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【特集】コロナ理由に就業規則変更「賃金変わらず勤務時間増で休日減少」意見した職員は転勤命令を拒否すると解雇に

2021年03月18日(木)放送

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大阪府堺市の介護施設で事務員として働いていた女性が去年7月に突然解雇された。新型コロナウイルスの影響で経営が悪化したことを理由に施設側が提案した「就業規則の変更」について、女性は同僚らの「反対意見」を取りまとめていた。

解雇通知を受けた介護施設の事務員

大阪府羽曳野市に住む中川裕子さん(51)は、9年前に夫と離婚し、シングルマザーとして3人の子どもを育てている。長男と長女はすでに独立し、今は小学2年生の次女と暮らしている。

(中川裕子さん)
「いつも2人でご飯を食べています。なるべく食費等を抑えたいので。」

中川さんは2019年から堺市にある介護施設で事務員として働いていたが、去年7月に会社側から“ある通知”を受けた。

(中川裕子さん)
「いきなり解雇通知が来ました。あり得ない話だと。」

なぜ中川さんは突如解雇されたのか。

経営悪化を理由に『計26日分の勤務時間増』

去年5月、施設の運営会社から従業員らに『就業規則の変更通知』が提示された。新型コロナウイルスによる経営悪化を理由に以下のような変更をするというものだった。

【就業規則の変更内容】
▼1日の勤務時間を7.5時間から8時間に延長
▼年間の休日は「土日祝日の122日」から「週休2日制の113日」に変更

これを年間の労働時間に換算すると、193時間増加することになり、計26日分勤務時間が増えることになる。しかし施設側は「賃金は据え置く」とした。

(中川裕子さん)
「3年前に就業規則の変更をするというのが決まっていたという説明があったんです。そんな話初めて聞いたという状況で、これはきちんと訴えていかないといけないなと。」

運営会社に“意見”すると本部に呼び出され…命じられた転勤

中川さんは、職場の同僚約20人のうち10人ほどに聞き取りを行い、運営会社に送ったメールで「労働者にとって不利益となる就業規則の変更ですが、説明と同意は労働者に対して必要ではないのでしょうか」などと訴えた。メールを送る前に全職員に対して内容を掲示板で周知し、施設管理者の同意を得た上で「スタッフ一同」と書いてメールを送っていた。
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しかし、1週間経っても返事がなく、対応を求めて同じく「一同」と書いて2通目のメールを送ったという。すると…。

(中川裕子さん)
「本部に呼び出されて『一同とはどういうことか説明しろ』と言われました。1回目のメールは皆の意見をまとめて『一同』として送っていますと。2回目は皆の意見で見てもらって送ったわけではないけれど、前の続きとして催促としてメールを送った。」
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その後、中川さんは再び、本部へ来るように呼び出しを受けた。その時の音声が記録されている。

【ボイスレコーダーの音声より】
(運営会社側)「虚偽の申し立てとして書面にて改善指導を行うものです。」
 (中川さん)「別に私は虚偽で言ったわけではないです。」
(運営会社側)「内容についてというよりは、(2通目のメールの)『一同』というところがどうなんですかという話をさせていただいたんですけれども。」
 (中川さん)「なぜそこの『一同』というところにこだわるんですか。」
(運営会社側)「『一同』っていうところは全員っていうことですので。改善指導にサインされますか、どうされますか。」

中川さんは渋々書面にサインした。すると運営会社側は…。
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【ボイスレコーダーの音声より】
(運営会社側)「これで注意ということで承りました。それともうひとつ、異動命令を出そうと思っています。」

中川さんに対して突然、岡山県への転勤を命じた。しかも回答期限は2日後だった。

【ボイスレコーダーの音声より】
 (中川さん)「通えないと思うのですが、もし断ったらどうなるんですか。」
(運営会社側)「その時お答えいたします。以上です。」

中川さんは転勤を拒否し、一方的に解雇された。

「反対する人を職場から排除するためのもの」と指摘する弁護士も

そもそも、これ以上勤務時間を増やすことができない理由があった。

(中川裕子さん)
「子どもにはもうちょっと豊かな生活ができるように、お給料をもっと確保したり休日を確保したり、子ども中心に考えて仕事を選んできたので。子ども優先に仕事ができるなというところで決めたので、いきなり休日が減ると言われたので、それはちょっと納得できない。」

幼い娘のことを思うと、岡山への転勤も到底承服しがたいものだった。
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こうした運営会社側の対応に問題はないのか。労働法に詳しい弁護士は次のように話す。

(武村二三夫弁護士)
「就業規則変更に反対する人を職場から排除するために、『一同』に文句をつけて、配置転換を出して、ダメだったら解雇というふうに、反対を潰し、中川さんを職場から排除するための一連のものなんだと。就労の中身ではない全く無関係なことでやろうとしている。そういう不当な目的というのは解雇権の濫用。」

運営会社を相手に提訴

そして、今年3月18日、中川さんは運営会社を相手に解雇無効を訴えて大阪地裁に提訴した。

(中川裕子さん)
「コロナを理由に一方的な就業規則の変更をした会社は絶対に許せないです。この法廷で全力で闘いたいと思っています。」

運営会社は取材に対して「係争になる恐れがあるため答えることはできない」としている。

コロナ禍で経費がかさみ経営を圧迫する介護現場の実情

新型コロナウイルスの影響で介護業界では今何が起きているのか。大阪市淀川区でデイサービスなど行う介護施設「レコードブック三国本町」に話を聞いた。取材班が訪れると職員はイスなどの消毒作業に追われていた。

(レコードブック三国本町 田宮康子所長)
「(Q高齢者が1回1回利用する度に消毒?)もちろん1回使ったらやらないと。大変ですよ。なんか1日消毒しています。」

介護施設では、1人でも感染者が出るとクラスターに発展する恐れがあり、高齢者の場合は命に関わる危険も。施設としては細心の注意を払っている。

(レコードブック三国本町 田宮康子所長)
「ペーパーは絶対めちゃめちゃ使うのでしょっちゅう買っています。コロナがあって消耗品や消毒液とか感染対策のサーキュレーターだとかそういうものがのしかかったので、通常よりは支出が多いですよね。」
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1台50万円の業務用空気清浄機や消毒液など新型コロナウイルス対策での経費が経営に重くのしかかっているのだ。

(レコードブック三国本町 田宮康子所長)
「コロナが襲ったことで支出が増える。なんだけれども行政の方からあんまり支援がない。物質的な支援もそうだし金銭面もそうだし。もうちょっと現状を見てほしいですよね。現場がどういうふうになっているのか。」

去年、倒産や休業した介護施設は過去最多に上っている。経営の圧迫で従業員にしわ寄せがいくケースもある。そんな時こそ、適切な説明などが必要ではないのだろうか。

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