2月16日の朝、ある事件が急展開した。兵庫県警が3年ほど前から捜査していた大阪の元会社代表の男が逮捕された。逮捕容疑は、無登録で暗号資産への投資を持ち掛けたという疑い。男は『暗号通貨投資アドバイザー』と名乗っていて、「ビットコインで儲かる」などとうたって約1000人から15億円以上を集めていたとみられている。騙されたと訴えている被害者たち。その手口に迫った。

無登録で暗号資産の運用と称して出資を持ち掛けた疑いで逮捕

2月16日、金融商品取引法違反の疑いで逮捕された佐藤広行容疑者(56)。警察によると、佐藤容疑者は2018年に大阪市内に住む50代の女性など男女7人に対して、無登録で暗号資産の運用と称して出資を持ち掛けた疑いがもたれている。
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『暗号資産』とは、インターネット上で取り引きされる財産的な価値を持つ電子データで、かつては仮想通貨と呼ばれていた。暗号資産は許可を得た交換業者を通じて購入や換金ができ、買い物やサービスの支払いに利用できる。
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取材によると、佐藤容疑者は暗号資産「ビットコイン」の運用で利益が出るなどとうたって出資者から金を集めていた。金は暗号資産を運用しているとされるA社にわたり、佐藤容疑者は紹介料を得ていたみられている。さらに、出資者が出資者を集め、多くの紹介料が佐藤容疑者に入る形になっていたとみられる。

投資セミナーで佐藤容疑者と出会ったAさん“怪しいとは思わなかった”

兵庫県内に住むAさん。2017年に知り合いに誘われて参加した投資セミナーで佐藤容疑者と出会ったという。
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(佐藤容疑者を知るAさん)
「前の方でゲストスピーカーでしゃべる人はギラギラした20代30代の金持ちふうの人なんですけど、(佐藤容疑者が)最後のゲストスピーカーとしていて、最後にぼそっとしゃべって、なかなかよく仮想通貨のことを知ってる人やなと思って。『これからの時代はすべての取り引きが仮想通貨に置き換わる』という話とか」

神戸・三宮で行われた投資セミナーには30代~70代くらいの男女50人ほどが参加して熱気に包まれていたという。
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セミナーで1冊500円で売られていたパンフレットには、“ビットコインの運用で儲かる”という趣旨の魅力的な言葉が並んでいる。
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(パンフレットに書かれた内容)
『2030年 1BTC(ビットコイン)は50万ドルと予想?!』
『2000ドル投資が2年5ヶ月で約4倍に!』
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(佐藤容疑者を知るAさん)
「後ろの会話をちょっと聞いたんですけど、おばあちゃん同士の会話だったんですけど『あんたなんぼ入れたん(投資したん)』『私ね、旦那に内緒で4000万いってもうてん』と、そういう会話がボンボン」

Aさんは後日、佐藤容疑者と会い、いかに儲かるかを力説されたという。

(佐藤容疑者を知るAさん)
「『月利10%いきますよ』と、その言い方がギラギラしてないから、声のトーンが耳障りがいいというか。教授にしゃべってもらっているようなイメージ。(Q怪しいとは思わなかった?)思わなかった。これは仮想通貨を知ったものが先に得するんやなと思っていた」

佐藤容疑者とみられる人物の勧誘音声を入手

一体、どのような語り口なのか?取材班は、佐藤容疑者とみられる人物が出資者を勧誘していた際の音声を入手した。

【佐藤容疑者とみられる人物の音声】
「ビットコインの詐欺とかが去年すごく横行したんです。ビットコインというだけで飛びつくんです、日本人は。なんも実態のない会社に投資をして持ち逃げされちゃったりするんですね。でもここは実態があります。多くの日本人がここの会社にいますし、社長の自宅にも招待されています」

運用する会社は“信頼できる”などと話す。さらに…。

【佐藤容疑者とみられる人物の音声】
「1000万円入れたら3か月で2000万円くらいになります。銀行に入れてる場合じゃない。だんだん利回りを減らしてくると思うので、今のバブルのうちに稼いでいった方がいい。銀行に100万円置いているんであれば、こっちに置いておいたら1年で7倍になる」

運用益などを確認できるサイトが突然閉鎖

被害を訴えるAさんは、こうした言葉を信じて、半年で約500万円を佐藤容疑者に渡したという。しかし、その後…。

(佐藤容疑者を知るAさん)
「そのサイトが閉じられてしまうんです。僕だけじゃなくて、誘ってくれた人とか友達とかに聞いたら『私もそうやねん』『全然アクセスできへんねん』と」

突然、運用益などを確認できるウェブサイトに繋がらなくなったという。

佐藤容疑者に勧誘されて総額1200万円を投資したBさん

兵庫県に住むBさんも佐藤容疑者に勧誘されて暗号資産に投資していた。

(佐藤容疑者に勧誘されたBさん)
「元々子どものために貯めていたお金。こういう大学に行きたいとかこういう習い事がしたいという時に自由にさせてあげたいと思って貯めていたお金なんです」

Bさんはビットコインの運用に投資した後、佐藤容疑者から別の投資話も持ち掛けられたという。

(佐藤容疑者に勧誘されたBさん)
「『400万円今持っているんですよ』と札束を見せてくる。『これは他の案件で利益が出たやつを出金してきたんですけど、これ1か月で400万円増えたんですよ』みたいな感じで。『どういうものなんですか』と聞くと『こういう案件があって』と説明されて、そうしたら『私たちも登録したいです』と」

さらに、こんな書面を交わしたという。

【Bさんが佐藤容疑者と交わした契約書に書かれた内容】
『月利10%』
『元本保証 月内の申し出で無条件に翌月末のご返金になります。』
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Bさんは総額1200万円を投資。しかし最初の投資から1年が経ったころ、全てのサイトにアクセスできなくなった。
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(佐藤容疑者に勧誘されたBさん)
「佐藤さんは音信不通になっちゃって。結局子どもや家族につらい思いをさせる。お金がないことで我慢させないといけなくなっちゃったことに対して、すごく自分の子どもたちに申し訳ない」
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こうした暗号資産をめぐるトラブルは急増している。国民生活センターによると、全国の消費生活センターなどに「儲かると勧められて暗号資産の投資をしたが返金されない・出金できない」などと寄せられた相談の数は、2020年度は3344件あり、この6年で約18倍になっている。

近年横行している手口とは?

暗号資産のトラブルに詳しい杉山雅浩弁護士は、近年横行する手口についてこう説明する。

(杉山雅浩弁護士)
「基本的に共通しているのは、海外の会社がマルチ商法の仕組みを使ってお金を集める。しかも利率が月利20%だとか10%だとか、とても経済的な合理性を欠く利率でお金を集めている。アフィリエイター(紹介者)は自分で運用しているわけじゃないので、もしこのスキームが破綻したとしても返す義務はないと言い切れる」
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まさに紹介者として出資者を募っていた佐藤容疑者。警察の取り調べに対して容疑を否認しているが、警察は佐藤容疑者が少なくとも全国で約1000人から15億円以上を集めていたとみて調べている。