。僕もそれやったらあかんよと言っててん」

従業員の違法行為は認めたが「個人責任でしょ」

 従業員が違法行為をしていたことを認めた。一方で…。

 (記者)「どう思われますか、責任者として。自分の会社の従業員の方たちが、指導はしていたとはいえ、違法な行為をしてしまった」
 (野崎宇宙容疑者)「あかんでしょ」
 (記者)「あかんと思うんですけど、それに対して責任者として、どういうお気持ちですか?」
 (野崎宇宙容疑者)「だからその分の責任を負わすために報酬を渡しているし。これやったらあかんよあれやったらあかんよ、取り決めを破ったならば、こういう仕事やから捕まっちゃうよという話をしているから」
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 (記者)「ということは、ある程度の金額を渡しているから、違法行為があって捕まったとしても、それは従業員の自己責任だということですか?」
 (野崎宇宙容疑者)「個人責任でしょそれは、もちろん」

 野崎宇宙容疑者は「指導していたが従業員が勝手にしたことで自分に責任はない」と話した。

専門家は「日本の消費者保護制度は遅れている」

 消費者問題に詳しい専門家である西塚法律事務所の西塚直之弁護士は訪問販売で高齢者が多く狙われる背景をこう分析する。

 (西塚直之弁護士)「訪問販売は家に来るので、家にいる時間が長い方が被害にあわれる。今であれば高齢者の方が中心になってくるかなと思います。自分の子どもや孫にオーバーラップして、ついつい話を聞いてしまって、被害にあうということが一定数あると思います」

 また、被害を減らすためには、消費者に寄り添った法整備が必要だと訴えた。

 (西塚直之弁護士)「私の感じるところでは、海外と比べるとまだまだ日本の消費者保護制度は遅れているかなという印象は持っています。例えば外国に行くと、訪問販売の禁止、あるいは訪問販売お断りステッカーを貼っているところには訪問販売してはいけないと、法律でしっかり決まっていますので。日本もそういった外国の制度に合わせて、訪問販売を規制していくというのも1つの考え方かなと思います」

 警察は野崎容疑者らの認否を明らかにしていない。不安を煽って強引に契約を結ぶ卑劣な手口。被害にあった高齢者は「人を信用できなくなった」と訴えている。