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【特集】国産初の手術支援ロボ「hinotori」未来医療をつくる両輪"技術者と医師"に聞く『不死鳥』の真価

2021年03月26日(金)放送

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去年、国産初の「手術支援ロボット」が誕生しました。その名も「hinotori」。命を救うべく『不死鳥』の名がつけられたロボットを生み出したのは、ともに神戸を拠点とする技術者と医師でした。

国産手術支援ロボット「hinotori」

去年12月、神戸大学病院のチームが日本初となる最新機器を使った手術を成功させました。

(神戸大学大学院・医学研究科長 藤澤正人医師 去年12月)
「国産手術支援ロボット『hinotori』を用いて、前立腺全摘除術を行いました。手技そのものは100点満点と言っていいでしょう。」
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国産初の手術支援ロボット「hinotori」。医師は手足を使って4本のアームを自由自在に操ることができます。細いレプリカの血管の下に糸を通して、たやすく結ぶことができます。
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一体、どんなロボットなのか。hinotoriを開発した企業「メディカロイド」の技術者に話を聞きました。

(メディカロイド・臨床開発課 東條剛史課長)
「コンパクトさは1つのコンセプトでもありました。」

まずは本体の大きさです。hinotoriはあまり広くない手術室にも収まるように極力コンパクトに設計されました。
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(メディカロイド・臨床開発課 東條剛史課長)
「こちらが『サージョンコックピット』といいまして、執刀医が座ってロボットを操作するところです。実際の内視鏡の映像が3Dでここに映されますので、それを見ながら先生は奥行きをわかったうえで操作をする。」
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実際の手術は、執刀医が操作する「コックピット」から離れた場所にある「オペレーションユニット」がおこないます。

(メディカロイド・臨床開発課 東條剛史課長)
「hinotoriのアームは、1本あたり8個のモーター(関節)を持っています。人の1つの腕で7個(関節がある)。それに加えて1つ余計に軸(関節)を設けているので、人間よりもさらに柔軟に動かすことができる。」

人間より関節が多いため、繊細な動きが可能となり、4本のアームをぶつけることなく操作できるのです。
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MBSの西靖アナウンサーが特別にhinotoriの操作を体験させてもらいました。

(東條課長)「指を輪っかの所に入れて…」
(西アナ)「何指?」
(東條課長)「親指と中指を」
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直径1cm以下の小さな輪を突起にはめる訓練にチャレンジすると…

(西アナ)「輪をつかんだ!できた!え、できましたよ!?」
(東條課長)「初めてでもやっていただけるように操作感は仕上げてきていますので。」

開発担当者「工学的に歩み寄っていくのが一番難しかった」

初めての人でも簡単に扱えるよう設計されたhinotoriですが、開発担当者の多くは最初から医療や手術についての知識を持ち合わせていたわけではありませんでした。苦労したことについて聞きました。

(メディカロイド・臨床開発課 東條剛史課長)
「手術自体も知らなかったところがありますし、ロボットを作るためにはどうしても数字や仕様といわれる仕組みを決めていかないといけないが、(医師から)『もうちょっと重い方がいい』とか『軽い方がいい』とか、そういうご意見はいただけるんですけれど、実際それをロボットの上の数字に落とし込んだらどうなるのか、そういったところに結びつけるところが非常に難しくて。先生が求める『いいもの』とはどういうところなのか、工学的に歩み寄っていくのが一番難しかった。」

毎年1台ずつ試作を行い、5年の歳月をかけて現在の形にたどり着きました。

アメリカ製のロボット“改良に至らない”

開発に一緒に取り組んできたのが神戸大学病院の藤澤正人医師。1例目のhinotori手術を成功させた執刀医です。藤澤医師はこれまでにアメリカ製のロボット「daVinci」を使い、1000件以上の手術を成功させてきました。daVinciは20年ほど前に誕生して今では市場をほぼ独占。日本でも約400台が使用されています。ただ、使用する中で新たなニーズが見つかっても、なかなか改良に至らないといいます。

(神戸大学大学院・医学研究科長 藤澤正人医師)
「『もうちょっとこうしたらいいのでは』とか『こんなんいらんのにな』と思うこともあるが、それは彼ら(アメリカ人)の仕様で作っているから、改善するなんてことは全く考えないわな。」

そこで手を組んだのが同じ神戸市内にあるメディカロイドでした。無駄な部品を減らして手術部位の視野を広げるなど、医師と技術者が何度も話し合いを重ね、完成させました。

「hinotori手術」で前立腺の全摘手術

初手術から3か月。3月4日、7例目となるhinotori手術が神大病院・国際がん医療・研究センターで行われました。1例目と同じく、腫瘍が見つかった前立腺の全摘手術です。

執刀医の藤澤医師は、患者の近くではなく、「コックピット」に座ります。

患者のすぐ横にはhinotoriの動きを補助する助手がスタンバイ。全身麻酔をかけられた患者には「鉗子」と呼ばれる器具が挿入され、午前10時すぎ、手術が始まりした。
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この手術では、前立腺の周りにある尿を出したり止めたりする括約筋や神経をいかに傷つけずに前立腺を摘出できるかがポイントとなります。藤澤医師は巧みに両手両足を使い、鉗子や内視鏡を自在に操っていきます。
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(hinotoriを操作する藤澤医師)
「ここに見えているのが前立腺、これ尿道です。」

藤澤医師の横にはメディカロイドの技術者がいて、藤澤医師のニーズがその場でフィードバックされます。
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(hinotoriを操作する藤澤医師)
「(手元が)軽すぎる。ふわふわや。」

神経や血管を傷つけないように丁寧に尿道から切り離し、約1時間半で前立腺を摘出しました。

(神戸大学大学院・医学研究科長 藤澤正人医師)
「終了。あとはもう縫合するだけですから。」

縫合は助手に任せ、7例目の手術も無事完了です。

5Gで「遠隔手術」の実証実験

国産初の手術支援ロボットはさらなる高みを目指し始めました。

(神大病院・国際がん医療・研究センター 山口雷藏副センター長)
「例えば、ここの病院のコックピットから違う病院のロボットを動かすことも可能になればと、実証実験をしている。」

5G回線を通じて、別の建物に置かれたhinotoriの本体を動かす「遠隔手術」の実証実験です。これが実現すれば、医師が出向くことなく遠方の病院でも手術が行えるようになります。

傷口は小さく回復も早く

今年3月15日。さきほどの手術を受けた男性が、退院の日を迎えました。傷口を見せていただきました。
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(hinotori手術を受けた平峯隆志さん(71))
「傷口は6か所ほど。痛みはなかった、私の場合は全然なかったです。」

傷口が小さく済んだため回復も早く、手術から11日後に自宅に戻ることができました。

「世界市場に受け入れられるロボットに」

藤澤医師はhinotoriの真価が問われるのはこれからだと話します。

(神戸大学大学院・医学研究科長 藤澤正人医師)
「hinotoriは国産だが、日本だけの問題ではなくて、世界の市場に受け入れられるロボットにならないといけないですよね。今後も医療者と開発者の両輪で進めていくものだと思います。」
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『不死鳥』と名付けられた手術支援ロボット。医学の進歩に向けて今、飛び立とうとしています。

(3月26日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)

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