電気製品などから出た『電子ごみ』を、税関に虚偽の書類を提出して輸出しようとしたとして、10月18日に廃棄物処理業者や通関業者らが逮捕された。なぜごみを不正に輸出しようとしたのか。そこには今の日本を取り巻く国際的な状況が深く関係していた。

通関業者ら男女5人逮捕…約92トンの電子ごみ

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 (記者リポート 10月18日)
 「電子ごみなどを不正に輸出しようとしたとして逮捕された興亜産業取締役の男を乗せた車が寝屋川警察署へと入ります」

 大阪の廃棄物処理業者「興亜産業」の取締役・久保宏光こと蘇宏光容疑者(46)と、通関業者「華領」の取締役・夏川綾海こと陳岩英容疑者(49)ら5人が関税法違反の疑いで10月18日に逮捕された。5人は今年2月、税関に申告せずに電子ごみなど約92トンをマレーシアに輸出しようとした疑いがもたれている。一体なぜ不正な輸出に手を染めたのか。取材を進めると蘇容疑者らの錬金術が浮かび上がってきた。
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 (記者リポート)
 「こちらの施設で輸出されるごみが袋詰めされていたという事です。中には電線やプラスチックのごみが山積みされているのがわかります」

 大阪府寝屋川市にある蘇容疑者らが運営する会社の処理施設。施設の中には電線や電子部品などのごみが無造作に積み上げられ、作業員が種類ごとに選り分けている様子が確認できる。蘇容疑者らはこの施設内で輸出するごみに“ある仕掛け”を施していたという。
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 それが発覚したのは税関のコンテナ検査。申告なしに輸出ができない電子基板などをプラスチックごみなどの中に隠していたのだ。その背景に電子基板に含まれる価値の高い金属の存在があった。

電子基板などから抽出できる“金や銅”

 福岡県北九州市にある正規のリサイクル業者「アステック入江」。全国の産廃業者などから電子基板を購入している。

 (アステック入江 小森裕司工場長)
 「これは液晶テレビとかに入っている基板です。テレビの赤白黄色の端子があります。これがチューナーですね」

 基板とは家電が動くための信号を出す頭脳の役割を果たす部品だ。この基板には様々な価値の高い金属が含まれているという。

 (アステック入江 小森裕司工場長)
 「(Qどういう金属が基板から取れる?)一般的には金、次に銅。いろんな金属がいっぱい含まれています」
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 集められた基板はまず特別な装置に入れられる。ここで高熱を加えて付着している部品を取り外す。
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 そして基板を特殊な薬品につけると、黄金色の破片が次々と浮かび上がってきた。「金」だ。

 (アステック入江 小森裕司工場長)
 「(Q金1gを得るには基板は何枚必要?)200枚ぐらいですね」

 基板200枚から約1gの金が回収できる。10月18日現在の価格で約8700円になる計算だ。金などが含まれる電子ごみを海外に輸出した理由について蘇容疑者は次のように話している。

 (蘇宏光容疑者)
 「日本で売るよりも金になるので不正に輸出をしてきました」

 しかし、こうした電子ごみの輸出はかねてから問題になっていた。

中国の貧しい村で行われる「基板焼き」

 うずたかく積まれた日本のパチンコ台。2007年に中国・香港で撮影した映像だ。パチンコ台は手作業で解体されて基板は中国本土の貧しい村に運ばれていた。
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 そこで基盤を焼いて部品を抜き出す「基板焼き」という作業が行われていた。しかし、金や銅などを抽出する過程で出る煙には鉛などの有害物質が含まれていて、現地で健康被害を引き起こしていた。
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 (現地の人 2007年)
 「(Qこの臭いは大丈夫ですか?)基板には毒が含まれている。でも他にする仕事がないから」
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 電子基板などの有害廃棄物の輸出は国際条約で厳しく規制されている。しかし「安い日本」と呼ばれる状況が違法な輸出に繋がったとみる向きもある。

 (環境省近畿地方環境事務所・資源循環課 山根正慎課長)
 「今は円も安いですし金属も高いので、不適切に諸外国に輸出して、向こうで不適切に貴金属やレアメタルを回収しようとしているのかなというところではありますね」

 一方で、こうした不正な輸出は『国と国との大問題』に発展する可能性があるという。

 (環境省近畿地方環境事務所・資源循環課 山根正慎課長)
 「国際間で環境問題になってしまうと、それはひいては日本の貿易管理の体制の信頼が大きく損なわれるということになりますので、我々としても厳格な管理が必要であるというふうに考えています」

取材班が逮捕前の容疑者を訪ねるも…

 こうした状況を食い止めようと今年6月に大阪府警が捜査に乗り出した。

 (記者リポート 今年6月の通関業者「華領」の捜索)
 「午前8時45分です。大阪府警の捜査員らが通関業者の家宅捜索へと入ります」

 今回摘発された通関業者「華領」はウソの書類を作成するなどして電子ごみの不正輸出に加担した疑いがもたれている。
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 逮捕される10日前、取材班は「華領」の夏川綾海こと陳岩英容疑者を訪ねていた。

  (記者)「毎日放送なんですけど、夏川綾海さんはおられますか?」
 (従業員)「すみません、今は外出しているみたいなんですよ」
  (記者)「アポをとらせてもらいたいのですが?」
 (従業員)「また改めてお電話してもらったらいいかと思うんですけど」

 記者が改めて電話をかけてみると…。

 (従業員)「すみません、今日は留守にしておりまして」

 その後も何度か取材を試みたが陳容疑者が取材に応じることは無かった。
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 警察の調べに対して、陳容疑者は「今は話したくない」と黙秘し、蘇容疑者は容疑を認めているという。警察は蘇容疑者らが少なくとも4年前から不正な輸出を繰り返していたとみて事件の全容解明を進める方針だ。