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【特集】小さな町での『メガソーラー計画』1000人集団提訴に発展 なぜ一部の町民しか知らなかった?住民の不安と怒り

2021年03月08日(月)放送

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奈良県の小さな町で進むソーラーパネルの建設計画。町の広範囲で工事が行われる予定ですが、事前に知らされていたのは一部の町民だけでした。建設の反対を訴える町民ら1000人が裁判を起こす事態となっています。

自然豊かな町の「メガソーラー建設計画」

奈良県北西部に位置する人口約1万8000人の平群町。8割が山林の自然豊かな町で突如持ち上がったのが「メガソーラー建設計画」でした。50年近く、平群町に住んでいる多田恵一さん(78)。
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(多田恵一さん)
「最初はクリーンエネルギーって良いんじゃないかと思ったんですよ。思っていたんですけれど、調べれば調べるほど、おかしなことがどんどん起こってくる。平群の自然を愛して移り住んだ方がたくさんおられるわけです。送電線のことだったら電磁波の被害とかも心配だし。土石流の心配もせないかん。」
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メガソーラーの建設が計画されているのは、町の西側にある山間の約48ha、甲子園球場の12倍の広さです。ここに5万枚のソーラーパネルが設置される計画です。発電された電気は町道の下に埋設される2万2000ボルトの高圧電線を通って3km先の変電所へ送られることになっています。
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平群町では、4年前に別のエリアで約2haのソーラーパネルの建設が行われていて、ほぼ完成しています。

(住民)「ここは里山でしたからね。春夏秋冬にはいろいろな小鳥とかも飛んできて、鳴き声もね。悲しいというよりかは寂しいですね。朝起きて窓を開けてもあの状態(ソーラーパネル)でしょ。窓を開けた時点でね。」
(住民)「完全に同意といった格好ではなくて、はじめのうちは住民もだいぶ反対したんですけれども、奈良県とかが許可を出しているんでね。」

ソーラーパネルの建設は、奈良県が工事計画を審査した上で業者に開発の許可を与え、その後、業者が地元の同意を得て町と協定書を交わしています。

町が作成した事業者への指導要綱には「建設地に隣接する地区のみに周知」

平群町が独自に作成したソーラー設備の設置に関する事業者への『指導要綱』。

【指導要綱より一部抜粋】
『設置事業を行うための測量、伐採その他の準備行為を行おうとするときは、事前に町に相談するとともに周辺住民等に周知するものとする。』

“周辺住民に事前に周知する”ということが明記されていますが、この「周辺住民」については。

【指導要綱より一部抜粋】
『設置場所及び設置場所に隣接する土地が所在する自治会をいう。』
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平群町が作成した要綱は「メガソーラーの建設地に隣接する櫟原地区のみに周知すればよい」というものでした。高圧電線の埋設工事は町内の櫟原地区、緑ヶ丘地区、椣原地区、椿台地区、西向地区、梨本地区の6つの地区で実施されますが、周辺地区の住民には事前に計画が知らされないまま、櫟原地区の同意だけで2019年9月に業者は町と正式に協定書を締結しました。

自宅前の道路の真下に「高圧電線計画」に困惑する住民

西向地区に住む前田傳さん(76)。自宅前の道路の真下を高圧電線が通る計画になっています。

(西向地区の住民 前田傳さん)
「最初にここを通るという図面を見たのが去年の3月です。それから何の説明もなしに。県営水道のパイプが家の前の道路に通っています。太いやつ。道路をまた掘って高圧電線を埋設すると(業者は)言っています。掘り返して通行止めになりますね。困ります。生活道路やからね。」

西向地区では生活道路の下に高圧電線が埋設される予定になっています。さらに別の住民は。

(西向地区の住民)
「(Qご自宅はどの辺ですか?)この坂の上です。ずっと電磁波が通っているというのが。通れなくなるという工事の時の不便さもあるけれども、その後にずっとそんなものが蜃気楼のように漂っているのかと思ったら嫌ですよね。」

工事の影響だけではなく、健康被害を心配する声も上がっています。こうした地域住民には同意を求める必要はないのでしょうか。
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電線を町道に埋めるなど公道に物を設置する際に町へ提出する『道路占用許可申請書』には、道路を「通行止め」にする場合は同意書を添付するように記載されています。しかし、業者側が町に提出したものを確認すると、「通行止め」にすると記されている一方、同意書は添付されていません。こうした資料を見た住民らは不信感を募らせて、何度も業者と町に説明を求めました。

「同意は義務ではない」大規模な工事始まる

そして去年10月、西向地区の住民に対してようやく説明の場が持たれました。

【説明の場】
  (住民)「西向地区に対して何の説明も何の告知も何にもなしに、こんな失礼な交渉はないで!住民への安全の視点、例えば電磁波だとか。いろんなことが出てきますやん。」
 (業者側)「当然ながら地元の方の安全を守ることは大前提の話ですので。」
  (住民)「同意書なしで本当にいいのかどうか?」
(町の職員)「同意は必要ありません。『必要』とは書いていないんですよ。」
  (住民)「書いてあるじゃないの、ここに!」
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『道路占用許可申請書』をよく見ると、たしかに住民の同意が“必要”という記載はありません。同意は義務ではないということなのでしょうか。業者側は今後、工事をする際に住民の同意を求めていくということです。
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今年2月25日、ソーラーパネルが設置される山林ではすでに大規模な工事が始まっています。

(多田恵一さん)
「今はここの自治会だけが同意していますが、他の地区は自治会そのものが反対していますからね。これは住民無視のやり方かなと。」

道幅狭すぎる迂回路

西向地区の住民らは今年2月になって工事で生活道路が通行止めになった際の迂回路の計画について知らされました。しかし、業者が迂回路として説明している道は、車両が通行できるような道幅ではありません。
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記者が道路の一部の幅を測ってみると約1mでした。仮に工事が始まれば生活に大きな支障をきたすことは避けられそうにありません。

町の見解は?

小さな町を分断させているメガソーラーの建設問題。そもそも計画の進め方に問題はなかったのか。町に話を聞きました。
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(住民生活課 大浦孝夫課長)
「(業者は)国や奈良県の許認可を得て事業を行っているものです。町が事業を止める権限はないことから、町として必要か必要でないかの見解を持つ立場にはないと考えています。(Q電線が通るということで住民の同意は十分だった?)町民全体の合意形成を図っていく意味では、設置場所の自治会だけではなく、広く住民に対して事業の説明を行って、できるだけ真摯に丁寧に行うように、(業者側に)指導はしているところでございます。」

町民ら1000人「建設差し止め」求め提訴へ

そして、今年3月8日。平群町の町民ら約1000人が、メガソーラーの業者に対して建設差し止めを求めて奈良地裁に提訴しました。原告らは“山林の伐採で大雨による災害が発生する危険性も高まる”などとも主張しています。業者側は「訴状が届いておらずコメントは差し控える」と回答しています。

(3月8日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)

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