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【特集】「世界一の朝食」のシェフが取り組む『SDGs』 "人気のないおいしい魚"が「海の豊かさを守る」ヒントに

2021年03月17日(水)放送

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現在、世界の水産資源の3分の1が乱獲されている状態です。今後、絶滅する種がさらに増えてくるとみられています。こうした中、「世界一の朝食」で知られるホテルの有名シェフが、海の豊かさを守るための新たな取り組みを始めました。

神戸北野ホテル総料理長が抱く食材への“危機感”

焼きたてのパン、低温調理のいちじくジャムに、5種類のフレッシュジュース。フレンチの巨匠・ロワゾー氏が考案して世界の高級ホテルなどが加盟する非営利組織から“世界一”と称された神戸北野ホテルの朝食です。

(お客さん)
「濃厚な味でおいしかったです。」
「パンを持って帰れるみたいなので、食べきれなかったらお土産に持って帰ります。」
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この料理を手掛けるのが、日本のフランス料理界の第一人者で、神戸北野ホテルの総支配人で総料理長の山口浩シェフ(61)。山口シェフは今、食材を巡って、ある危機感を抱いているといいます。

(神戸北野ホテル 山口浩シェフ)
「SDGsが国連で全会一致で採択されて動き始めた。一番大切な日本の自然を守らずして、自分たちの将来、レストラン・旅館・ホテル・料亭、そういったところの将来はないなと。」
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国連で採択された『SDGs=持続可能な開発目標』とは、人類が地球上に住み続けるためにやらなければならない17の目標のことです、その中の一つに「海の豊かさを守る」ことも含まれていて、国連によりますと、世界の魚の約34%が数を維持できないほど乱獲されている状態で、適切な資源管理が必要とされているのです。

漁の現状から見える「海の豊かさを守る」ことへの気づき

早朝、神戸市の垂水漁港に山口シェフの姿がありました。

(神戸北野ホテル 山口浩シェフ)
「今の漁の現状を見てみたいなと思って。漁協さんに無理を言って(漁船に)乗せてもらう。」
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この日、海の資源の現状を知るため、漁に同行した山口シェフ。出港から1時間。底引き網からタイやハマチなど新鮮な魚が引き上げられます。一見大漁のように見えますが、これでも年々漁獲量は減ってきているといいます。

(山口シェフ)「1回の網でこれぐらいとれたらまあまあですか?」
(漁師)「まあまあやね。だいぶ減ってきているのは減ってきているけれども。」
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水産庁によりますと、実際に日本の漁獲量は、日本列島沿岸の開発や地球環境の変化などが理由で、1984年は1282万トンでピークだったのが、その後は右肩下がりとなり、2018年は442万トンと約3分の1にまで減少しました(農林水産省「漁業・養殖業生産統計」日本の漁業生産量より)。
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(山口シェフ)「エイとかがとれたら全部加工場におろすのですか?」
(漁師)「いや、そのまま海に逃がす。」
(山口シェフ)「逃がしてしまうんですか。僕らフランス料理だとエイとか使うんですよ。」

山口シェフ、海の資源を守るためには自然の恵みを有効活用していく必要性を実感しました。

(神戸北野ホテル 山口浩シェフ)
「エイやイシモチという魚がかかるとか、数が少ないと売れないのでリリースするという話を聞いて、そういった魚にしっかりとした値段が付くと漁師さんにとっても良いだろうし、数をばんばんとらなくても(漁師が)生活ができれば、それが環境の保全につながるかもしれないですよね。」

海を取り巻く状況に危機感を覚えた山口シェフ。2019年、日本のレストランやホテルが加盟する団体「ルレ・エ・シャトー日本支部」を代表し、世界に向けて水産資源の保護に取り組むと発表しました。これは日本の団体では初めての試みだということです。

(神戸北野ホテル 山口浩シェフ)
「日本のレストランのブランディングは、希少性といいますか、他にはない物が自分たちのところで食べることができるということだった。手に入りにくいものを食すことがトレンドではなくて、ソーシャルなもの(SDGs)を皆で楽しむことがトレンドになれば、素材が枯渇することなく次の世代も安心して仕事を続けていくことができるのかなと考えています。」

「人気のない魚」を購入

兵庫県明石市の明石浦漁港。水揚げされた新鮮な魚が次々と競り落とされていきます。ただ、山口シェフの目当てはずばり“人気のない魚”です。

(神戸北野ホテル 山口浩シェフ)
「イシモチとかガシラを(仲買人に)買ってもらった。(ガシラは)身自体が大きくないし手間もかかるし、タイ・スズキ・ヒラメとか知られた魚の方が値段が付きますよね。」
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取引先の仲買人を通じて白身魚のイシモチなどを購入。値段はタイの5分の1程度だといいます。
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(仲買人)「僕たちも魚がとれなくなるというか、とってくれる漁師さんがいなくなるのが大問題になってくる。」
(山口シェフ)「タイとかは取り合いになるし、そうなってくると枯渇につながってくるから、まんべんなく全部の魚がしっかりとした値段で売れるというのが。乱獲とか利益が少ないのは誰にとっても良くないんですよね。」

ガシラやイシモチのお味は?

ホテルに持ち帰ってさっそく調理開始です。漁港で手に入れたガシラを丁寧にさばいていきます。

(神戸北野ホテル 山口浩シェフ)
「さばきにくいけれども、このままからあげにしてもいいし、ブイヤベースにしたら味が出るしおいしい魚ですよ。」
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イシモチも鯛に引けをとらない味だといいます。

(神戸北野ホテル 山口浩シェフ)
「身もきれいでしょう。今の時期は白身魚が少ないから、商品価値が付けばすごく重宝する魚じゃないですかね。」

切り身にした後は新鮮さを活かすために低温のオイルで軽く火を通してうまみを引き出します。春の野菜と一緒に色鮮やかに盛り付けて、山口シェフの試作「海と山の恵み~春の香りと共に~」が完成です。

ホテルでカフェを利用していたお客さんに試食してもらいました。

(お客さん)「すごくおいしいです。臭みも無くて、ぷりっとしていて歯ごたえがあっておいしいです。」
  (記者)「イシモチやガシラは食べたことはありますか?」
(お客さん)「いや、聞いたこともないです。初めて聞きました。見た感じタイかなと思いました。」

評判は上々のようです。

「自分たちの役割を果たしていきたい」

山口シェフは今後も人気のない魚の可能性を探り、レストランでも「SDGsメニュー」を提供していきたいと考えています。

(神戸北野ホテル 山口浩シェフ)
「この神戸、瀬戸内の魚は世界に誇れる魚なんですね。(人気のない魚に)スポットライトをあてることが大切だなと、改めてお客さんに召し上がっていただいて実感しました。(SDGsは)日本では始まったところですよね。ここで加速度的に自分たちの役割を果たしていきたいなと思います。」

(3月17日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)

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