MBS 毎日放送

ミント! ミント!

毎週月~金曜日 ごご3:49~放送関西のニュースは毎週月~金曜日 ごご4:30~放送

特集記事

【特集】労災めぐり闘う72歳の母『エコノミークラス症候群はナゼ対象疾病ではない?』...専門家からも疑問の声

2020年12月04日(金)放送

SHARE
Twitter
Facebook
はてなブログ
LINE

2013年、ある男性会社員が海外出張中に亡くなりました。死因は『エコノミークラス症候群』。国の基準では“労災”と認められていないため、遺族は裁判を起こしていて、今年12月に控訴審判決が言い渡されます。そんな中、新たな動きがありました。国の検討会でも、現在の認定基準について、専門家から疑問の声があがっているのです。

男性会社員の死亡 「労災認定」を求めて裁判を起こした母

息子の無念を晴らしたいと労災認定を求めた裁判は2020年9月に全ての審理を終えました。母・和子さん(72)が訴えを起こしてから4年が経ちます。

(母・和子さん)
「『お母さん、頑張ってるな』と思っているんじゃないかなと。あんまり表に出るのが得意じゃなかったのに、こういうところに出るようになって。息子としては『お母さん、ごめんな』と、思っているんじゃないかな。」

電池メーカーで営業担当だった当時36歳の男性。2013年、中国と香港への出張中に宿泊先のホテルのトイレで死亡しているのが見つかりました。6日間の出張の最終日でした。和子さんが写真を見せてくれました。

(母・和子さん)
「これです。息子が年末に帰って来て。『中国出張があるから、今年はあんまりおられへん、すぐ帰る』と言っていました。この時、皆でわいわい言っていたのに。次の写真はこんなん(遺影)ですよ。うそみたいです。うそみたい、本当に。」
3.jpg
死因は肺塞栓症、いわゆる『エコノミークラス症候群』でした。淀川労働基準監督署は、死亡直前に4か月連続で過労死ラインを超える時間外労働(月80時間以上)があったことを認定。ところが“労災”は認められませんでした。

「エコノミークラス症候群」労災×公務災害〇

立ちはだかったのは『対象疾病』という壁です。国は、過労死との関連が強い病気として、▼脳出血▼くも膜下出血▼脳梗塞▼高血圧性脳症▼心筋梗塞▼狭心症▼心停止▼解離性大動脈瘤の8つを対象疾病としています。“対象疾病を発症+業務による過重負荷があった”という2つの条件が揃うと労基署は労災と認めています。

エコノミークラス症候群について、国は「過重労働では発症しない」として対象疾病に入れていませんが、公務員の労災である『公務災害』の対象疾病には入っているのです。
12.jpg
(遺族の代理人 李暎浩弁護士)
「なぜ同じ病気で、同じような認定基準がある中で、これほど大きな官民格差があるのかと。非常に不合理で不平等ではないかと感じております。もしも被災者が公務員であったならば、ほぼ確実に労災認定はされていたであろうと考えております。」

専門家「長時間のデスクワークが発症に繋がった」

エコノミークラス症候群は、長時間座り続けることが原因で足の血管に血栓(血液の塊)ができ、動いた時にその血栓が血流に乗って肺にたどり着き、血管に詰まることで起きます。

弁護団らは、死亡した36歳男性が出張中に座っていた時間を、パソコンのログなどの記録から調べました。その結果、ホテルに帰っても徹夜でパソコンを使って仕事をするなど、座っていた時間は6日間で合わせて約90時間に上りました。

専門家は「長時間のデスクワークが発症に繋がった」と指摘します。
16.jpg
(星ヶ丘医療センター・血管外科部長 日本血栓症協会理事長 保田知生医師)
「我々も臨床で、デスクワークが関与したと思われる例が、何度も経験があります。職種や業務の内容によっては、肺塞栓症(エコノミークラス症候群)が起こりやすい状況が発生すると考えられるので、やはり命にかかわるような血栓症に関しては、せめて労災認定の道があってもいい。」

1審では遺族側の訴え退ける

労災認定を求めた裁判で、遺族側は「仕事が原因で発症した」とした上で「出張前の過重労働に加え、出張中の長時間の座位姿勢が発症の原因となった」などと主張。一方、国側は「発症の原因は不明」とした上で「途中に歩くなどしていることが、発症の危険性を軽減させた」などと反論しています。1審の大阪地裁は、国側の主張を採用し、遺族側の訴えを退けています。

(母・和子さん)
「もっと実態を見てほしいという感じですね。息子が一生懸命働いたということを、生きた証みたいな形で少しでも残してやりたい。」

「労災の対象疾病にエコノミークラス症候群」可能性に言及する医師も

控訴審が終盤に差し掛かる中、労災認定の基準についての検討会が約20年ぶりに厚生労働省で始まりました。検討会のメンバーは医師ら10人で構成されています。動きがあったのは2020年7月に開かれた第2回。複数の委員が、エコノミークラス症候群を対象疾病に入れるかどうかを前向きに検討するよう求めたのです。検討会の議事録によると…。

(国立循環器病研究センター病院 豊田一則副院長)
『労災の対象疾患(疾病)としては、肺塞栓(エコノミークラス症候群)は可能性がありそうだと考えていました。』

(佐賀大学医学部循環器内科 野出孝一教授)
『(エコノミークラス症候群は)勤務環境、あるいは心的な姿勢の保持やタクシーの運転手、バスの運転手、長期旅行、そういう環境下での発症というのは十分あります。慢性的な疾患ではなく、全く健康な人がそういった環境に長期間さらされるということで発症します。』

また2人の医師が「エコノミークラス症候群が対象疾病に入っていなかったから労災という判断はしなかった」と証言しました。

弁護団は「対象疾病の改正に向けた大きな一歩だ」と受け止めています。

(遺族の代理人 李暎浩弁護士)
「過労からエコノミークラス症候群が発症するということが、医学的にも認められてきている、ということになるんじゃないかと思います。しっかりと専門検討会で議論していただいて、できるだけ早く救われるべき人が救われるようにしていただきたいと思います。」

「仕事で亡くなったこと以外は考えられない」控訴審判決は12月18日

「息子は懸命に仕事をして亡くなった」…母の思いは届くのか。控訴審判決は今年12月18日に言い渡される予定です。

(母・和子さん)
「彼は仕事で亡くなったこと以外は考えられない。本当に悔しかっただろうなと、無念だろうなと思う。会社の人や一般の人にもわかってほしい。いい報告ができることを祈っています。」

(12月4日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)

最近の記事

バックナンバー