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【特集】がんになった緩和ケア医師が患者にかける言葉「お互い楽に長生きしましょうね」...看取る側から看取られる側になって

2020年12月08日(火)放送

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がん治療などに伴う体や心の問題に向き合う“緩和ケア医師”。末期がんの患者も多く最期を看取ることも少なくありません。そんな緩和ケアを行うある男性医師に「ステージ4」のがんが判明しました。医師と患者、どちらの立場もわかる男性の言葉が今、患者の苦しみを和らげています。

患者の体や心の苦痛を和らげる「緩和ケア医師」

神戸市灘区にある関本クリニックの院長で緩和ケア医師の関本剛さん(44)。治療が難しいがん患者に対して、体や心の苦痛を和らげるのが関本さんの仕事です。抗がん剤治療の調整をしたり、副作用のつらさを薬でコントロールしたりします。

【患者とのやりとり】
(関本さん)「今後のことに関して何かお話し合いをされてますか。」
  (患者)「十分生かしていただきましたので、全然心残りもなく。」

なにより話を聞くことを大切にしています。ただ他の医師とはちょっと違うところがあります。

  (患者)「近い将来に、1~2か月だとは思うんですけど。」
(関本さん)「ご自分でそういうふうにお感じなんですね。実は僕もがん患者なんですよ。」
  (患者)「ああ、そうですか…。」

自身の肺がんが見つかる「ステージ4で脳にも転移」

2019年の秋、関本さん自身ががんだとわかったのです。咳が続いていたため、何気なくレントゲンを撮ると、肺に影が見つかりました。
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すぐに精密検査を受け、4日後に「肺がん」との診断結果が出ました。さらに脳幹や小脳など脳にも10か所ほど腫瘍が転移していました。がんの進行度合いは最も進んだ「ステージ4」。「同じ病気の半数の人が2年しか生きられない」と告げられました。
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(関本剛さん)
「これを見た瞬間、頭が真っ白になりましたね。『もう治らないがんです』と言われて、ズドンと落ち込むみたいなのは、伝える立場としては自分も伝えていましたし、実感はしていましたけど。当事者になると『ああ、こういうことか』と感じたのを覚えています。僕の治療費のこととか、僕が死んだ後の家族の生活面のこととかが、めちゃくちゃ心配になって。」

抗がん剤などの治療を始めた一方、妻と2人の子どもの将来を考え、可能な限り仕事は続けることにしたといいます。

母の複雑な胸中“がんが息子を医師として成長させた”

共にクリニックで働くのは、関本クリニック理事長である関本さんの母・雅子さん(71)。緩和ケア医師の草分けで、3500人以上の看取りを経験したといいますが、関本さんががんだとわかると、取り乱したといいます。

(母・関本雅子さん)
「2019年の11月12月はよく車の中で泣いていました。一人になるとね、どうしてもね。私の立場としては家族の立場なので、逆に言うと剛のおかげで、がんの方の家族の気持ちというのは、すごく痛いほどわかりますね。」

一方で、息子を医師として成長させたのは、がんなのではないかと感じているようです。
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(母・関本雅子さん)
「『同じ立場なので同じように頑張っていきましょう』という言葉は、本当に患者さんに響いているなって。側で見ていて。これはもう完全に(私の)負けですね、勝ち負けじゃないんだろうけど。本当に大輪を“ボン”とここでね、咲かせてくれたなとは思うんですよね。長く続くのだけがね、望みなんですけどね。」

「お互い長生きしましょうね。楽に長生きが一番。」

2020年10月17日、クリニックに肺がんを患う50代の女性が訪れていました。関本さんと同様、脳への転移もあるといいます。

  (患者)「来月、娘の結婚式があるので、そこまでは何とかこの状態を保っていきたくて。」
(関本さん)「来月?」
  (患者)「16日なんです、ちょうど1か月後なので。そこまではなんとかいきたいと。3月に脳転移と聞いていたので。もう崩れ落ちるように『ええっ?』て。なんで10年間、人間ドック受けてきたのに、なんで見つからなかったのかなって…。」

“自殺も考えた”という女性。同じ病気で苦しむ患者に、関本さんがかけた言葉は。

(関本剛さん)
「きっとでもね、生きるのにも勇気がいると思うんですよ。僕も本当に思いました。時々思う時があって、早く死んだほうがいいんちゃうか、みたいなね。それでもやっぱり家族がいると、特にご結婚が控えておられるお子さんがおられる、お孫さんが生まれるかもというのって、すごく生きる勇気になると思うんですよね。うまいことなっていると思うので、そのあたりバランスだと思うんです。まあでもお互いね、お互い長生きしましょうね。楽に長生きが一番。」

楽しみなことと、死への備え。バランスよく考え、お互い、楽に長生きしようと伝えました。
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(患者)
「先生とお話しして、毎日毎日暗く暮らしていたけど、ちょっと頑張ろうかなと。前向きに頑張っていこうかな、治療も挑戦してみようかなという気持ちにはなりました。」

「看取る側から看取られる側になって」関本さんの想い

11月12日、関本さんは神戸市立医療センター中央市民病院を訪れていました。

 (看護師)「かゆくなるとかないですか?」
(関本さん)「大丈夫です。」

関本さんは3週間に1度、抗がん剤治療を受けています。その合間に準備していたのは、数時間後に迫った講演会の原稿でした。

(関本さん)
「ちょっとのんびりしすぎていて、まだ順番とかどんな流れにしようかなとか。あまり決めきれていない部分があるので、集中してせなあかんなと。」

関本さんは2020年8月、自らの経験を一冊の本にまとめました。

『がんが私たちに何かを教えてくれることもある』

そんなメッセージに共感した医療関係者らから講演の依頼が来るようになったのです。

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11月12日、神戸市勤労会館に関本さんの姿がありました。

(講演で話す関本さん)
「『看取る側』から『看取られる側』になって、どっちの立場も経験して、今まで自分がやってきたことというか、コミュニケーションや態度で『間違っていなかった、よかった』と思えることは伝えたいし。逆に『いや、やっぱり看取られる側になるとこんなふうに思うんや、違ったわ』ということも伝えたいし。そういうことを還元したいなと。」

残された人生も、『医師』として、そして『がん患者 』として伝えたい。関本さんにしかできない医療が、きょうも続きます。

(緩和ケア医 関本剛さん)
「患者さんがポジティブに『そうなんですか、同じなんですね』と、受け取ってくれる限りは、あまり苦痛じゃないというか。後ろ向きな話ばかりしていたとしても、最終的にさよならする直前には、前向きな話題に戻して帰っていただくようには心がけている。話している中で僕自身も納得しているというか、自分自身を納得させている部分もあるのかもしれませんね。」

(2020年12月8日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)

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