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【特集】『孫・ひ孫・玄孫・来孫』相続人が"93人"いる空き家 50年以上放置され屋根崩落...誰が撤去を?

2021年03月22日(月)放送

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兵庫県姫路市に、50年以上前から空き家の状態で、台風被害などによって廃墟と化した建物があります。住民らは撤去するよう求めていますが行政側は二の足を踏んでいます。その原因を調べると“多すぎる相続人”の問題が見えてきました。

押しつぶされた空き家 近隣住民から「更地にしてほしい」という声も

兵庫県姫路市の住宅に囲まれた場所に、その“朽ちた家屋”はありました。屋根が建物を押しつぶしていて、人が住めるような状況ではありません。
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壁が崩れないように金属パイプで応急措置なども施されています。この建物は一体何なのか、近くに住む人に話を聞きました。

(近くに住む人)
「私が小学校低学年ぐらいまでは(住人が)いたような気がする。屋根が落ちたのは去年ぐらいですね。市に何度もお願いにあがって、撤去できないかという相談はずっとしていると思うのですが。」
「屋根が落ちる前なんかはすごく怖かった。風が吹くたびに電気の線がふらふらするし。きれいな更地にしてほしい。(Q空き家を知ったのはいつ?)わたしらが子どもの時から。それこそ50年も60年も前から。」
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住民らの話によりますと、50年以上前に住人の男性が亡くなり、その後は空き家に。姫路市に撤去するように再三申し入れたものの撤去されず、ついに屋根が崩落したというのです。

「所有者」がいるため手続きなしに撤去はできず

なぜ朽ち果てるまで放置されてきたのか。取材班は市に話を聞くことにしました。

(姫路市住宅課 坂本孝文さん)
「平成20年の11月ぐらいに通報がありまして、それから対応したという感じです。見た目があんなボロボロの空き家で、資産価値なんかないやろうと誰が見ても思われるんですが、でもそれは財産なんですよ。それを役所が何の手続きもなしに勝手に(撤去)ということはできない。」
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姫路市は2008年に空き家の存在を把握。所有者がいる以上、撤去はおろか、敷地内に立ち入ることもできず、所有者の調査を始めたといいます。

(姫路市住宅課 坂本孝文さん)
「江戸時代の方の所有のままずっと登記上残っていて、その方がお亡くなりになった。ご長男さんに全家督を相続されたんです。そこまではよかったんですが…。」

所有者を調べるため市は「家系図」作成 相続人は93人!?

姫路市は120万円を投じて「空き家の所有者をたどった家系図」を作成。今回、取材班がこれをわかりやすく作り直して再現しました。
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それによりますと、1940年ごろに所有者の男性が亡くなった後、一旦は長男1人に相続されました。しかし、その長男が死亡した後、民法の改正によって遺産相続がきょうだいなどにも適用されることになり、所有権がきょうだい7人に移ります。
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この7人も2008年時点で全員が亡くなっていて、さらに枝分かれし、所有権が総勢200人に。うち93人が生存していることが判明しました。

―――末えいの方は最初の所有者からみたら何に当たる?
(姫路市住宅課 坂本孝文さん)
「まず被相続人がいて、子・孫・ひ孫・玄孫ときて『来孫(らいそん)』というらしいです。93人の方にお話しをしても、『どこですか?』『だれのものですか?』と空き家の存在すら認知していない方ばかりなんですよ。運が悪いというのか突然降って湧いたような相続が市役所からの文書でわかってしまったと。」

空き家を撤去するのには最低でも500万円はかかり、さらに93人全員の実印が押された同意書も必要で、理解を得るのは難しい状況です。

こうした空き家は全国で増え続けていて、その対策として2015年施行の「空き家対策特別措置法」で、倒壊の恐れがある危険な空き家を「特定空き家」に指定して、所有者への罰金や行政代執行ができるようになりました。しかし、相続93人の姫路市の空き家は「特定空き家」に指定しつつも、市が応急措置を施し、近隣への影響は現状ではないとされています。

滋賀県の“廃墟マンション”の撤去は費用の一部を行政が肩代わりしている状態に

MBSではこれまでも度々空き家トラブルを取り上げてきました。2年前に取材した滋賀県野洲市の廃墟マンションでは、所有者が9人いて合意形成ができず、解体できない状況でした。
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しかし、今年3月に取材班が訪れると、マンションがあった場所が更地になっていました。野洲市は倒壊の恐れがあるとして「特定空き家」に指定して行政代執行に踏み切り撤去したのです。

(近くに住む人)
「ありがたいことで。一番いい通りですのにね、お化け屋敷みたいなおうちではねぇ…。」

解体費用の約1億1800万円は所有者9人で支払うことになりますが、うち6人は未払いのままで、市が約7900万円を肩代わりしている状態です。
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今回の例のように、空き家で相続人が複数いる背景について、専門家に話を聞きました。

(空き家問題に詳しい判治裕介弁護士)
「(所有者の高齢化による)施設入所の際にも空き家ができますが、認知症とかになってしまうと建物の処分ができなくなりますので。相続をほったらかしにしてそのままずっと空き家になっているというものはよくありますし。結局、建物とか不動産・土地に価値がないと、お金をかけて相続手続きを片付けようというインセンティブが働かない。」

神戸市は勧告に従わない所有者の実名と住所を公表

空き家といえども所有者はいる。難しい対応が迫られる自治体ですが、神戸市では一歩進んだ対応を取っています。神戸市西区にある空き家について、市は倒壊などのリスクが高い「特定空き家」に指定して所有者に撤去などを勧告しましたが、従わなかったため、実名と住所をインターネットなどで公表しています。
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現在は7件が対象になっていて、改善されるまで公表は続けられます。

(神戸市空家空地指導担当 垣内里美課長)
「『ちゃんと改善しないと公表されますよ』と。公表そのものが目的じゃなくて、公表されてしまうことがあるという、所有者さんに対してのある一定のペナルティーですかね。公表になりそうだという時点での改善がやっぱり多いです。」
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姫路市の相続93人の空き家について神戸市のような対応は取れないのか。改めて姫路市の担当者に聞きました。

(姫路市住宅課 坂本孝文さん)
「行政が(所有者の)情報を公開するというのは重たいことです。ただ空き家の解決ってなかなか特効薬がないんですよ。勧告とかその辺で公表をしていくのは、ちょっと本当に前向きに考えていかなあかんのかなと。」
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相続人が多すぎる空き家問題。半年かけて家系図を作るなど解決策を模索していますが、相続人はさらに増えていく可能性が高く、解決の道筋は立っていません。

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