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【特集】「津波火災」危険性は"大阪"にも...沿岸部タンクからの石油流出シミュレーション さらに最悪の事態『ボイルオーバー』とは

2021年03月11日(木)放送

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東日本大震災で津波の後に炎に包まれた宮城県気仙沼市。その原因は流出した石油タンクだった。南海トラフ巨大地震による津波で、大阪湾沿岸の石油タンクも同じような被害をもたらすのか。今回、取材班は専門家にシミュレーションを依頼。大阪の中心部でも「津波火災」の恐れがあることがわかった。

2011年3月11日、東日本大震災が発生した。巨大な津波が東北地方を次々と襲い、死者・行方不明者は1万8425人に上っている(警察庁発表)。

宮城県気仙沼市。沿岸部に設置されていた20基以上の重油タンクなどが津波で流された。
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その夜、流出した1万キロリットル以上の重油などに引火。次々と家屋に延焼するなどして、津波の後、町が炎に包まれた。「津波火災」の恐怖を目の当たりにした。

大阪も「津波火災」の危険とは隣り合わせ

流体力学を専門とする横浜国立大学大学院工学研究院の高木洋平准教授は「大阪も津波火災の危険と隣り合わせだ」と指摘する。

(横浜国立大学大学院工学研究院 高木洋平准教授)
「大阪湾には現状、コンビナート地域に石油タンクがあるので、大規模な地震が来た際には大規模な津波によってタンクからの油が流出すると考えられます。自動車とか電線が破損して電気的な火花によって(引火が)起こるのではないかと考えられています。」
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大阪市此花区の北港から大阪府南部の泉北地域に至るまで数多くのタンクが並ぶコンビナートが広がっている。この一帯を襲うと想定されるのが「南海トラフ巨大地震」による津波だ。
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南海トラフとは紀伊半島の南側などの海底を横切るプレートの境界部分のことで、ここを震源に今後30年以内に70%~80%の確率で巨大地震が起きて津波が発生すると想定されている。

和歌山県串本町では、地震発生からわずか3分で津波に襲われ、その高さは最大で17mにも及ぶという。津波は沿岸部を飲み込みながら北上して約2時間後に大阪市内に到達、最大で5mもの津波に襲われるというのだ。この津波で北港など大阪市内の湾岸エリアではタンクが流されるなどして約4500キロリットルの石油が流出すると大阪府は試算している。

大阪で石油はどのように広がっていく?

では、流出した石油はどのように広がっていくのか。取材班は今回、高木准教授に依頼して大阪府の試算を基にシミュレーションしてもらった。

(横浜国立大学大学院工学研究院 高木洋平准教授)
「(画面上の)1粒は石油1キロリットル。油が流出して拡散していく様子がわかります。」
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流出した石油は南港など湾岸部全域に拡散しただけではなく、津波とともに押し流され、45分後に此花区の一帯へと広がった。
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その後の第2波の影響で、2時間後にはJR環状線を越えて福島区の中心部へ到達。

さらに第3波が襲う3時間後には、福島区全体に広がったほか、港区では弁天町駅近くまでやってくることが新たに判明した。広がった石油にひとたび引火すれば、市街地は津波火災に襲われてしまうと考えられている。

(横浜国立大学大学院工学研究院 高木洋平准教授)
「(Qずいぶん内陸部までいきますね?)そうですね。淀川付近は元々土地の高さが低いので、津波の浸水が広がってくるので、津波が内陸まで到達して、同時に油が拡散していく。」
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さらに、大阪湾に浮かぶ船舶が津波火災の被害を大きくする恐れもあるという。

(横浜国立大学大学院工学研究院 高木洋平准教授)
「(津波で)船が座礁したり転覆したりする可能性はあるかなと思います。船舶自体も燃料を積んでいるので油の流出源となるかもしれません。」

タンク火災で起きる最悪の事態「ボイルオーバー」

2003年の十勝沖地震。激しい揺れをきっかけに北海道苫小牧市の石油タンクで火災が発生した。国の想定では南海トラフ巨大地震で最大震度6強の揺れに襲われる大阪もコンビナートで大規模火災が発生する恐れがあるという。こうしたタンク火災で起きる最悪の事態が「ボイルオーバー」だ。一体、どんな現象なのか。
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ボイルオーバーの再現実験(海上災害防止センター提供)。原油からは1mほどの炎が上がっている。
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ところが約2時間後、爆発的に勢いを増した炎。ボイルオーバーが発生した。6mほどの高さにまで達している。実際のタンク火災の場合、火がついてから10時間ほどでボイルオーバーになる恐れがあるという。

(大阪大学大学院工学研究科 倉敷哲生教授)
「油の燃えやすい成分がどんどん燃えていって、高温の部分が減ってはいくんですけれど、どんどん水の層と近くなる。そしてそれが水と近づいた時に一気に過熱されました。これが『ボイルオーバー』と呼ばれる現象です。」

材料工学などを専門とする大阪大学大学院工学研究科の倉敷哲生教授。延焼の危険性がある『ボイルオーバー』は津波火災でも発生する恐れがあるという。

(大阪大学大学院工学研究科 倉敷哲生教授)
「本来、海水の上に油が何もない状態で漏れた場合、油も当然広がって薄くなる。これが領域が閉ざされた場合、例えばガレキや木材で囲まれた場合にはそこに油が滞留するので、そこに着火すると『ボイルオーバー』と同じような現象が起きると危惧しています。」

90基以上のタンクがある製油所の対策は?

大阪府堺市西区にあるエネオス堺製油所。敷地内の90基以上のタンクが高いコンクリート壁に囲われている。

(エネオス堺製油所 南利彦グループマネージャー)
「(壁)は2.5m以上あると思います。津波の最大の高さが1.7mと想定しています。これが津波で影響を受けるということはないです。」

一定の大きさ以上のタンクには遮断弁が設置されていて、配管が壊れても石油の流出を最小限に抑えられるという。
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万が一、タンク火災が起きた場合に備えて用意されているのが、組み立て式の「大容量泡放射システム」だ。ボイルオーバーが発生する前に自力で消火できるように各地域ごとに配備されている。

10年前に起きた津波火災。同じ被害を繰り返さないためにも備えが重要だ。

(3月11日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)

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