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【特集】時価100万円超の『現代アート』が飛ぶように売れる "絵画投資"に注目集まる一方で危惧する声も

2021年03月10日(水)放送

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コロナ禍が長引く中で実体経済とかけ離れた株価の高騰が続いています。一部の富裕層で巻き起こるコロナバブル。そんな時代に熱い視線が注がれているのが「絵画への投資」です。次から次へと飛ぶように売れるアートの現場を取材しました。

高額で売れた現代アート作品

3月7日、東京・銀座にあるギャラリーで展示されていたのは、バラバラにしたバイオリンをキャンバスに散りばめたオリバー・ビアさんの作品です。

(「THE CLUB」マネージングディレクター 山下有佳子さん)
「大体700~800万円くらい。これは展覧会の初日に売れました。」

こうした時価100万円を超える現代アート作品が今、飛ぶように売れているといいます。

(「THE CLUB」マネージングディレクター 山下有佳子さん)
「展示をされている作家のことを知らない、もしくは極端な例で言うと、アートを買ったことがないという方でも、その場で500万円くらいの買い物をされる方もいるんですよ。」

今年2月15日、日経平均株価がバブル景気以来30年ぶりに3万円を超えました。株投資などで億単位の資産を築いた人=“億り人”という言葉が躍る中、絵画に投資する人が急増しているのです。
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高額な絵画が次々と落札されるオークション会場。参加者の中には「5000万円、1億円出しても構わない」と話す人もいます。

アートに投資する会社員「特別感が魅力」

これまでは“富裕層が所有する”というイメージが強かったアート市場ですが、最近では幅広い層の人が投資を目的に絵画を購入しています。東京都内に住む会社員の黒田将昭さんは、なんと14もの作品のオーナーです。

(会社員 黒田将昭さん)
「リスク分散を考えてなるべく多くの作品に少額ずつ投資をしようかなと。」

黒田さんが利用するのは、作品のオーナー権が1枠100円から買えるというサービス「STRAYM」です。このオーナー権を売買することで利益を得るという仕組みです。アンディ・ウォーホルの作品は時価2000万円ほどですが、黒田さんはそのうちの3200円分を購入。「オーナー権を買いたい」という人が増えたため、今ではその価値が4860円まで上がりしました。

(会社員 黒田将昭さん)
「絵画の所有権を自分で持っていると、ほかの株式投資とかでは味わえないような“特別感”が魅力かなと。うまくいけば数千倍とか数万倍とか大化けするのではないかという期待感とか夢が持てる。」
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2年前にこのサービスを立ち上げた長崎幹広さんは、株式以外の新たな投資先を探していた人を中心に利用者が右肩上がりで増えているといいます。

(ストレイムアートアンドカルチャー 長崎幹広CEO)
「今の利用者数は4000人弱くらいですね。一部の作品に関しては(価格が)やや横ばいになっているものもあるが、基本的には上がり続けている作品がほとんどになっています。」

若手アーティスト作品のアートフェア 数時間で約半数が「売約済み」に

こうしたアート市場の盛り上がりは関西でも。今年3月6日、京都文化博物館で開催された「アーティストフェア京都2021」。気に入った作品があればその場で購入することができます。作品を展示していたのは、多くが美大を卒業したばかりの若手アーティストです。
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食品サンプルをモチーフに現代の消費社会を風刺した作品(『BlackBox』シリーズ/作:札本彩子)や、コロナ禍で人がいなくなってしまったオフィスビルの写真を用いた作品(『mass』シリーズ/作:前端紗季)など、独創的なアートが並んでいます。
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チーターが描かれた絵画『牽制し合うチーター』は去年に大学院を卒業したばかりの高瀬栞菜さんの作品です。

(若手アーティスト 高瀬栞菜さん)
「(この作品は)傷つけ合いながら支えあっているチーターなんですけれど、(絵に描かれている)1つの椅子を2匹で狙い合っていて、牽制し合っているっていう様子です。そういうことって人間の世界にもあるなと思って。これで15万円。作品の値段を自分で付けているんですけれど、上げるタイミングとかは結構慎重に考えないといけないなと思っています。」

チーターが描かれた作品には「売約済み」を示す赤いタグが付けられています。この日はオープンからたった数時間で会場にあった作品の約半数が売れていきました。

来場者たちは『未来のバンクシー』や『未来のバスキア』に期待して、青田買いさながらに絵画を購入していくのです。

(来場客)「購入も検討しようかなと思って。家に飾るというところで。(Qコロナ禍でアート市場が盛り上がっている?)それはよくわかります。個人的にも。家にいる時間が長くなりますし、明るいものや自分の好きなものに囲まれるのはすごく重要。」
(来場客)「1枚買ってしまったらもう止まらない。(投資した)総額は100万円はいっていないと思います。自分の気に入った作家・作品を集める。その結果、将来子どもたちの資産になったらいいかな。」

40点の現代アートを所有する人の“買えない喜び”

大阪市城東区にある現代アートのギャラリー「GalleryNomart」。展示されていたのは独特のユーモアと緻密なタッチで知られる大岩オスカールさんの新作版画『QuarantineDrawingSeries』です。作品を見つめていたのは理学療法士の播磨勇弥さん。5年ほど前から休みの日に絵画展などに足を運んでいるといいます。
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(現代アートを収集 播磨勇弥さん)
「インターネット上で見つけて買ったのが最初です。僕は若い作家さんを買うことが多くて、一緒に成長を追いかけていけるというか、そういうところがすごく楽くて。そういうのが自分の仕事とかのモチベーションに繋がることもある。」

絵画への投資熱が高まる前から趣味で収集を始め、京都を拠点に活動する彫刻家・名和晃平さんの作品『Moment#104』など現在40点もの現代アートを所有しています。新型コロナウイルスの影響もあって価格が高騰し続けているといいます。

(現代アートを収集 播磨勇弥さん)
「今まで買えていた作家さんも買えなくなることもあります。新しく入ってきた方で社長さんとかも結構おられるので資金面では敵わない。やっぱり買えないことは悔しいんですけれど、でも応援してきた作家さんが人気になるのは“買えない悔しさ”と同時に“うれしさ”もあるので。」

“投資目的”としてのアートを危惧する声も

投資気運の高まりで裾野が広がるアート市場。しかし危惧する声も上がっています。

(ミヅマアートギャラリー 三潴末雄CEO)
「『将来、資産価値になりますよ』みたいな形をキャッチフレーズにしていることについては、僕は全く否定します。そんなものが資産価値になるわけがないんですよ。」

日本を代表するアーティストを世に送り出してきたギャラリーで代表を務める三潴末雄さんは『アートは株券ではない』と指摘します。

(ミヅマアートギャラリー 三潴末雄CEO)
「100万人に1人なんですよ、才能が花開く、将来“資産価値”になれるような作家たちって。それくらい厳しいものなので。パトロン的にサポートするということについては賛成だけど、そこに提灯を付けて『これを買っておけば値が上がるんじゃないか』みたいな、転売的なお金がお金を生むみたいな形を考えているんだったら、それはおやめになった方がいいんじゃないですか。」

空前のコロナバブルに沸くアート市場。狂騒曲はいつまで続くのでしょうか。

(3月9日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)

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