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【特集】家族を殺害された男性が始めたのは『元受刑者支援』...何度裏切られても"お前の親になる"

2020年12月15日(火)放送

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もし自分の大切な人を殺害されたら…。想像するだけでも辛いことですが、“事件で家族を失った”というある男性がとった行動は、「刑務所を出た人たちに、仕事や住む場所を提供し、社会復帰を支援する」というものでした。しかも、何度裏切られてもとことん寄り添う。そんな男性のもとにまた一人、青年が訪れました。

元受刑者を雇う男性

カンサイ建装社長の草刈健太郎さん(47)。この日、兵庫・加古川刑務所から出所する一人の青年を迎えに来ました。服役を終えたばかりのカズヤさん(仮名・25)が出てきました。草刈さんが社長を務める塗装会社で働くことが決まっています。草刈さんはカズヤさんのような「元受刑者」を積極的に雇用しています。
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 (草刈さん)「こんちわっす。」
(カズヤさん)「よろしくお願いします。」
 (草刈さん)「何食いたいの?」
(カズヤさん)「考えたんですけど…出てこないですね。」
 (草刈さん)「何も出てけえへんのか。」

カズヤさんは、地元・名古屋で覚醒剤などの薬物に手を染め、3年前に加古川刑務所に収監されました。

 (草刈さん)「3年間、“ホテル暮らし”でゆっくりしたんやから。その分、返していかなな。」
(カズヤさん)「はい。」

元受刑者 身分証も財布も無し…服役中に離婚

まずは腹ごしらえと、刑務所を出たその足で大阪・ミナミへ。これから、カズヤさんの“上司”となる井上陽一さん(47)も一緒です。実は井上さんにも、かつて薬物に手を染め、逮捕された過去があります。出所後、草刈さんのサポートで、社会復帰を果たしました。

 (井上さん)「身分証明書は何を持っているの?」
(カズヤさん)「何もないです。送っちゃっているんで、元奥さんに。だから手ぶらですね。財布も何も無い状態なんで。」
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薬物依存の元受刑者が、再び過ちを犯す光景をこれまで何度も目の当たりにしてきた草刈さん。そうした経験から、カズヤさんを支援団体へと繋ぐ準備も進めてきました。しかし…

 (草刈さん)「薬関係不安や言うてたからな、大阪で“自助グループ”みたいなのあるから。そういうのに興味あるか?」
(カズヤさん)「そういうところに行ったら…行った方がいいかなと思ったんですけど、逆に“やめられない人”がいっぱいいるわけじゃないですか。それで、薬、薬、薬…という話ばかりになったら、逆にやりたくなっちゃうのかな。」
 (草刈さん)「あー…。」
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カズヤさんは2020年1月、服役中に離婚しました。3歳と6歳の子どもがいて、2人の親権は元妻が持っています。

(元受刑者 カズヤさん)
「(2人の子どもたちは)絶対に寂しい思いをしていますし、そういう面では本当に申し訳ないなという気持ちはありますね。下の子なんて僕のことを覚えていないんで、小さい時に捕まっているんで。生まれて1か月以内に判決が出て“中”に入っているんで。」
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草刈さんの会社では、身寄りのない元受刑者のため、大阪市都島区で4DKのマンションの一室を寮として無償で提供しています。寮長は井上さんで、ほかに元受刑者が一人。カズヤさんも入寮し、ここから“再出発”します。

「お前は更生なんかしてないねん」

夕食は、カズヤさんを囲み、歓迎会となりました。

 (草刈さん)「まあ、座りいな。」
(カズヤさん)「はい、失礼します。」

緊張するカズヤさんに、草刈さんが寄り添います。

 (草刈さん)「遠慮せんと。」
(カズヤさん)「はい、いただきます。」
 (草刈さん)「肩の力抜け!仲間やねんから。仲間やねんから。もう関係ない。」
(カズヤさん)「自分の家族より“ファミリー”に接してくれて、うれしいです。」

