舞台は宮城県仙台市。“変形地マニア”が建てた、12坪の狭小ローコストハウスを紹介する。
住人(アルジ)は、2人の子どもがいる4人家族。4年前、宮城県の郊外から通勤に便利な仙台市へ移り、建築家の夫が家を建てた。
外観はコンパクトだが、実は見えているのは2階部分だけ。前面道路がある2階に玄関があり、2m下がったところに1階がある。しかも間口はわずか3.6メートル、奥行きは11mとかなり細長い形をしている。そんな建坪12坪の狭小住宅が建つのは、元々ずっと売れ残っていたという変形地で、購入価格はなんと180万円!周辺の土地価格の5分の1以下で見つけた、超掘り出し物だった。
そんな夫の趣味は「売れ残り物件パトロール」。不動産情報サイトで安いのにずっと売れていない土地を探し、現地に足を運んで売れ残っている理由を調べることが好きなのだという。
変形地マニアが「売れ残り物件パトロール」で発見!180万円で土地を購入
以前は宮城県内にある夫の実家の2階で暮らしていた住人(アルジ)一家。あるとき、夫が趣味の物件パトロールで200万円の土地を発見する。ボロボロの古家付きで、道路から2m下がった変形地だったが、夫は「むしろ難易度が高い方が他にはない家ができる」と、180万円まで値切って土地を購入。古家を取り壊して新居を建てたのだった。しかも、建築費も徹底的に安くしたという。
家の2階部分、メインスペースは天井高3.6m、細長い22帖のリビングダイニングキッチン。南側と北側に開口部を設けているので、視線が抜けて意外にも狭さは感じない。あえて壁は設けず、筋交いがむき出しになっている。
視界やスペースを遮断してしまう壁ではなく、同様の強度の筋交いにすることで、風景を取り込みつつ安全な家を実現したという。しかも壁を作ると約10万円かかるが、筋交いだと3万円に。広見えだけでなく、コストも抑えることができた。
コストダウンは「〇〇の削減!?」 総額70万円で妻の要望を叶えたキッチン
コストダウンの秘訣は「人件費の削減」だという住人(アルジ)。大工や職人の作業の手間を省けば、大幅なコストダウンになるのだという。
妻の要望で全てオープン収納にしたというキッチンも、家具職人、建具職人の手が必要な引き出しや扉はほとんど取り付けず、大工の作業範囲でできるベニヤ板で作った本体にシンクをはめた形に。シンプルなキッチンにしたことで、棚も含めて総額約70万円で完成したという。
1階の上は、子ども部屋として利用するロフト。奥行きは11mもあるが、天井高は1.4mと低めだ。オープンなスペースだが、兄と弟のデスクは6.5mも離れているのでの壁がなくても気にならず、すぐ下のリビングも飾り棚が目隠しになって目線が合うことはない。しっかりとプライバシーを保てる空間になっている。ただ、天井高だけは変えられないため、このスペースを使うのは子どもたちが高校を卒業するまでと割り切って設計したとか。
浴槽は内側だけでなく外側の扉までガラス張り!?浴槽奥には〇〇が
1階には、狭小住宅ながら広々とした10帖の寝室がある。2階のリビングは外からも丸見えなので、寝室はセカンドリビングとしても利用。家族でこもってテレビやゲームを楽しむくつろぎのスペースになっている。
浴室は、内側だけでなく、外側の扉までガラス張りで丸見え。風呂を使うときだけカーテンを閉め、普段は開けたままにすることで、視覚的に広さを感じられるようにしている。
浴室の外は、家の前にある駐車スペースの下にあたる部分。壁で覆われて外からは見えないので、テラスとして活用している。
プライベートは守りつつ、間仕切りなしの狭小ハウス
長年売れ残っていた変形地にローコストで建てた狭小住宅。夫は「決して住みやすい家ではないと思うんですよ。だけど普通の家じゃない、うちはこういう家なんだっていうことを大切にしてもらえるといいなって思いますね」と語る。
家族との距離がぐっと近くなった間仕切りのない家では、限りある家族との時間をもっと大切に感じることができそうだ。
(MBS『住人十色』2025年1月18日放送より TVerでも放送後1週間配信中)