インバウンド相手の観光バスで業績を伸ばしてきた大阪のタクシー会社は、新型コロナウイルスの影響で売り上げが激減。苦境の中、あの手この手で生き残りを図ってきましたが、さらに“意外な一手”を打っていました。

「守るべきは運転手」バスを売却して給料の支払いに

大阪のタクシー会社「日本城タクシー」。タクシー業のほか、新型コロナウイルスの感染拡大前は中国人観光客相手のツアーバスで業績を伸ばしてきましたが、コロナ禍で売り上げが激減しました。
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(日本城タクシー 坂本篤紀社長 去年2月)
「売り上げが10分の1になったというのが正確かな。半分で真っ青になって、10分の1で開き直りかな、あーあ、と」
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去年1月には、所有していた大型バス10台のうち3台を売却し、運転手らの給料支払いなどにあてていました。

(日本城タクシー 坂本篤紀社長 去年2月)
「本来は守るべきは運転手であって、彼らが持っている経験はお金に換算するとすごいものがあるからね。1人をまるっきり一から育てるのはそれなりに(かかる)。これだけ育てたらバス1台分くらいお金がかかる」
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去年は『GoToトラベルキャンペーン』などもありましたが、バスの予約はほとんどなく、タクシーの売り上げも厳しい状況が続きました。今年11月の予約表もまだまだ空白が目立ちます。緊急事態宣言の解除に伴い、旅行会社などから問い合わせの電話は少しずつかかるようにはなってきましたが、今も観光バスの売り上げはコロナ前の1割ほどしか戻ってきていないといいます。
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社長は何とか売り上げを回復させようと「荷物の輸送」や「故障車のレッカー移動」など新規事業にも挑戦してきました。

「荷物輸送」「レッカー移動」に続く新規事業『ベビーカステラ』

そして今、新たに挑んでいるのが『ベビーカステラ』です。今年7月、全く専門外のベビーカステラ専門店を大阪市住之江区にオープンしました。その名も「日本城カステラ」。20個で440円です。地元では「冷めてもおいしい」と評判だと言います。
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(日本城タクシー 坂本篤紀社長)
「めっちゃうまい。抜群やな。レシピは企業秘密の塊で一切言われへん。夜も寝ずに研究した結果やからばらすわけにいかない」
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社長自らも店頭に立つなど、ベビーカステラを焼くのは本業が暇になったタクシー会社の社員たちです。

(日本城タクシー 坂本篤紀社長)
「ゼロから研究しているから、みんな苦労しまくっているし、やけどしまくっている。雇っている以上は遊んでもらっていても仕方ないし、稼げて何らかの足しになるということはモチベーションを保つもとやしね」
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店を始めたきっかけは、同じくコロナ禍で暇になった露天商との会話でした。

(日本城タクシー 坂本篤紀社長)
「露天商のおっさんに会ったら『ベビーカステラが儲かるの知っているか』と教えてくれて、だいたいあれは親分格がするんやと、利益率がいいんやと」
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実際、店の売り上げはタクシー1台分に匹敵するといい、今後、店舗を拡大することも視野に入れています。

(日本城タクシー 坂本篤紀社長)
「ここで人を育てたら店舗を増やしていこうかなと。うちの場合は全部社員なので、そこがしんどいところ。でもバイトやパートではなくて、これも1つの仕事として捉えたいし。あくまで最初の目的が雇用の創設やから、ちゃんと人を雇うことが大事じゃないかな」

何としても会社と社員を守る。社長の模索は続きます。