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【特集】子ども食堂で広がる食券「○○から君へ」大人が"カレーライス"を先買い 地域の気軽な"つながり"に

2021年01月12日(火)放送

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全国で5000か所以上とされる「子ども食堂」。自分も何か支援したいけれど、どうすればいいのかわからない。そんな思いを汲み取った粋な支援方法に注目が集まっています。それは会計時のちょっとした行動なんです。“子どもに一杯のカレーライスをご馳走したい”そんな取り組みが広がっています。

しっぽり飲んだついでに“ひみつ基地”へ支援

大阪府堺市中区にある「居酒屋 呑Ma」。こじんまりとしていて、しっぽり飲めると、常連客も付いています。

(常連客)
「ガヤガヤしていなくていいですね。落ち着く。」
「ママの雰囲気も良いですし、アットホームですよ。」

ただ、ちょっとした“大人の秘密”があります。常連客が千円札を取り出しました。

(常連客)「“ひみつ基地”のカレーに…ちょっと」
 (ママ)「ありがとうございます。渡しておきますので。確かにお預かりを。ありがとうございます。」
(常連客)「ほんなら僕も渡そかな。」
 (ママ)「ありがとうございます!」
(常連客)「とんでもないです。」

カレーが食べられる『子ども食堂ひみつ基地』

実はこの居酒屋、日中には別の顔を持っているんです。そう、子ども食堂なんです。その名も『子ども食堂ひみつ基地』。店主を務めるのは、夜とは替わって佐藤正一さん(45)です。
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(子ども食堂ひみつ基地・店主 佐藤正一さん)
「子どもたちにとって秘密の場所があるってすごくいいじゃないですか。憧れましたよね、うちらも子どものころ。」

去年6月に、クラウドファンディングで集めた支援金約100万円を元手に、開業にこぎつけました。小中学生なら誰でも無料で食べられるカレーライスを提供しています。

(佐藤正一さん)
「1回分を冷凍して、玉ネギ・ニンジン・鶏肉・豚肉・ニンニクとか全部、家で仕込んでいます。」

夜の店主の好意で場所代は無料。佐藤さんは別の仕事をしながら、週に3回、子ども食堂を営業しています。きっかけは自身の子育てでした。

(佐藤正一さん)
「日曜日には必ずどこかに連れて行って、水族館に行ったり博物館に行ったり。かたや、日曜日だけど両親が仕事とかで遊びに行けない子たちが同級生にいたら『連れて行ける俺が遊びに連れて行ったらいいだけやん』と思って。そこからだんだん、子育てって学校や親だけじゃなくて、できる大人がやったらいいんじゃないかな、という考えに。」

「○○から君へ」ボードに貼られたカレーライスの食券

午後5時、子ども食堂ひみつ基地がオープンしました。すると、すぐに小学6年生の2人がやってきました。

Qいつもどのくらいの頻度で来るの?
 (小学生)「週3。」「開いている日は全部来ます。」
(佐藤さん)「皆勤賞だね。」
Qなんで来るの?
 (小学生)「楽しいから。」「暇やから。」

さっそく2人は、店内のボードに貼られた紙を取りました。実はこれ、夜の店のお客さんらが、子どもたちのためにあらかじめ代金を支払った“食券”なのです。1枚250円で、食券には代金を支払った人の名前が書いてあります。この食券で子どもたちは無料でカレーライスを食べることができます。

Qいつも取る人?
(小学生)「うん、大体いつも(同じ人の食券を)取っている。」
Qなんて名前の人?
(小学生)「鈴木さん。」
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(佐藤さん)「はい、お待たせ。」
 (小学生)「いただきます。」
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小学6年生の2人は、佐藤さんと学校生活について話すことも。

(佐藤さん)「学校自体は面白くないの?」
 (小学生)「普通。」
(佐藤さん)「普通っていうのは?」
 (小学生)「普通に生活。」
(佐藤さん)「嫌でもなく?」
 (小学生)「嫌なときも大量にあるよ。だってイライラするもん。」「嫌なときしかない。」

さて、小学生の2人は、会ったことのない人がカレーライスをご馳走してくれることをどう思っているのでしょうか。

(小学生)
「ありがたい。(Qなんでありがたいと思う?)食べられることは当たり前じゃないから。それに支援してくれているのがうれしい。」

(佐藤正一さん)
「子どもはそういう気持ちでいいと思うんですよ、深く考えずに。10年先に子どもたちが大人になった時に、その時の気持ちが生かされると思っているので。今どんな思いでも、この場所にいられるだけで十分だと思う。」

元祖の店では…「いつでも来られて、カレーを食べられて、宿題教えてもらえる」

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知らない大人が買ってくれた無料の食券でカレーライスが食べられる。実はこの取り組み、2018年に奈良県橿原市の飲食店『げんきカレー』が始めました。
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それが「みらいチケット」です。きっかけは、地域と子どもの関係が薄れていくことへの懸念からでした。
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(げんきカレー・店主 斎藤樹さん)
「私が子どものころというのは、学校帰りに近所のおばちゃんが『おかえり。きょう、おやつあるから食べて帰り』と声をかけてもらえるような、そういう時代だったんですけれども。みんなが気軽に知り合いになれて、声をかけ合えるような、そういう地域食堂になればと思って頑張ってやっています。」
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そんな思いが店内で一つ形になっていました。親子のような2人。小学校の教師と中学1年生です。1年半前にここで知り合い、いつしか勉強を教えるようになったといいます。

(小学校の教師)「現代の寺子屋じゃないですけれど、子どもたちがいつでも来られて、いつでもカレーを食べられて、いつでも宿題したら教えてもらえる人がいるみたいな。環境がすごくいいなと思います。」
 (中学1年生)「(英検)3級を取れました。ご飯も食べられて、みんなが子どもを大切に扱ってくれている場所。」

寄付された食材と子ども食堂をつなぐ

活動を知った企業や農家から食材が届きます。斎藤さんが新たに取り組んでいるのは、これらの食材とほかの子ども食堂とをつなぐ橋渡しです。

(斎藤樹さん)
「全国各地に『みらいチケット』を導入したお店、子どもたちが気軽に立ち寄れて、いろんな地域の人たちと交流できる、そこで勉強とかもできる、そういうような店を増やしていくのが、最終的な目標です。」

この日、大阪府堺市の『子ども食堂ひみつ基地』を営む佐藤さんが、奈良県橿原市の『げんきカレー』を訪れました。

(佐藤さん)「どうも。」
(斎藤さん)「どうですか?」
(佐藤さん)「おかげさんで。」
(斎藤さん)「きょうは持って帰ってもらうものがありますので。」
(佐藤さん)「ありがとうございます。」
(斎藤さん)「お米と鶏肉とエビ、ありますわ。」
(佐藤さん)「ありがとうございます。助かります。」
(斎藤さん)「ぜひぜひ、活用していただけたら。」

その理念が共感を呼び、全国に広がる子ども食堂。一方で、運営するための食材も資金も、誰かの支援、『共助』で成り立っているのが現状なのです。

(佐藤さん)「僕はまだ、去年6月から始めて半年しか経っていないので、これをきっかけにいろんな支援が、地域とのつながりも含めてですね、広がったらなと思います。」
(斎藤さん)「お互いにね、子どもたちの笑顔のために頑張っている、本当に同士だと思いますので。たまたま私の方が始めたのが少し早いというだけで、志は同じだと思いますので。お互い頑張っていきましょう。」
(佐藤さん)「今後ともよろしくお願いします。」
(斎藤さん)「はい、お願いします。」

(1月12日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)

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