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『自宅待機じゃない...自宅に置き去りにされている』自宅療養者をフォローしながら通常診療も行う「地元のかかりつけ医」

2021年01月29日(金)放送

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医療体制がひっ迫する中、入院できない新型コロナウイルス患者が急増しています。自宅療養する人々の命をどう守ればよいのでしょうか。兵庫県尼崎市のクリニックを取材しました。

新型コロナ疑いの患者対応にも追われるクリニック

尼崎市の長尾クリニックは、開業以来、年中無休の外来診療と“がん患者の在宅ケア”などにあたってきましたが、去年・今年と新型コロナウイルスの感染疑いがある人への対応に追われています。
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取材した1月28日も、陽性疑いの患者が来院し、長尾和宏医師は屋外で診察します。

(長尾医師)「今、微熱があると。体がしんどい、息苦しいですか?」
  (患者)「息苦しいまではいかないです。」

検査の結果、この患者は新型コロナウイルスの疑いは低いと診断されました。

重症な肺炎とわかったが入院先は見つからず

この日、来院した50代の男性に話を聞きました。男性は1月11日に陽性とわかり、今でこそ快方に向かっていますが…

(男性)
「40℃近い熱と、ガタガタ震えて悪寒が来るのと、激しい咳とで、正直参ってました。その中で先が見えないんですよね。それが一番どうにもならない。」
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男性が初めて長尾クリニックを訪れたのは、感染確認3日後の1月14日。ほかの病院で診察を断られた末にたどり着きました。

(車の中にいる男性に外から話しかける長尾和宏医師 1月14日)
「今、息苦しさと高熱があるということね?たぶん肺炎だと思うんですよ。」
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この時、男性の症状はすでに1人で歩けないほどに悪化していました。院内感染を防ぐため、ほかの患者がいない時間帯に検査を実施。やはり重症のコロナ肺炎でした。本来なら入院が必要な状態です。しかし入院先は見つかりません。結局、男性は自宅療養のまま、保健所による健康観察解除となりました。この間、長尾医師はメールで毎日病状を確認し、クリニックで2回診察しました。

(男性)
「これで助かったというような気持ちになりました。陽性だとわかった時に、医療に携わってる方にできるだけ早く(診てもらい)、こうだからというようなことで少し心のよりどころがあれば、何とか耐えられると思うんですけれど。」
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入院調整や体調確認を担う保健所はすでにその限界を超えていると長尾医師は指摘します。

(長尾和宏医師)
「ほとんどの方が入院できずに経過していくわけです。自宅に待機というが、病院に入れないわけですから、待機じゃない。自宅に放置、置き去りにされているわけですね。その人たちから死者が出るのは当たり前です。何もしていないんだから。」

自宅療養を望む人も

一方、自ら自宅療養を望む人もいます。1月28日、長尾医師は90代の男性の自宅を訪問しました。

(長尾医師)「こんにちは。元気か?どんな調子や?」
  (男性)「調子は非常によろしい。」
(長尾医師)「ここは病院じゃなくておうちなんです。しっかり痰も出して、ご飯食べましょう。」

けがで入院した病院でクラスターが発生し、新型コロナウイルスに感染したこの男性は、入院から2か月ほどで寝たきりになりました。家族は「このままでは最期に立ち会えなくなる」と危惧し、自宅に引き取ることにしました。

男性は1月29日時点でも陽性ですが、人に感染させる時期は過ぎていて、むしろ生きる力が戻ってきていると長尾医師は感じています。

(長尾医師)「お酒飲みたい?」
  (男性)「うん。」
(長尾医師)「何?日本酒?」
  (男性)「日本酒でもウイスキーでもブランデーでもなんでもええ。」
(長尾医師)「一緒に飲もうか今度。」
  (男性)「うん。」
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(男性の娘)「想定外です。」
(長尾医師)「お看取りのために家に帰ってきたかもしれないが、まだもう少し時間がある。」
(男性の娘)「帰ってきたからのびたのかもしれない。」

クリニックの窓を割られる現実 差別偏見の目が医療者に

地元のかかりつけ医を自認してコロナ患者を診てきた長尾医師ですが、厳しい現実も突きつけられています。

(長尾和宏医師)
「深夜にクリニックの窓をレンガでたたき割られた。差別・偏見は医療者に向いてくる。」

取材前日に発熱外来の窓が何者かに割られました。外の道路には面していない場所で、“狙いうち”としか思えないといいます。
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地域に受け入れられながら自宅療養者の命を守るコロナ治療とは…。クリニックをあげて模索する日々が続きます。

(長尾和宏医師)
「誰かが受けないとかわいそうでしょ。最後の砦だと思っているので。僕らの後はないと思っている。」

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