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【特集】「自分の判断で人が亡くなるかも」搬送か自宅療養か...重責担う保健所の実態 コロナ患者の"最初の窓口"

2021年02月01日(月)放送

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新型コロナウイルス感染拡大の第3波で厳しい状況に身を置く医療現場。「自分の判断で人が亡くなるかもしれない」これは、ある保健所の所長の言葉です。重症病床がひっ迫する中で命を左右する判断が求められる現場の実態に迫りました。

大阪は重症病床使用率「70%超」

1月27日、大阪府の吉村知事は医療体制について次のように訴えました。

(大阪府 吉村洋文知事)
「医療従事者の皆さんに懸命な治療もしていただいて何とかギリギリ持ちこたえている。大阪においては70%を超える重症病床の使用率。ひっ迫しているという状況だと思います。」

重症病床使用率70%超え。この数字は一体何を物語っているのでしょうか。

検査結果を連絡する保健師たち…結果が出る前に患者が“外出”

1月下旬、大阪府和泉市にある和泉保健所を取材しました。緊急事態宣言中とあって、張り詰めた空気が漂っていました。

(朝礼で話す保健師長)
「昨日さらに死亡数が増えてたのかなって思っています。私たちにできることを考えていかないといけないかな。」
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コロナ禍での保健所の1日は、検査に出していたPCR検査の結果報告から始まります。この日は和泉市や泉大津市などで10代~50代の男女7人の陽性が確認されました。
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結果が出ると保健師たちはすぐに患者に連絡します。

(患者に電話する保健師)
「検査の結果が陽性と判明しまして。あっ本当ですか…5分ぐらいでおうちに着きます?」

 (記者)「患者が出かけていたんですか?」
(保健師)「(うなずく)。外出しないようにご説明はさせてもらおうと思うんですけれど。」

検査結果が出るまでは原則自宅待機を促していますが、最近は外出するケースも見受けられるといいます。

(患者に電話する保健師)
「おうちに戻ってきましたかね?熱は出ていないけれど、ちょっとしんどかったんですね。今もしんどい?」
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和泉保健所管内では去年1年間で約800人の陽性者が出ました。しかし今年はわずか3週間で400人もの陽性者が確認されていて、週に1度は重症患者も出ています。

(和泉保健所 森脇俊所長(医師))
「症状を聞いて、この人は入院させないといけないなっていうのは、例えば肩で息してるとか、そういう人はできる限りなんとか入院できるようにこちらも調整を頑張るんですけれどね、それがなかなか難しい。(Q優先順位を付けざるを得ない?)それはすごくつらいですよ、本当に。もしかしたら自分の判断で人が亡くなるかもしれないという怖さはものすごく感じていますね。」

「親だけ感染」の場合は子どもを隔離?求められる慎重な判断

今、感染経路として判明している中で最も多いのが『家庭内感染』です。この日もこんなケースがありました。

(患者に電話する保健師長)
「先日に検査受けていただいた結果で陽性の結果が出たんです。一緒に受けていただいた息子さんがマイナス(陰性)だったんです。療養先をどうするのかご相談させていただこうと思って。」
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ある女性への新型コロナウイルスの感染が判明しました。夫はすでに感染が確認されていて、一家3人のうち未就学児の息子だけが感染していないという状況でした。両親と息子を隔離するのか、慎重な判断が求められます。

【対応を検討する保健師ら】
(保健師長)「ご本人さん(妻)の症状は13日以前から風邪症状はあったみたいです。自分が夫にうつしたんちゃうかなと。味覚症状も異常があったんですが、今はなくなっているということで。」
(森脇所長)「あしたで2週間の療養が終わりということでしたよね。感染リスクも今更っていう感じやもんね。お子さんが陽性にならなくてよかった。」
(保健師長)「もちろん症状が出てきたらまた相談していただいて、息子さんについては検査も検討しないといけない。」

(和泉保健所 森脇俊所長)
「杓子定規にはいかないので、できる限り距離を置きながら暮らしていただくということで、やっていただかざるを得ないのかなというケースは実際にあります。悩ましいです。非常に悩ましいですよ。」

ベッドはすぐに埋まる「時間的に余裕がない」医療現場

感染第3波の今、容易には医療施設に入れないという現実。医療現場は危機的状況に陥っています。近畿大学病院の重症者病棟では、治療にあたるのは医師3人と看護師約40人。去年末から12床ある病床は埋まり続けているといいます。
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(近畿大学病院 東田有智病院長)
「圧倒的に多いのは後期高齢者。そういう方というのはどうしても回復が遅い。患者がこれ以上増えてしまうと、本当の意味でトリアージ(命の選別)というね、ベットがなかったらそうなる。患者が1人出たら1人入ってくるという、本当に時間的に余裕がないんですよ。重症患者さんのピークアウトはまだ起こっていない。今ここが踏ん張りどころだと思うんですね。とにかく今は患者さんが減るように、重症患者が減るような対策を、まず第一に考えてもらって。」

高齢者施設でクラスターの可能性 判断迫られる保健所

感染者を、病院に搬送するのか、それとも自宅療養とするのか。最初の判断を迫られるのが保健所です。和泉保健所に“ある電話”がかかってきました。

(電話対応する保健師)
「あっそうなんですか?可能性としてはあるっていうことですもんね。ちょっとお待ちくださいね。」

電話は、前日に職員1人の感染が確認された高齢者施設からで、隣接するケアハウスの入所者男性が体調不良を訴えていました。

 (保健師)「『38.6℃あって救急搬送させたいんですけど、どうしたらいいでしょうか』って。」
(森脇所長)「一般の救急で受けてくれるかやね。ハイリスクはあるので、それは病院に説明した上で、救急をお願いしてもらっていいですか?」

その後、この男性は感染していないことが確認されました。
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しかし、連絡があった高齢者施設では、すでに職員1人の感染が確認されていて、クラスターが発生している可能性がありました。その後、所長の判断で職員と症状がある利用者にPCR検査が行われ、新たに利用者1人の感染が確認されました。隣接するケアハウスも検査をするべきか検討が行われます。
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(森脇所長)「高齢者施設の人みんなケアハウス入っている?被ってないんちゃうん?」
 (保健師)「被っている人もいる。」
(森脇所長)「ほとんど被っているんよね?」
 (保健師)「誕生会しているのでなんとも言えないなというところが…。」
(森脇所長)「う~ん、どうしようか…。」
 (保健師)「一緒に大福を食べたり、本人はマスクをきちんとつける人だけれども、やはりスペースを共有しているし。」
(森脇所長)「そうしたら、こうしよう!施設に連絡して、入所者とりあえず全員、(検査を)気合入れてやるか。」

この日は日曜日でしたが、感染拡大を抑えるために保健所の職員らが施設に出向き、ケアハウスの職員と入所者全員の検査を行うことになりました。
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その2日後、検査の結果について森脇所長に聞きました。

(和泉保健所 森脇俊所長)
「全員問題なかった。(Qクラスターは?)ではないです。本当にヒヤヒヤしますから、よかった。」
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リスクの高い高齢者施設でのクラスターは免れました。しかしこの日、別の高齢者施設で3人の感染が判明しました。そんな現場からの訴えとは。

(和泉保健所 森脇俊所長)
「自分がウイルスを持っているかもしれない、もしかしたら隣にいる人がウイルスを持っているかもしれない、こういった当事者意識をぜひ持っていただければなと思っています。みんなでこのコロナの災害を乗り切っていければなと思っています。」

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