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【特集】児童相談所の"虐待誤認"で...1年3か月離れ離れになった家族 問われ続ける「児相の判断」

2020年12月03日(木)放送

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兵庫県明石市で、虐待を疑われて児童相談所に保護された生後50日の赤ちゃんが、1年3か月にわたり家族と離れ離れになり、結局「虐待はなかった」と判断された。かけがえのない時間を奪われた家族。なぜ、その事態は起きたのだろうか。

次男が骨折“虐待疑い”で一時保護される

兵庫県明石市に住むAさん(40代)。今は夫(50代)・6歳の長男・3歳の次男と共に4人で暮らしている。

(Aさん)
「年齢的にもすごく高齢になるので、無事に生まれてきてくれたことが何よりうれしかった。もう一人、天使が来てくれた。次男は癒しでした。」

しかし、次男は生後50日後からずっと家族と離れ離れになっていたという。一体、何が起きていたのか。

2018年8月。次男の右腕に異変を感じたAさんは病院へ連れて行き、念のためにとレントゲン写真を撮ってもらった。それにより次男は右腕の骨がらせん状に折れていることが判明した。

(Aさん)
「次の日に自宅の方に児童相談所から電話がかかってきたんですね。『次男のけがの経緯を教えてほしい』と。その時って全然わからなくて、あやふやな答えをしてしまった。」

その1週間後、Aさんは児童相談所から電話で呼び出され、職員に次男を預けた。そして別の部屋に案内されると、職員からこう告げられたという。

(職員)
『もうここには次男くんはいません。一時保護しました。』

(Aさん)
「えええってなって。その時、気が狂ってぎゃあーって泣き叫んだのを覚えています。(児相の職員は)『けがの原因がわからないことが(保護の)原因や』『安心・安全な場所に連れていきました』」

ベビーベッドに腕が挟まる出来事 説明も聞く耳持たれず

虐待を疑われたAさんは、必死に記憶をたどり、骨折する前のある出来事を思い出したという。

(Aさん)
「次男を抱きかかえたままベビーベッドの柵に勢いよくぶつかってしまいました。次男も、びっくりしたように、わあっと泣きました。」

ベビーベッドの横で次男を抱きかかえてあやしていた際に、後ろから当時3歳の長男がぶつかった。Aさんは次男を守らなければと、とっさに次男を抱え込んだものの、そのままバランスを崩し、次男を抱え込んだ状態でベビーベッドにぶつかり、Aさんの身体が次男を押し付けるようになってしまったというのだ。改めて児相にこの時のことを証言しても、「話が変遷している」として、聞く耳を持たなかったという。その後、家族が次男と面会できたのは、5週間後のことだった。

(Aさん)
「赤ちゃんってね、1週間ですごく大きくなるんですよ。だから最初連れてこられた時に、『これが本当に次男なのかな』。ちょっと最初『え?』って。」

医師「100%虐待」さらに保護が長期化

家族にとって、事態はさらに深刻化していく。次男のレントゲン写真を鑑定した医師が「100%虐待」とする意見書を提出。一時保護は法律で2か月以内と決められていたが、児相が家庭裁判所に“施設への入所を求める審判”を申し立てたことで、さらに長期化した。次男と面会できるのは月に1度か2度でわずか1時間。児相の職員2人がいつもそばにいたという。

(Aさん)
「監視されている中の面会やから、本当の家族団らんの時間ではないんですよね。面会が非常につらい場になることもあって。(私が抱くと)泣くんですよね。それで乳児院の方を求めるんですよね。私が産んだけど、私はお母さんじゃないんやわ。次男にとって愛着関係があるのは施設の方で。」

1年3か月離れ離れに 次男は1歳半

そして、保護から1年が経った2019年8月。家庭裁判所は「けがの理由をすぐに説明できなくても不自然ではない」として、Aさんに虐待を疑う兆候はなかったと判断、児相の申し立てを却下した。児相はこの判断を不服として大阪高裁に抗告したが3か月後に棄却された。家族と離れ離れになった期間は1年3か月。次男は1歳半になっていた。

(Aさん)
「パパと長男と次男で、初めて3人でお風呂に入って、初めて4人で布団敷いて並んで寝て。何かひとつひとつ噛みしめながら、初めての家族の時間をひとつひとつ噛みしめながら。3か月半ぐらいかな。やっとママって呼んでくれた。うれしいとかほっとしたじゃなくて、熱いものが体の奥の底からこみあげてきたんですよね。」

明石市が謝罪「一時保護のあり方を検証」

今回の児相の対応を巡っては、2020年10月になって明石市が公表し、謝罪した。

(明石市 泉房穂市長 2020年10月)
「1年3か月もの長期にわたり、親子でともに過ごす時間を奪ってしまったのでありますが、それは本当に申し訳ないという気持ちです。一時保護というものが現場の判断に任されてしまっています。これは大変問題です。」

市は今回の事態を受けて、一時保護のあり方を検証する第三者委員会を設置するとしている。

(明石市 泉房穂市長 11月24日)
「子どもにリスクがある場合には、行政としては毅然と一時保護すべきだという考え。一時保護を躊躇すべきだとは思いません。保護した後に第三者のチェックを入れていく。そして加えて、保護中であっても、親子の時間を保証していくということが重要だと思います。」

「一時保護」自体誤りと言えず…Aさんは理解しつつも複雑な胸の内

児相の対応とは一体どうあるべきなのか。児童相談所の元所長は、Aさんのケースも「一時保護自体は誤りとは言えない」と話す。

(大阪市中央児童相談所 津崎哲郎元所長)
「児童保護の難しさは、リスクがあると判断した場合は保護をせざるを得ない。裁判所は『疑わしきは罰せず』というかたちで処理されますけれども、児童相談所は『疑わしきは帰します』と、同じようにはいかない。」

今、虐待を理由に一時保護される件数は年間約2万5000件で、5年前と比べると1万件ほど増加している。相次ぐ虐待事件。和歌山県では2013年に児相が一時保護を解除した直後に2歳男児が父親に暴行されて死亡する事件も起きていて、厚生労働省は「ためらいなく保護すること」などと各自治体に通達しているのだ。

Aさんは、虐待の可能性がある子どもを児相が保護する必要性は理解しつつも、「判断ミス」で長期間子どもと隔離されることは二度とあってはいけないと話している。

(Aさん)
「一時保護、(次男が)連れていかれたことに関しては仕方がない、けがしているんだから。けれどもその後のことが、全て納得がいかない。子どもを守るための児童相談所が、子どもの人生を奪って、人格を変えてしまう可能性だって十分にある。私たち家族は一生それを忘れられないし、忘れちゃいけないし、消せないし、一生それを引きずって生きていかないといけないんですよ。」

わが子の成長を感じるかけがえのない時間を奪われた家族。なぜこのようなことが起きてしまったのか。児童相談所から納得できる説明は今もないという。

(12月3日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)

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