東日本大震災の発生から11年となりました。最近は地震や台風などの自然災害だけではなく新型コロナウイルスやロシアによるウクライナ侵攻のニュースを見て防災への意識を高めている人も多いのではないでしょうか。3月11日の毎日放送『よんチャンTV』では、国際災害レスキューナースの辻直美さんに防災ついて話を聞きました。

災害用には「食べ慣れているもの」を多めに備蓄

(大吉洋平アナウンサー)
「まず、国際災害レスキューナースはどういうお仕事ですか?」

(国際災害レスキューナース 辻直美さん)
「国際的に災害の専門ナースとして活動しています。災害が起きてから48時間以内、もしくは72時間以内に現地に入ってレスキューをしています」

(大吉アナウンサー)
「今はコロナ禍なのでなかなか海外に行くのは難しいかもしれませんが、その前はいろいろな国に行って活動していらっしゃったのですか?」

(辻直美さん)
「そうですね。もちろん日本にいながら遠隔の支援もしているんですけれども、今は日本でもとても災害が多くなりましたので、どちらかといえば日本での活動が多くなっています」
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(大吉アナウンサー)
「では、辻さんに防災のことを聞いていきます。テーマは「防災」+「快適」で、この快適という部分を辻さんはとても強調していらっしゃるということなんですね。衛生・睡眠・食事の分野についてそれぞれ聞いていきますが、まず食事に関してはどんなことを伝えたいですか?」

(辻直美さん)
「皆さん災害用の備蓄をされていると思うんですけど、普段食べ慣れないものを食べても元気になれないので、いつも食べているものをちょっと多めに備蓄するということをおすすめしています。その方がたぶん味も慣れていますし、そして元気になれる。日常を取り戻すことが災害が起きたときには大事なことです。例えばインスタントラーメンとか、あと意外に駄菓子とかもいいですね。あと、レトルト食品もいいと思います。私はレトルトをそのままパスタにかけたりせずに調味料として使っています。例えば炊き込みご飯にしたり、スープにしたりして使っています」

(大吉アナウンサー)
「なので『災害バッグ』というものを作るときに、決して災害用の食事だけを一生懸命専門店から集めなくてもいいんだよということですね」

体を清潔に保つには? トイレは汲んだ水で流してはダメ!?

(大吉アナウンサー)
「そして次のテーマは『衛生』についてです。体を清潔に保つという上で、例えば体の中で2か所しか洗えないとしたらどこを洗うか。辻さんのポイントとしては、手とデリケートゾーンはできれば水で、そして顔や体はシートでも代用可ということなんですね」

(辻直美さん)
「例えば体をふくときは、赤ちゃんのおしりふき使っていただくと全身これでふけます。デリケートゾーンもこれで大丈夫です。でも、水で洗った方がたぶんさっぱりされると思います。今はコロナ禍ですので、やはり手は水で洗いたいという欲求が高いので、ぜひ使っていただきたい。ただお水は限られてますから、そのままペットボトルからざっと出さずに、ペットボトルのキャップに穴を開けてシャワーにして使っていただくといいと思います」
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(大吉アナウンサー)
「ペットボトルのキャップを開けちゃうとドバーッと出ちゃうんだけれども、限られた水を有効に使っていこうという考え方ですね」

(辻直美さん)
「ちょっとやわらかいものだと調節ができますのでぜひやってみてください」
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(大吉アナウンサー)
「水が無限に使えるわけじゃないですから、どこを何で洗うかという部分も普段からイメージしておくといいのですね。そして次のテーマは『トイレ』についてです。地震で水が止まったら、お風呂に溜めておいた水を使ってトイレを流すことは正しいのでしょうか?僕は神戸の震災のとき、お風呂のバスタブに溜めた水を汲んできてトイレに流していたの覚えていますが、いかがですか?」

