舞台は奈良県奈良市。子育てを終えた60歳の夫妻がセカンドライフを楽しむために建てた家を紹介する。

住人(アルジ)は、同じ奈良県の生駒市から引っ越してきた60歳の夫妻。2022年、60歳を前に夫妻の理想を詰め込んだ新居を観光地の近くに建てた。
かつては5人暮らしだった住人(アルジ)一家。だが3人の子どもが独立し家を出ると、子ども部屋が不要になり、部屋がある2階にも行かなくなってしまったという。そして夫が定年退職。そこで思い切って新たな場所に家を建て、生活スタイルを一新することに。新しい家では、これまでの経験から「無くても困らない」と感じていたさまざまな空間やものを「やめた」という。

家は、閑静な住宅地でもひときわ目立つスタイリッシュな外観。窓は全くなく、奥行き33メートルもある側面も一面壁になっている。玄関扉を開けると、奥へと延びる細長い土間が。外と中の間のようなこのスペースはいわゆる通り庭で、天井が高く、天窓がたくさんついている。
通り庭の一番奥にある階段を上がった2階が生活のメインスペース。約30帖の落ち着いた雰囲気のリビングダイニングキッチンが広がる。壁に窓はないが、通り庭の天窓から入る光が壁に照射し、部屋に明るさを届けている。直接光が入るような窓を取り付けなかった理由が、カーテンが嫌いだったこと。カーテンは埃がつきやすく、季節ごとの洗濯が面倒。普通に生活する分には間接的な明かりで十分だという。

大きなアイランド型のキッチンは、料理好きの妻の念願だったもの。中でも一番のお気に入りが、長年憧れていたドイツの高級キッチンメーカー「GAGGENAU(ガゲナウ)」の、最新鋭の機能を搭載したIHコンロ。同じくガゲナウのレンジフードはカウンターからせり上がってくる仕掛けになっている。一般的なレンジフードは圧迫感があるうえ掃除も大変だが、これは楽に手入れができるそう。
シンクも変わった形で、2つの蛇口が向き合って設置されている。さらに、シンク内には自由に配置が変えられるメッシュ状のボードとまな板がついている。これらのおかげで、作業台を使わずとも2人同時に調理や皿洗いができるという。家事も夫妻で協力し合うことで時短になり、プライベートな時間が増えたとか。

また、この家で造るのを「やめた」のが洗濯物を干すベランダ。掃除やメンテナンスが面倒だったベランダの代わりに、天窓から光が入る場所にインナーバルコニーを設けた。家の中なので、天気や虫を気にせず洗濯物を干すことができる。
そして夫が新居を建てるにあたり最も「やめたかった場所」が、庭。手入れが大変なうえ、以前の家では思ったほど庭に出なかったという。実はもう1つ、奈良の土地柄ならではの「庭をやめた」理由は、鹿が家に来てしまうことだそうで・・・。

1階には、夫妻それぞれの趣味を楽しめる空間を設けた。夫は階段下のスペースに、定年後に満喫する自転車を4台並べている。一方、通り庭の横にあるのは、大きなテーブルやカウンターがある広い空間。まるでおしゃれなカフェのようだが、実はこのスペースは「デコ巻き寿司」という切り口に絵や模様が浮かび上がるように巻かれた寿司のインストラクターをしている妻の教室。外国人観光客を中心に人気を呼んでいるそう。そんな1階はレンタルルームとしても活用しているという。
60歳で建てたセカンドライフを過ごす家。この家に暮らし始めてから2人の会話が以前よりも増えたといい、妻は「60歳になって挑戦って大変かなと思うんですけれども、やってよかったなって」と新生活を堪能している。
不要なものを手放して、新たな挑戦を始めた60代。今後ますます夫妻の楽しい会話が増えていきそうだ。(MBS『住人十色』2024年11月30日放送より TVerでも放送後1週間配信中)