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【特集】"病床受け入れ少ない"と批判『民間病院』の実情は?「通常医療」「救急医療」「経営面」葛藤抱える現場の訴え

2021年02月02日(火)放送

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『救急医療はしっかりと守ってきた』これは民間病院の医師の言葉です。新型コロナウイルス患者の病床確保が叫ばれる中、地域医療を守る使命や生き残りをかけた経営判断を強いられる民間病院。その葛藤に迫ります。

病床確保でやり玉にあげられた“民間病院”

出口の見えない新型コロナウイルス感染の第3波。各地で病床確保が難航するなど医療体制は深刻な事態に陥っています。そんな中、やり玉にあげられたのが“民間病院”でした。

(大阪府 吉村洋文知事 今年1月)
「民間の病院で力のあるところにご協力をお願いしたいと思っています。公的・公立病院と比べたら(受け入れ率が)少ないのはこれは事実だと思います。ここは否定するところではないと思うんです。」

90%以上の公立病院が新型コロナウイルス患者を受け入れているのに対して、民間病院で受け入れているのは全体の17%ほど(大阪府1月25日時点)に留まっています。この数字が意味するものとは。

重症患者を受け入れる民間病院の現状

2020年12月31日に大阪府大東市にある『野崎徳洲会病院』で撮影された映像には、息苦しそうにベッドに横たわる高齢の新型コロナウイルス患者が映っています。この病院では、2020年4月の感染第1波から、軽症・中等症患者の受け入れを担ってきました。

そして第3波の今は、大阪府からの要請を受けて、2020年12月から“重症患者”の受け入れも始めました。
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新型コロナウイルスの治療が行われていたのは、一般の救急患者らに使われていた「ハイケアユニット(HCU)」と呼ばれるエリアで、これを新型コロナウイルスの重症患者用に変えて、何とか4床確保したといいます。

(野崎徳洲会病院 中川秀光院長)
「HCU(ハイケアユニット)をコロナ患者用に変えると、救急の重症患者さんがほとんどICUか一般病床に回ってしまいますよね。影響は計り知れないぐらい強いですよ。」

ハイケアユニットでは人工心肺装置「ECMO(エクモ)」を使った高度な手術も行われています。

【治療の様子】
(手術スタッフ)「ポンプ回っているか?ガス出ているか?」
    (患者)「痛い、痛い。」
(手術スタッフ)「ゆっくりね、ゆっくり吐きましょう。」

軽症患者から重症患者まで、新型コロナウイルス患者の病床は満床に近い状態が続いています。さらに…。
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(野崎徳洲会病院 中川秀光院長)
「PCR検査で2回陰性になっても、体全体、特に肺が帰れるような状態ではないんですね。実際に再燃を起こす人もいてるんです。(Q転院させたいけれど?)そうです、転院させたいけど全然取ってくれない。だから自院で診ないといけない。」

新型コロナウイルス患者を巡っては、陰性になっても転院先が見つからず、一般病棟に移して治療を続けるケースも多いといいます。新型コロナウイルス患者を受け入れることで、通常医療にも影響を与えているという現実があります。

(野崎徳洲会病院 中川秀光院長)
「他の疾患の患者の入院はできなくなってきているんですね。病院への影響は甚大なんですよ。そう簡単に『どうして新型コロナウイルス患者を取らないんだ』と、上から一刀両断に言う問題ではないと思いますよ。公立の病院はスタッフが大勢いるでしょ。民間の病院はそうではないですよ。」

『救急医療』を守る民間病院

新型コロナウイルス患者の受け入れを迫られる一方で、民間病院は地域の救急医療を支える役割も担っています。大阪市北区にある『加納総合病院』。年間5000件の救急搬送を受け入れている地域の基幹病院です。

【医師と患者のやりとり】
(医師)「ちょっと触りますよ。真ん中触っても大丈夫?」
(患者)「左の腰が痛いといえば痛い。」
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日々、救急医療で奔走する中、新型コロナウイルス患者も受け入れています。防護服やフェイスシールドを着用したスタッフが新型コロナウイルス病棟で業務にあたっていました。受け入れているのは軽症と中等症の新型コロナウイルスの患者。2020年4月から19床を運用し、30人規模のスタッフで対応してきました。2020年10月には患者や職員合わせて10人が感染するクラスターが発生。一部の病床を閉鎖しましたが、それでも救急医療の体制はなんとか維持してきたといいます。

(加納総合病院 加納繁照理事長(医師))
「大阪府において、救急車の8割は民間病院が受け入れをしているわけなんです。“コロナ患者を受け入れることはできなかったけれど救急はしっかりと守るぞ”という形で頑張ったのが民間病院なんです。」
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2021年1月に大阪府から届いた『緊急要請』と書かれた書面。「軽症・中等症患者用のベッドをさらに4床増やしてほしい」と記されていました。加納総合病院は「現時点では1床増やすのが限界だ」と回答したといいます。

(加納総合病院 加納繁照理事長(医師))
「一般の救急が一番増えるのは実は1月2月なんです。新型コロナウイルス以外の患者さんが、実は10倍近くいらっしゃるということを考えていただいて、そこの医療が崩壊してしまう。我々は危機感を持って対応しています。」

経営左右するコロナ…患者受け入れ決めた民間病院

新型コロナウイルス患者を受け入れるべきなのか。民間病院にとって、新型コロナウイルス患者の受け入れは“経営”も左右します。大阪市此花区の『大阪暁明館病院』。ここでは2020年11月まで新型コロナウイルス患者を受け入れていませんでした。しかし…。

(大阪暁明館病院 西岡崇浩法人本部長)
「(2020年4月~9月の)収入が2億円ほど下がりまして、経常利益ベースで3億円マイナスという酷い結果になっています。このままの財務ではやっていけないということで。」

コロナ禍の受診控えで外来の患者が激減し、入院病棟では空床が目立つようになったといいます。職員の賞与を10万円ほどカットすることも余儀なくされました。そんな中、新型コロナウイルス患者受け入れを決めた要因となったのが大阪府から支給される“空床補償”でした。

(大阪暁明館病院 西岡崇浩法人本部長)
「空床補償が付いてきますので、財務的にはだいぶ回復しています。」
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大阪暁明館病院では36床ある外科病棟を丸ごと新型コロナウイルスの病棟に転用。しかし、人員やゾーニングの問題から運用できるのは最大で12床に留まっています。使用できない24床分については、空床補償が支給されているのです。

(大阪暁明館病院 西岡崇浩法人本部長)
「(Q新型コロナウイルス患者の受け入れを決めた際の現場の反応は?)いろいろ抵抗感はありました。一つはやはり新型コロナウイルスに感染するのが怖いと。いざ受け入れてみると割とメリットも多くあって。PCR検査機器も買うことができましたし、おそらくこのままいけば、下期の賞与は(元の水準に)戻せると。」

新型コロナウイルス患者を受け入れれば、国などから手厚い協力金が支給される一方で、地域医療に影響が出てもそこへの支援はありません。抱えるジレンマ。難しい現実が民間病院に突きつけられています。そんな現場からの訴えとは。

「民間病院だけが変な形で批評されるのは事実ではない」

(加納総合病院 加納繁照理事長(医師))
「容体が急変して挿管すれば重症患者となりますが、重症患者を受け入れる転院先が見つかるまで我々でケアして預かっている現実が、中等症以下の受け入れ病院でもあるということ。民間病院だけが変な形で批評されるのは事実ではないと、私は皆さん方にしっかりと伝えていきたい。」

(2月2日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)

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