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【特集】京都市内に佇む"廃墟と化した建物"「日本・中国・台湾」の関係に翻弄された歴史

2021年01月25日(月)放送

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京都市内の住宅街の一角に“廃墟と化した建物”があります。壁が崩れて近隣の住宅に直撃するなどの被害が出ていますが、京都市などは「対策は難しい」と話します。一体、建物の所有者は誰なのか。取材を進めると、歴史に翻弄された実態が見えてきました。

ガラスが割れツルが生い茂る無人の建物

京都市左京区の閑静な住宅街。その一角に、フェンスで囲われた5階建ての建物が佇んでいます。外壁にはツルが生い茂り、窓ガラスも割れてしまっていて、住人は確認できません。立ち入ることができない廃墟と化しています。この建物は一体何なのか、近所の住民らに話を聞いてみました。
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(近所の住民)
「気持ち悪いし、ガラスとかも実際に風が吹いたら飛んできて落ちていたこともあった。あまり詳しくはわからないんですけれど、寮?学生の寮で…。」
「『光華寮』という名前でね。中国と台湾から留学してきた人が住むアパートなんですわ。」

「壁の一部が落下して屋根がへこんだ」被害に遭う住民も

建物の名前は「光華寮」。取材班が調べると、1931年に建てられ、当時の専門雑誌にはモダニズム建築として掲載されていました。光華寮は建築後、京都帝国大学が民間から借り上げ、戦後になって台湾が買い取りました。10年ほど前までは住人がいたものの、以降は廃墟の状態が続いているといいます。

(近所の住民)
「建物が古いからね。壊すぐらいしてもらわないと、地震でも起きて崩れた時に、真裏の家だったら真ん前ですからね。」
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地震や火災が起きたら…と不安を募らせる住民たち。光華寮の隣に住む人は実際に被害に遭っていました。

(近所の住民)
「コンクリートが劣化しているんですよ。だから(コンクリートの一部が)落ちてくる。屋根がへこんでいるでしょ?上から落ちてきて。」

老朽化した光華寮の壁の一部が落下し、駐車場の屋根が凹んでしまったというのです。なぜ朽ちた建物が放置されているのでしょうか。

(近所の住民)
「治外法権だとみんな思ってはりますよ。日本であって日本じゃないって。」

誰が建物を管理?市に尋ねたが「お答えできない」

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この建物の“正体”を探るため、取材班が登記簿をオンラインで請求しました。しかし、土地と建物ともに「登記事件の処理中」とエラーの表示が出ました。これについて、京都地方法務局に問い合わせてみると…

(法務局)「今は係争中なので証明書は取れない状況なんです。」
 (記者)「いつから取得できない状況ですか?」
(法務局)「もうかなり…もう10年以上は経っているような形ですね。手続きが止まっているような状況です。通常はそういうことはあまりないんですけれど。」
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では一体、誰が建物を管理しているのか、京都市に聞きました。

(京都市・都市計画局 本間昌次朗課長)
「実質上、建物を管理していると判断される団体があります。(Qそれはどちらですか?)個別の案件についての内容についてはちょっとお答えできません。申し訳ありません。」

何を聞いても言いよどむ市の担当者。建物の修繕などはできないのでしょうか。

(京都市・都市計画局 本間昌次朗課長)
「係争中の案件でもありますので、(京都市の権限だけでは)法的に難しい面があります。」

京都市ですら敷地内には立ち入れないというのです。その背景とは?

寮は「台湾のもの」か「中国のもの」か 国際問題に

発端は1960年代、中国大陸で共産党の毛沢東思想が拡大していた時期でした。当時、光華寮には華僑の学生らが多く住んでいましたが、寮生の間で“ある分断”が起きたのです。毛沢東を支持するか否かです。1967年には、光華寮の所有者である台湾政府が、毛沢東を支持する学生に寮からの立ち退きを求めて裁判を起こす事態に。

そんな中、大きな節目を迎えます。1972年に日本は中国との国交を樹立し、台湾と断交したのです。裁判は『光華寮が台湾のものか中国のものか』に争点が変わりました。1977年、一審の京都地裁は「寮は中国のもの」と判断し、中国側が勝訴します。しかし1987年、二審の大阪高裁は一転「断交しても寮は台湾のもの」と、台湾が逆転勝訴しました。
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それから20年の月日が経った2007年、最高裁がついに判決を出しました。「日本と国交を断絶している台湾にはそもそも原告としての資格はない」と切り捨て、原告を台湾ではなく中国とした上で裁判をやり直すよう命じたのです。事実上の中国勝訴でした。
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過去に光華寮に住んでいた中国人の男性に裁判について尋ねました。

(中国人の元寮生)
「それはあまり述べたくない。今まだ決着もついていないので。ちょっと言いにくいですね。」

関係者によると、原告の中国側が手続きを進めない限り裁判が再開されることはなく、事実上、裁判は終わったというのです。

不法侵入者が相次ぐトラブルも発生

眠りについた光華寮。夏場になると“心霊スポット”として若者が不法侵入して逮捕者が相次ぐなど、トラブルも起きているといいます。

【Twitter上の投稿】
「心霊スポットin光華寮。今回は最高にヤバい?」
「光華寮見に行った!怖い(笑)」

(近所の住民)
「(肝試しの)声やライトとかを見聞きする。光華寮が無くなってきれいな公園とかになったら一番いいんですけど。」
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仮に建物で火事が起きたり倒壊の危険性が高まったりした場合はどう対処するのか。改めて京都市に話を聞きました。

(京都市・都市計画局 本間昌次朗課長)
「今すぐ直ちに建物自体が倒壊する可能性は高くないと考えております。法的な難しい面もありますので、なかなか進んでいかないというところがありますけれども、しっかりと解決に向けて取り組んでいきたいと考えています。」

国際問題に翻弄される住民たち。町内に佇む異質な存在を朽ち果てるまで見届けるしかないのでしょうか。

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