【特集】"引っ越しサル"の標的になった集落...柿も黒豆もむしゃむしゃ 別地区が電気柵で被害激減...一方で手薄だった地区が
2020年12月23日(水)放送
兵庫県の山間にある地域で、サルが傍若無人に振る舞い、住民が困り果てています。といっても、サルがやってきたのはここ最近のこと。それまでは特に目立った被害はなかったといいます。突如サルの標的になったのには、ある理由があったようです。
「憎たらしい…」住民困らすサル集団
兵庫県丹波篠山市の畑地区。黒豆をはじめ、柿や栗など、農作物が豊富な地域です。ここで最近、住民を悩ませているのがニホンザルです。
(住民)
「こんな赤ちゃんからおっきいのから、そばに行っても逃げやしません。ドンドンドンドンいうて走っております。すごい音やで。」
民家の屋根でくつろぐサル。その様子からは警戒心は感じられません。器用に屋根から降りると、我が物顔で集落を徘徊していました。
民家に入り込むことも、しばしばあるそうです。取材をしていると『置いてあったサツマイモがなくなった』と話す住民の方も。そして集落の屋根の上には、その消えたサツマイモなのか、イモのようなものを食べているサルの姿がありました。
(カメラマンリポート)
「今サルが民家の柿を食べています。」
柿の木はたまり場になっていました。複数のサルが木の上で柿をむしゃむしゃと。
また、ビニールハウスでは、あちこちに手を突っ込んだような穴が開いています。
(住民)
「下と上のところに穴を開けて。入り口のドアもサルがひねって入って、黒豆を食べる被害も出ています。サル…憎たらしい。」
この丹波篠山市の畑地区で農業を営む小島博久さん(69)。小島さんによりますと“サルの行動は日に日に大胆になってきている”といいます。地区にある観音堂では…。
(小島博久さん)
「ここに鐘があるでしょ、振るやつ。あれに登って遊んどるんですよ。サルが鳴らすと中途半端な鳴らし方をするんですよ。サルの賢さはもう人間並みやね、人間と一緒です。(Q勝てていますか?)勝てていない。負けている。もう完全に負けていますわ。」
大胆なふるまいは墓地でも。花立ての中に手を突っ込むと、中にたまった水を飲んでいました。
獣害対策用の柵も徐々に増えてきましたが…。
(カメラマンリポート)
「サルがフェンスを壊して中に入ろうとしていますね。あ、中に入りましたね。」
柵を壊して畑に侵入。そして、無心に野菜を食い荒らしました。普通の柵ではまったく意味を成さないようです。
対策が手薄な集落を標的に?
サル被害に詳しいNPO里地里山問題研究所の鈴木克哉さん(45)によりますと、丹波篠山市の畑地区が標的となったのには理由があったようです。
(NPO里地里山問題研究所・代表 鈴木克哉さん)
「集落の中にたくさんのサルのエサになっているものがあって、その代表的なものが畑。そして柿・栗ですね。畑に出てきて栄養価の高いおいしい農作物を食べたほうが、圧倒的に食べ物の効率としてはいいんですね。それを1回覚えてしまうと、なかなか山のエサを食べずに、里のエサに依存するようになってしまいます。」
そしてもうひとつ、気になることが。
(NPO里地里山問題研究所・代表 鈴木克哉さん)
「まとめてみんなで電気柵の設置率を高めた集落では、サルはそこにいてもエサを食べられませんので。まだ対策がしっかりできていないところに出没している傾向はありますね。」
取材班には思い当たる節がありました。2018年、MBSでは丹波篠山市内の別の地区でサルが傍若無人にふるまう様子を取材していました。その際は、集落の道路を何匹ものサルが歩いている姿や、たわわに実った黒豆を一心に食べるサル、屋根の上を歩くサルなどを目撃していました。
市によりますと、周辺では5つのサルの群れが確認されていますが、その後、この地区では電気柵などの対策を講じたためサルが激減したといいます。そして、市が調査したところ、30匹あまりで構成される群れが、対策が手薄だった畑地区へと集団移住したというのです。
犬がサルを追っ払う!?ロケット花火を活用するも…
被害に悩む丹波篠山市は、サルにとっての“大敵”を動員しています。それが“犬猿の仲”の犬です。山を歩くのは『モンキードッグ』と命名されたメスのきなこ(2)。モンキードッグは市が独自に育成を行っていて、現在16匹が活動中。サルが出没すると現場に出動します。
(飼い主)
「『モンキードッグの制度がありますよ』とスカウトされました。サルは犬から逃げますからね。」
畑地区の小島さんらも手をこまねいているわけではありません。例えば鳥獣被害ではおなじみの『ロケット花火』での威嚇。
(小島博久さん)
「すぐ逃げるから、ちょっと効いとるなあと思いますね。」
しかし、被害の減少には至っていません。
(小島博久さん)
「ロケット花火で追うくらいで。サルは憎いというところのほうが大きいね。個体数を減らさんかったら、そんなん無理やと思いますわ。」
丹波篠山市長「村ぐるみで対策を」
とはいえ、鳥獣保護法により、サルは捕獲できる数が制限されています。丹波篠山市の酒井隆明市長も、団結して対策を講じるしかないと、困惑しています。
(丹波篠山市 酒井隆明市長)
「地域に行くとサルの話ばかりで、非常に怒られることが多かった。サルとの共生の『きょ』の字を言っただけでも怒られました。丹精込めて作ったものがとられてしまうとやはり腹も立ちます。殺してという気持ちもわかりますが、一定の捕獲はするにしてもですね、追い払いとか電気柵とかいろんな対策を村ぐるみでみんなでとっていくということが大事だと。」
対策が講じられると、また次の場所を見つけ移り住むサルたち。サルとヒトのイタチごっこは抜本的な解決方法が見い出せないままです。
(12月23日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)