(辻直美さん)
「これはよくないです。お風呂にお水をためることもあまり推奨ではなくて、水を溜めていてもすぐヌメヌメになってしまいますし、まずトイレを流すということがあまりよろしくないです。というのは、トイレ自体が見えないところで被災をしていて、配管が割れていたり、ずれたり詰まったりしている可能性があります。汲んだ水で流したところで、タンクまでし尿は落ちないんですね。そうなると、途中で誰かの家の壁から染み出てきたりとか、集合住宅の1階・2階・3階の場合、詰まって爆発したというケースもあります。なので、今はお水を流すのではなくて、違うものを使ってトイレをしていただいています」
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(大吉アナウンサー)
「ではどうすればいいのか。例えば100円ショップなどでも入手可能な『簡易トイレ』。便器にかぶせる袋と凝固剤がセットになったもので、こうした商品はもちろん使えますが、人は緊張すると1日に10~12回もトイレに行くということです。災害が発生しているときは精神不安定になりますよね。そうなると、例えば110円だったとしても、10回が3日間、家族4人となると、1万3200円の計算となり、すごくお金がかかってしまいます。簡易トイレを持つことはもちろんいいことなんですが、意外とお金がかかります。そこで辻さんが教えてくださるのが『災害用トイレ』です。こちらも100円ショップで揃うゴミ袋・ペットシーツや新聞紙を使い、安くて快適な災害用トイレができるということです。簡易トイレセットの5分の1程度の値段で作れます。では、辻さん作り方を教えてください」
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(辻直美さん)
「まず用意するものは、100円ショップで売っているペットシーツです。8枚で100円というものもあります。高分子ポリマーが入っているペット用のおしっこシートですね。そして、便座が壊れていないことが前提ですが、45リットルのゴミ袋を便器に2枚重ねます。そしてその中にペットシーツを敷きます。ペットシーツは片方が撥水面、もう片方が吸水面になっていますので、吸水する側を外にしてたたんで敷きます。その上にちぎった新聞紙を入れます。新聞紙は消臭効果もあり、少しの吸水もあります。また、排泄物が見えちゃうのも少し嫌だと思いますので入れてください。そして、便座を下げて用を足します」

(大吉アナウンサー)
「用を足して、そのし尿が見えていると嫌なので、そういうときは新聞紙を足していくんですね。隠す、臭いを抑えるという意味で。これが満杯になったら、上の袋だけ処分するということですね。袋は二重にしているので、上の袋がトイレの水で濡れているということはないわけです。捨てたら、もう1回また袋をかぶせておいて、同じことを繰り返すと」

(辻直美さん)
「シートはだいたい380~420ミリリットルぐらいの水分を吸収します。1回の成人男性の尿の量は十分受け止めてくれるので安心してください。用を足した後は燃えるごみとして捨ててください」

快適に眠れる『ゴールデンエッグバランス』

(大吉アナウンサー)
「次のテーマは睡眠です。避難所で快適に眠るにはどうすればいいのか。辻さんによりますと、『ゴールデンエッグバランス』と呼ばれる人が快適に眠れるバランスがあるんですね?」

(辻直美さん)
「真っ平らになるよりも、頭側を30°足側を45°上げるこの角度の方がお腹の緊張がとれて、腰の負担が少ないというふうに言われています。皆さん不安だと横になって丸くなって寝ているんですね。そのときの角度って実はこの形を自然にとっています。ただ、横になっていると片方の面が痛くなるので、座布団やカバンなどあるものを使って立体的にこの角度をとります」

(大吉アナウンサー)
「体の位置など眠るときのポイントは何かありますか?」

(辻直美さん)
「角度をつけたときに、お尻をかなり下の方にくっつけていただくことがポイントなんですね。角度をつけると腰とかお尻を真ん中にしがちですが、腰から太ももの裏、膝の後ろ、そしてふくらはぎが密着していることが大事です」
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(大吉アナウンサー)
「辻さんにいろいろお聞きしましたが、これだけは伝えたいというのが『災害は厳しい。でも、防災は面白い』ということなんですね」

(辻直美さん)
「皆さん災害を想定したときに、防災を何かネガティブに捉えている方が非常に多い気がします。しかし、字のごとく災害を防ぐので、生活の質が上がりますし、ハッピーなことだと私は思っています。防災を極めていくと日常生活の質が上がっていきますので、ぜひこれはイベントごととしてしていただきたいなと思います。一度ペットシーツを買ってきてお水含をませたりして、楽しんでいただければ、自分のテクニックとして入っていくと思います」

(大吉アナウンサー)
「一度リハーサルしてみるのは大切ですね。そして防災の“万能選手”として辻さんが挙げていらっしゃるのが『PPG(ペットボトル・ペットシーツ・ゴミ袋)』です。ペットシーツとゴミ袋はわかりましたが、ペットボトルはどんな役に立つんですか?」
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(辻直美さん)
「先ほどもちょっと出てきましたが、ペットボトルはそのままもちろんお水も飲みますけれども、災害が起きるとブラックアウトといって真っ暗になります。そのときに懐中電灯をつけると、実はね、一方向しか灯りがつかないので部屋があまり広く明るくならないんです。水が入ったペットボトルを懐中電灯に置くだけで、ほわっと明かりが広がってとても明るくなります。水は入っています。子どもたちはなぜかペットボトルを逆向きにして置くことが多いんですね。そうするとキャップの色が映って、プラネタリウムみたいなことして遊ぶ子もいます」

(大吉アナウンサー)
「ペットボトルは手洗いにも使えるし、光を乱反射させることもできる。こういうことも知っておくとよいですね」