『親代わりだと思ってほしい』だからこそ、言っておきたいことがありました。

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 (草刈さん)「お前、この前言うたよな?『自助団体に行くと、また(薬物を)やりたくなる』って。思った時点で、お前は更生なんかしてないねん。わかる?子どももいて、家族もいて、きょう会いに行って。でも“またやりたくなるかもわからへん”と言った時点でお前の負け。」
(カズヤさん)「はい。わかりました。」

これまで30人以上の元受刑者を雇ってきた草刈さん。更生を約束しながら、途中で逃げ出し、行方がわからなくなったケースも少なくありません。カズヤさんにはまず、自分を見つめることから始めて欲しかったのです。

 (草刈さん)「きょうは厳しいこと言うけど、明日からはゆっくり、徐々に。」
(カズヤさん)「はい。」

罪を犯した人たちと、とことん向き合う草刈さん。その“きっかけとなった日”が今年もやってきました。

「更生は難しい部分ある」妹を殺害され…8年越しに芽生えた思い

12月1日、草刈さんは大阪府岸和田市にある墓地を訪れていました。墓に眠るのは、妹の福子さん(当時25)。ちょうど15年前のこの日、ロサンゼルスでアメリカ人の夫にナイフで刺され、殺害されました。
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(草刈健太郎さん)
「ほんまに、“どないやって殺したろかな”と、そんなことばっかり考えていましたね。」

家族の命を奪った加害者への憎しみは、今なお消えません。しかし、福子さんの死から8年が過ぎた頃、ある思いが芽生えます。

(草刈健太郎さん)
「更生というのは、やっぱりちょっと難しい部分がある。でもそれを見捨てちゃうと、また悪いことするし。被害者が出る。」

刑務所でも支援活動

草刈さんは、家族を殺害された経験がありながら、犯した人たちを支援する活動を始めたのです。11月30日、草刈さんは加古川刑務所を訪れ、受刑者の前で話していました。

(受刑者の前で話す草刈さん)
「せっかくですから、この機会を利用して、何とか就職に繋げていただきたいなという気持ちがあります。」
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草刈さんはこの日、加古川刑務所で出所を控えた受刑者らに技能実習を行いました。知識を身につけてもらい、その後の人生が少しでも円滑に進むように、受刑者らが自信を持てるように、背中を押します。

(草刈さん)「まあまあすごいな、自分。」
 (受刑者)「まじっすか。」

出所後の就職先が決まっていないと、その場で声をかけることも。

(草刈さん)「不安ですか?やっぱり外出て。」
 (受刑者)「不安もありますね、やっぱり。」
(草刈さん)「何やりたいの?」
 (受刑者)「塗装業です。」
(草刈さん)「経験年数あるよね?」
 (受刑者)「あります。」
(草刈さん)「何年くらい?」
 (受刑者)「10年ちょっと…。」
(草刈さん)「来たらええやんか、うち。」

草刈さんの思い「更生の一つに繋がったら」

活動を続ける中で、刑務所に収監される人の6割近くが“再犯者”であると知りました。草刈さんは、出所後の『受け皿』を作ることが、結果的に妹や自分のような被害者を再び生み出さないことに繋がると考えています。

(草刈健太郎さん)
「いろんなノウハウが自分の中に貯まってきたので、対応の仕方もわかってきたので。1人でも多くに伝えて、何年越しになるかわからないけれど、それが彼らの更生の一つに繋がったらええかなぁと思っている。まあでも、しんどいな。しんどい。ははは。」
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出所して2週間、カズヤさんは一歩ずつ踏みしめるように前へと進んでいました。

(元受刑者 カズヤさん)
「本当、覚えることだらけで。プレッシャーにはなる、ちょっと。『どこまでこいつやるのかな』というのは見てると思うので。この2~3か月で立て直して、そこからじゃないかな、とは思ってるんですけど。」

これからが2人の正念場です。

 (草刈さん)「真面目に精神が持てば、ええ職人になるんちゃいますか。勢いあるし。パンクせんようにな!」
(カズヤさん)「はい!」

(12月15日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)

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