【特集】"退院できないアフターコロナ患者"を受け入れる地方病院「ここでできることはささいなことでもやる」
2021年02月08日(月)放送
拠点病院の病床がひっ迫し自宅待機者が相次ぐ中、“アフターコロナの患者”を積極的に受け入れている地方の病院があります。地方の病院が果たす役割とは。
医療まで担う「姫路市保健所」
2月4日の兵庫・姫路市保健所。自宅待機が続く新型コロナウイルス患者への電話対応に追われていました。そんな中、無症状で自宅待機していた患者が、突然急変したという知らせが届きました。保健師が医師である毛利好孝所長へ報告します。
(保健師)「基礎疾患がぜんそくがある方なんですけれど、今は体温が37.5℃なんですね。胸がちょっと苦しい、息苦しいと。」
(毛利所長)「薬飲んでいるのかな?」
(保健師)「元々かかりつけ(の病院)もないと仰っている。」
(毛利所長)「ぜんそくなのか影がでてきたのか判別がいるので、うち(保健所)でレントゲン撮ろうか。若い人やから来られるな。」
本来なら病院での受診が望ましいものの、新型コロナウイルス患者はなかなかそうもいきません。防護服に着替える職員。急遽、保健所で患者のレントゲンを撮影することになりました。
(姫路市保健所予防課 松本智司主任)
「病院にもなかなか受診できない状況ということもありますので、かなり患者さんもしんどい思いをされているのかなと。(保健所の)義務ではないが、できる限りのことを。」
車でやって来たという新型コロナウイルス患者。診断の結果、容体の悪化は持病のぜんそくが原因だとわかり、医師である毛利所長自ら処方箋を出しました。
(姫路市保健所 毛利好孝所長)
「保健所としては異次元ですね、完全にね。『保健所が医療をやる』というのはそもそも法律に書いていないので。現状は明らかにやった方が市民に良い結果がもたらされるだろうという確信がありますので。」
検査から受け入れまで担う「たつの市民病院」
兵庫県たつの市にある「たつの市民病院」。PCR検査から新型コロナウイルス患者の受け入れまでを担っています。
検査はドライブスルー形式で行われていて、朝から防護服を着た職員が対応に追われています。
こちらの病院では2020年11月、敷地内に新型コロナウイルスの感染が疑われる患者専用の病棟が建設されました。
(たつの市民病院 三村令児病院長)
「“発熱専用の外来”があって、ここで検査・診察できるように作りました。うちはちゃちなものですけれども、新型コロナウイルスが疑わしい人は“発熱専用の外来”に入って検査する。第1波が過ぎたあたりから、例えば下痢の人がいる、熱が出てるけど新型コロナウイルスじゃない人もいる。ところが隣見たら新型コロナウイルスの陽性者が出た、この人らはどうなるのと。結果調べた後で大騒ぎになることが何度かあった。」
専用病棟内には陰圧装置などがあり、院内感染などのリスクを防ぎながら、新型コロナウイルス疑いの患者だけではなく自宅待機中の感染者も診察しています。
(たつの市民病院 三村令児病院長)
「(自宅待機の新型コロナウイルス患者を)10人調べて肺炎のない方は2人くらい。大なり小なり残りの方には肺炎の所見を認めたというのがこれまでの経験ですね。(Q入院はできない?)『すぐに今どうぞ』というわけにはいかないので、仕方なく『出せる薬は全部出すから家で頑張りなさいよ』としか言えないです。」
地方でも自宅待機となる患者は多いといいます。
重症化しても転院先見つからず…入院患者が亡くなる
たつの市民病院では新型コロナウイルスの中等症患者を受け入れていますが、病床はわずか数床で、入院が必要だと判断しても受け入れが難しい状況です。医療設備は中等症患者までしか対応できず、2020年の末には入院患者が突然重症化して厳しい事態に陥ったといいます。
(たつの市民病院 三村令児病院長)
「もちろん患者の転院依頼をかけているんだけれども、どんどん悪くなりながら、一向に転院の受け入れが見つからなくて、年明けにここで亡くなられた方がいます。起きた事実は受け入れざるを得ないと思っています。」
陰性になっても入院必要な患者を一般病床で積極的に受け入れる
新型コロナウイルスの重症患者を受け入れている拠点病院でひっ迫する病床。その後、患者が陰性になっても症状が残り、退院できないケースが相次いでいます。少しでも病床を確保して自宅待機者が入院できるよう、たつの市民病院では陰性になっても退院できない患者の受け入れを始めています。
たつの市内に住む80代の男性は、2020年末に新型コロナウイルス感染が確認され姫路市内の病院に入院しました。その後、1月23日に陰性になりました。
(姫路赤十字病院から転院してきた患者)
「(Qどのような症状が残っていた?)呼吸は少し、やっぱり肺がやられているので。呼吸はちょっとしにくいです。(Qすぐに退院できる状況ではなかった?)帰れる状態じゃなかったです。本当に行くところがないのに、院長先生のおかげでお世話になりました。」
感染のリスクもないため、今は医師の判断の下、一般病棟で療養しています。病院では2020年12月下旬から、こうした“コロナ後の患者”を受け入れています。
(たつの市民病院 三村令児病院長)
「積極的に集中的に重症病床を持っている病院からの転院受け入れをしましょうと。ここでできることはささいなことですけれども、それはやりましょうということです。」
感染の第3波。地方の自宅待機者を減らすために拠点病院の患者を受け入れるという、一般病床にゆとりのある地方の支援が今後も求められています。そんな現場からの訴えとは。
(たつの市民病院 三村令児病院長)
「患者さんに今自分ができることを考えて、最大限できることをやれば、入院できずに困っている・待っている人の解消に役に立つと信じてやっていますので、1人でもそういう先生方が増えることを祈っています。」
(2月8日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)