【特集】『にしきた』の夜に立つ"ガールズバー"の客引き 塾帰りの子ども達も通るのに...住みたい1位の街で異変
2021年02月22日(月)放送
大小100近くの学習塾がひしめく阪急西宮北口の駅前が、数年前から夜になると街の雰囲気が変わるといいます。地元住民らが“風紀が乱れる”と困惑しているのは『ガールズバーの客引き』です。現場の実態を取材しました。
住みたい街ランキング1位の『にしきた』で異変
兵庫県西宮市の「阪急西宮北口駅」。周辺は『にしきた』の愛称で親しまれ、関西屈指の文教地区として「住みたい街ランキング(関西・SUUMO調べ)」では8年連続で1位を取り続けています。
(住民)
「住みよい街です。お買い物するのにもちょこちょこっとお店があって便利。」
「飲み屋もあり塾もありというある意味バランスとれた街かな。」
しかし、数年前から駅北側の商店街で夜になると“異変”が起きているといいます。住民からは困惑の声も聞かれます。
(住民)
「西宮は文教都市というのをうたっているので、街のイメージとちょっと合わないんじゃないかな。」
「こういうことが西宮でもあるんだと思って、ちょっとびっくりしている…というか引いている。」
商店街に立つ「客引き」
憧れの街・にしきたで起きている異変。今年1月上旬、取材班が夜になるのを待っていると、午後6時前に商店街の入り口に若い女性2人が現れました。その後も次々と短いスカートを履いた女性が現れ、あっという間に10人を超えました。
商店街を確認すると、点々と路上に立つ女性たちが、通り過ぎていく男性に声をかけてチラシを配ろうとしています。女性たちは『客引き』です。
(記者リポート)
「警察官が女性に声をかけていますね。職務質問でしょうか。」
兵庫県では客引き防止に関する条例を定めていますが、禁止されているのは人の通行を妨げる行為などで、立っているだけでは条例違反にはなりません。しかし“店の前に立たれる”などと飲食店とトラブルになるケースが相次いでいて、警察も警戒を強めています。
客引きの女性に囲まれてしまう記者
では一体どんな風に声をかけてくるのか、取材班が商店街を歩いてみました。すると、すぐに1人の女性が話しかけてきました。
(客引き)「1500円なんですけど、他は3000円なんで…。」
客引きの女性の問いかけに記者が足を止めると…。
(記者)「何時までやっています?」
(客引き)「朝の5時。」
(記者)「朝の5時までやっているんですか。」
(別の客引き)「3時までやっています。」
(記者)「3時までですか。」
気づいた時には5人以上の客引きの女性に囲まれていました。コロナ禍ですが客引きたちはマスクを付けておらず「密」な状態に。
(記者)「ずっと皆さん立っているんですか?」
(客引き)「そうですね基本。」
女性たちはガールズバーの客引きでそれぞれの店のビラを手渡してきます。
さらに商店街の中を歩くと別の客引きが声をかけてきました。
(記者)「さっきもめっちゃ囲まれたんです。」
(客引き)「もう今行きましょう!今!」
取材班が商店街を100mほど歩くと9人の客引きに声をかけられました。歩行者が囲まれたり、次から次へと声をかけたりする客引き行為は警察の摘発対象にはならないのでしょうか。
取材を始めてから4時間が経ち、気温も氷点下になる中、女性たちは客引きを続けていました。
注意喚起する商店街 塾帰りの子どもたちの近くで客引き行為
こうした事態に頭を抱えているのが地元の「にしきた商店街」です。ガールズバーが乱立し始めたのは2~3年ほど前で、現在は8店舗ほどあるといいます。去年10月から“悪質な客引きに注意!!”と書かれたのぼりを立てて注意喚起をしていますが、客引き自体はなくならず、風紀が乱れるなどと懸念する声が上がっています。
(にしきた商店街 谷田貝充彦会長)
「ここは教育都市というか、みんな誇りをもってここに集まって住んだり商売したりしているので、それが今その誇りが少しずつ変わりつつある。短いスカートを履いて胸も出した服装の女の子が立つんですね。お母さん方が息子とか娘にそういうのを見せたくないじゃないですか。」
商店街によりますと、にしきたエリアには大小100ほどの学習塾がひしめいていて、夜7時~8時には塾帰りの児童の多くが商店街を通って家に帰っていくといいます。取材班が客引きの様子を確認していると、午後7時すぎ、塾帰りとみられる児童らが客引きを避けて帰っていきます。
さらに、未成年と思われる男性に声をかけ、ビラを配ろうとする客引きの姿もありました。こうした現状に保護者らはどう感じているのでしょうか。
(中学3年生の息子とその母親)
「息子がもうちょっと年上に見られたらしくて誘われて、(客引きが)息子の近くへ来て、息子を見て『あ、すいません』と離れられたということがあったと聞いているので。不安な時はありますよね。」
(住民)
「治安がいいなとは思わないです。目に入りますからね。親としては望ましくはないかなと思います。」
ガールズバーの店主「ビラを配っているだけ。西宮北口を汚したいわけではない」
取材を始めて1か月後の2月11日。客引きが現れたのは午後3時すぎでした。その後、何時間も街頭に立ち続け、飲食店への時短営業が要請されている午後8時をすぎても数人の客引きは営業を続けていました。
こうした状況に商店街の飲食店からは…。
(飲食店の店主)
「みんなしんどい中で、お客さんや常連さん来て『もう一杯いいか?』と言われてもお断りして帰っていただくわけです。ガールズバーがどうとか、それも立派なお仕事ですから否定する気もないですけれども、(緊急事態宣言中の)こういう状態でルールがある中できちっとやらないといけないんじゃないでしょうか。」
地元商店街から不満が噴出する中、ガールズバーの店主の1人が電話取材に応じました。
(ガールズバーの店主)
「開店当初はやっぱり難しいじゃないですか(店に)入ってきてもらうって。あくまで僕らがやらせてもらっているのはビラ配っているだけなんですね。『バーです』という形で渡しているんですけれどね。ルールを作るのであれば、他店舗とかもみんなルール守った上でやらないと、うちだけだめというのはそれはそれで違うんじゃないかな。」
―――ミニスカートで立っていることについて子どもへの影響が心配という声もあるが?
「子どもへの影響がっていう親御さんの気持ちもわからないことはないですけれど、子どもに悪影響を及ぼしているのだったら、ミニスカートを履いているっていうのを法で禁じたらいいんじゃないかな。いるだけで子どもに悪影響という方が問題じゃないかなと僕は思うんですけれどね。西宮北口を汚したいわけでもないですし、もっとお互いがいいように進められたらいいなと思っているだけなので。」
にしきたの街で夜ごと繰り広げられるガールズバーの客引き行為。地元商店街や住民らから理解を得られる日は来るのでしょうか。