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【特集】「オーケストラはピットから舞台上へ」「合唱団はマスク姿」コロナ禍のオペラ公演 アイデアを駆使して観客から盛大な拍手

2021年03月12日(金)放送

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今年3月、滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールでオペラ『ローエングリン』が上演されました。去年3月の公演は無観客のうえ、インターネット配信だったため、観客を入れての上演は1年ぶりです。豪華なセットを前にオーケストラの生演奏に合わせて歌声を響かせるオペラ。総合芸術といわれ、多くの人がかかわるだけに新型コロナウイルス対策は必須です。劇場側もオペラらしい華やかな演出と感染防止対策の両立を目指して試行錯誤していました。

観客を入れてオペラ公演 ワーグナーの名作『ローエングリン』

3月6日、滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールに歌声が響きました。ワーグナーの名作オペラ『ローエングリン』です。
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ピットは密が避けられずオーケストラは舞台上に 歌手から指揮者の姿が見えず!?

本番10日前の2月24日、この日はホールで歌手とオーケストラの初顔合わせが行われました。今回の公演では、ソロ歌手・オーケストラ・合唱団の総勢151人が舞台に上がります。
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通常、オペラは舞台上に巨大なセットが組まれることが多く、そのためオーケストラは「ピット」と呼ばれる舞台手前の低く狭い場所で演奏することになります。ところが、いまはコロナ禍。ピットの中では「密」が避けられません。そこで、巨大なセットは断念し、オーケストラは舞台の上で演奏することになりました。
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その結果、演技もするソロ歌手は指揮者よりも前で歌うことになり、直接指揮が見えなくなってしまいました。
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そこで、前方に置かれたモニターに指揮者を映し、この課題を乗り越えることにしました。ただ、指揮者は次のように話します。

(指揮者 沼尻竜典さん)
「(指揮で)思いは普段の3倍くらい出さないとカメラを通して歌手に伝わらないからがんばってますけど、さらにマスクもしてるからハアハアしてきますよね。」

合唱団は全員マスク着用で飛沫防止

一方、オーケストラの後ろには約50人の合唱団が並びます。飛沫防止のため、合唱団は全員マスクを着けたうえで歌うことになりました。

(声楽アンサンブル 谷口耕平さん)
「(通常と違うところは)それはもうたくさんあります。まずマスク。本番もマスクをつけて歌うので。合唱の中にもいろんな役があって、一緒に芝居をしていくんですが、(ソロ歌手と)離れているのもあるし、なかなか役に入れない。」

「びわ湖ホール」開館以来20年以上、自主制作オペラを続けてきた

去年3月のオペラ公演は、新型コロナウイルスの感染が拡大する中、苦肉の策として、無観客のうえ、インターネット配信で上演されました。難しい判断を迫られたなかで中止を選ばなかったのは、びわ湖ホール開館以来20年以上、自主制作オペラを続けてきた歴史があったからでした。館長は継続する意義をこう説明します。
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(びわ湖ホール 山中隆館長)
「公立劇場の使命として、こういう時期でも公演を続けることは必要だと思っています。アーティスト側に対して、出演していただく舞台を提供し続ける。スタッフも技術者もたくさん抱えているので、とにかくやっていかないと彼らの仕事がない。」

舞台の制約はアイデアでカバー それでも譲れない演出も

本番8日前の2月26日、この日から演出家の粟國淳さんも合流しました。

(出演者らに話す粟國淳さん)
「今回の舞台はとにかくワーグナーの音楽とドラマを届けましょうよ、お客様に。そこが一番なんだと。」
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オペラ『ローエングリン』は、無実の罪で裁きにかけられようとしている王女エルザを白鳥とともに現れた騎士ローエングリンが救い出そうとする物語です。打ちひしがれたり愛を語ったりする場面も多く登場しますが…。

(粟國さん)「基本的に、ひざまずくとか手をつけるのもルールとして避ける。」
  (歌手)「床が汚れているからか。」
(粟國さん)「結局そうなんですよ。飛沫は下に落ちちゃうから。」

合唱団と違い、ソロ歌手は本番中マスクを外すため、常に飛沫を意識しながらの演技を強いられます。
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そのころ、大ホールでは舞台の設営が進んでいました。合唱団が乗る舞台後方のひな壇には飛沫防止のフィルムが貼られます。
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そして、舞台前方には大きな台が設置されました。合唱団とオーケストラが舞台上の大部分を占めるため、歌手が動けるのはわずかなスペースのみ。奥行きのなさを高低差でカバーしようという粟國さんのアイデアです。

(演出家 粟國淳さん)
「アクティングエリアもすごく狭いので、各場面の違いを照明と段差をつけることによって、例えば一番上の段には王がくるとか、そういう心理的な条件もこの高低感で出せればなと。あんまり奥行きは使えないので。」
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決闘シーンなどソロ歌手同士の接触が避けられない場面では、代わりにスクリーンにその様子を映し出して表現することに。
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ただ、結婚式のシーンだけはどうしても譲れませんでした。

(演出家 粟國淳さん)
「『手を取る』シーンでは、歌う前に手の消毒をやって、後でもやるっていう約束の中で。どうしてもポイントの結婚で一回も手を取れないのは厳しいかなと。その代わりここだけという約束。本当は抱きついたりしたいんだけど、それは一切なしで。」

ブラボーのかけ声が禁止される中、観客から盛大な拍手

そして、3月6日に迎えた『ローエングリン』本番初日。
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あの無観客上演から1年を経て観客が戻ってきました。作り手たちの思いはどのように響くのか…。
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ブラボーなどのかけ声が禁止される中、盛大な拍手がホールを満たしました。

(来場者)
「(去年は)配信を拝見しました。」
「ひさかたぶりに生演奏を聴くことができて、本当にきょうは幸せな一日でした。」
「合唱も素晴らしかったです。マスクしてみんな歌われて感激しました。」
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(演出家 粟國淳さん)
「拍手をいただいたその瞬間が我々舞台とお客様との会話ができる瞬間だと思いますが、気持ちはお互い伝わったのではないかなと。今度はお客様の『ブラボー』も聞きたいですね。」

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