マスク着用の要否についての議論に注目が集まる中、子どものマスク着用について、多くの子どもたちを預かる保育施設の現場事情を改めて取材しました。施設の園長は子どもたちの発育について大きな不安を抱えていると話します。

 大阪府堺市にある認定こども園「宮山台幼稚園」には、1~5歳までの260人の児童が通っています。この園では、1~2歳児は普段からのマスク着用が困難かつ集団での活動が少ないことから、マスクの着用はしていません。

 しかし3~5歳児に関しては違います。この日、3歳の児童はマスク姿で、教室内で同じ方向を向き、静かに粘土に取り組んでいました。もう2年もの間、この状況が続いているといいます。

 (宮山台幼稚園 奥野宏園長)
 「こちら3歳児の教室です。ご覧のように教室の中ではマスクをして、できるだけ対面にならないようにということと、固まらないようにというような形での活動が主流です」 

 部屋の中だけではありません。一部の例外を除いて外での活動もマスクを着用しています。子ども同士で一定の距離“ソーシャルディスタンス”を保つことが難しいというのが大きな理由です。

 (宮山台幼稚園 奥野宏園長)
 「こちらは5歳児の子どもたちで、ご覧のように外でも、この季節ぐらいでしたらマスクは着用して活動する。もう少し暑くなってくると、平常時でしたら20~30分間ぐらい外活動をするのですが、それを半分くらいに抑えてマスクを外して活動する。今年1月に、それぞれの園で、多い少ないはあったが感染が広がったということもありますし。逆に感染対策をしていてもかかるときはかかってしまうということがありますので、できるだけそこは感染リスクを抑えながら園を運営して、子どもたちの教育活動を継続していくということが必要なのかなと思っています」

 現在、こちらの園で児童がマスクを外す時間は、人数を制限して行うプールの時間、そして声を出さずに食べる給食の時間のみ。保護者からは「慎重すぎるのではないか」という意見もあるといいますが、実際に感染を予防するはずの手洗い場を見てみると、子どもは密になりやすいため、感染リスクがある以上は屋外でも「日常的にマスクを外す」という判断は難しいといいます。

 その一方で子どもたちの発育について大きな不安を抱えています。

 (宮山台幼稚園 奥野宏園長)
 「やはり子どもたちの成長ということに関しては、ものすごく心配なところがあります。表情が見えない生活が続いていますので、これが大きくなったときにどう影響するのか。できれば人とのコミュニケーションの力というものは幼児期に培ってほしいものですので、それが今できていない。喜びとか悲しみとか、そういう表現が少し足りていないのではないかなということは、そこはとても心配なところがあります」

 感染リスクか、子どもの発達への影響か、現場では難しい脱マスクの判断。奥野園長は行政の号令で進めてほしいといいます。

 (宮山台幼稚園 奥野宏園長)
 「行政からの通知が出ればマスクを外す方向で考えると思いますし、昔は面白いことがあれば大きな声で笑って表現もできていましたので、そういった生活が早く戻ってくれればと思っているところです」